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練武知真 第21話『絶望から這い上がる心を学ぶ武術』

不利な状況をどのように打開するか。

それは武術における根元的なテーマです。

 

複数人を相手にする場合を想定したフットワークや位置取りの研究。

 

武器を持った相手を想定した訓練をする為、自らもあらゆる武器に精通する。

武器には武器を。 

また、こちらが素手である場合でも、武器を扱った経験があるかどうかで心のありようが変わってきます。

 

またもし戦闘中に負傷して片腕になった時にでも、「じゃあ諦めます」とは簡単には言えません。

武術ではどちらの腕でも脚でも戦えるよう鍛練します。

強力な体幹の力で、四肢を自在にコントロールするのです。

いざとなれば頭突きや体当たりもします。

 

どんな不利な状況に対しても、最大限の対抗をする為の知恵・・・

それが武術の技なのです。

 

そしてもう一つ。

絶望的な状況に対して、最も重要なもの。

 

それは、

最後の最後まで諦めずにあがく「心のチカラ」です。

 

心が折れてしまったら、技どころか、まともに動くこともできません。

粘り強さのある心が必要不可欠なのです。

 

 

私が昔よく悩んでいたこと。

「武術ができない体になったらどうしよう・・・」

 

私が子供の頃から唯一続けていたものが武術です。

それを失ったら・・・。

私は何者でもなくってしまう・・・。

 

これは「武術家」のアイデンティティーに関わることで、

その不安は今も心の何処に根強く残っています。

 

しかし私も随分変わってきました。

今は、次のように考えています。

 

武術の修行過程において得た様々な気付きや感性は、いざとなったら、言葉や文章でも伝えることはできる。

 

武術から学んだ人との接し方は、人とのコミュニケーションをスムーズにしてくれます。

人が好きな私としては人との関り合いはとても大切なのです。

 

また武術とは直接関係ないかも知れないけれど、

自然や神社仏閣が好きで、時折写真を撮ったりします(スマホだけど)。

写真を撮る時はいつも何か心が動いています。

写真を通して心を伝えるというのも、とても興味深い。

 

つまり・・・やりたい事はいくらでもあるのです。

生き続けたい理由はいくつもあります。

 

勿論本当に武術ができなくなった時、そう上手くいくかどうかの確証はありません。

 

ただ、

これまでの人生でも落ち込むような事は幾度もありました。

精神を病みかけたこともあります。

 

でも、

生きている。

生き続けている。

 

上手くいくことの方が少ない人生だけど、

自分の希望に向かって、わずかずつでも前進しようとあがいている。

 

これは武術で得たチカラが大きいと思っています。

 

他人に対しての格闘技術としてだけでなく、

自分の人生を前に進める為の「心のチカラ」を身につける。

 

武術の修行が、自分の人生と深くリンクしてゆく時、人生の様々な場面でそのチカラを感じることができるようになります。

 

どんなに心が折れようとも、

どれほど傷つこうと、

どれほど不安に苛まされようとも・・・

 

這い上がり、

立ち上がり、

歩み出す。

 

自分の人生を生きてゆく為のタフな心のチカラを。

 

 

2024年7月3日 小幡 良祐

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