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映画 ゴヤの名画と優しい泥棒

2021年9月に亡くなったロジャー・ミッシェル監督はいった。

“ケンプトンは悪ガキだ、英雄じゃない”

イギリスの宰相ウェリントンを描いたゴヤの名画。

1961年、ロンドン・ナショナル・ギャラリーから盗まれた公爵の身代金は14万ポンド。

犯人は角野卓造さんじゃない(笑)

ケンプトンいわく。

“テレビは我々(老人たち、帰還兵たち)にとって人との繋がりであり、国民の生きる権利、活力である”

史実に基づく。

1961年に実際に起きた“ゴヤの名画盗難事件”の知られざる真相を描いたヒューマンストーリー。

誰もが知る名作・ノッティングヒルの恋人のロジャー・ミッシェル監督が残した最後の長編映画。

世界レベルの作品が展示されている美術館“ロンドン・ナショナル・ギャラリー”

ある日、フランシスコ・デ・ゴヤの名画“ウェリントン公爵”が忽然と消える。

“ちょっと公爵お借りします”

これは間違いない。

犯人は国際的な強盗団、ギャング、いやコマンドー!?

プロフェッショナルな手口、大規模な組織の犯行に違いない。

もしかしたら国家レベルの陰謀かも!

イギリス全土が大騒ぎになるが…全然違う。

犯人は北部の村に住む60歳のタクシー運転手ケンプトン・バントン。

長年連れ添った妻と優しい息子、三人で小さなアパートで暮らす年金暮らしのおじいさん。

ケンプトンは大の芝居好き。

ドラマや映画が大好き。

独学で芝居を勉強し、原稿を書き、テレビ局に送っている。

パイプをくゆらせる姿はまさに劇作家、名作戯曲を執筆する大物作家。

…が。

実際は有能なアマチュア(自称笑)、誰にも相手にされていない。

ケンプトンには別の一面も。

反骨精神旺盛で正義感が強く、自分が違うと思うことには声を上げずにいられない!

村の過激派で(誰にも相手にされてない笑)政治活動のようなこともしている。

そんなケンプトンにはどうしても許せない敵がいる。

イギリスの国営放送BBCだ(有料コンテンツ)

“絶対に見るもんか!”

奥さんにテレビ(BBC)で放送してるじゃないっていわれても大好きなウエスト・サイド物語を観にわざわざ(笑)映画館に行く。

BBCの受信料は郵便局が回収を担当、アンテナ、電波などで調査し、徹底的に回収する。

見てない、利用してない、絶対に払わないぞ!

受信料を払わなければ詐欺罪で刑務所に入れられてしまう、BBCの回収業務は厳しい。

ケンプトンはアンテナ線を切ったり必死の抵抗を試みるが…。

家族の誰も一切見てない?のに受信料を払うドロシー(ケンプトンの奥さん、ヘレン・ミレン)

世の中すべての“間違い”にケンプトンの怒りが爆発したとき

“BBCをぶっ壊す”

騒動の結末はいかに。

ケンプトン・バントンを演じるのは名優ジム・ブロードベント。

マーガレット・サッチャーも良かった。

理解ある優しい息子、ジャッキー・バントンをダンケルクのフィオン・ホワイトヘッドが。

ケンプトンとジャッキー、この親子を見てると本当に癒やされる。

コンフィデンスマンJPにも見える(ケンプトンはツチノコ役の角野卓造さん、ジャッキーは東出くん笑)

コミカルで笑える本作だが、受信料の問題、イタリア人を犯人と決めつける当局の差別意識など社会問題をリアルに描いている。

絵を見つけたときのドロシーの気持ち。

大切なものはいつもすぐそばにある。

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