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0374 何もなく

「ここ以外であれば、どこへでも」というのは、某女性作家の一文から引用したのであるが、この題名で、5月の文学フリマ東京で本を出そうとしたのだった。

特にやりたいこともなく、好きなこともなく、単純に今の会社が嫌すぎるというだけなのだが、振り返ってみれば、仕事が嫌なのはさておき、自分軸がなさすぎるのが原因なのだと思いいたったのだった。
とはいえ、この年齢に達し、よほど昔取った杵柄や、まめに家事をやっていたとか、こだわるほど酒が好きなどあればまだしも、とにかく自分には何もない。
引用元の作家の意図とは別に、「ここ以外であれば、どこへでも」という心境である。

これからのことや、肩書、対面、給料、そういうことを一切合切放り出し、単純に自分のことを考えて、どこか私を全く知らない場所で一からやり直したい、そんな気分なのだった。
しかし人間、そう簡単にはいかない。「白夜を旅する人々」に出てくる兄や姉も、そう安易に行動できていたなら、本人をはじめ周囲も影を背負ったりはしなかったろう。

そんな中、ふとYouTubeで、夫を見取りました、という動画を見た。
それを見ていて、人は与えたものしか返ってこないのだと思いつつ、与えたとしても返ってくる保障もないのだとも考える。
人生は難しい。
未だふわふわな私の最期はどんな感じなのだろう。
まぁ少なくとも、こんな見取りはしてくれまいよ、うちの相方氏は。先に死んだら大変そうなので、頑張らねばならぬ。
しかし、この相方氏より長く生きるかどうか分からない。相方氏を見ていると、あぁ、やっぱり私は一人で誰のどんな感情からも離れていたかったなとため息を吐くのだった。

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