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時の狭間|詩

ここに来ると
しんとして
真夜中になる

きみは黒い髪を
夜露で光らせて

くすくすと
小鬼のように笑う

ぼくらは
いつしかまた雲母きららのように
小さくなって

羊歯しだの葉を見上げる


日時計も
ここでは働かないから

きみは
懐中時計を取り出して
ねじを巻く

針は動かないと
知りながら


大人になってはいけなかった
ぼくらは

いくつもの時をなくしてから
気づけばここにいた

子どもの頃よりも
もっともっと
小さく
砂粒みたいに
光を払って

そしてようやく
安息を知ったんだ

この世から
置き去りにされることで
得られる
最後の
優しい安息を


外の世界の
時計の針は
どんどん速くなって
めまぐるしく移り変わる

きみがもっと小さくなって
時を刻むクオーツに
さらには
原子になって

世界中の時の流れを
そよ風みたいに
ゆるめてくれたらいいのに


でも
きみはもう
どこにも行かないと言う

ホワイトアウトした世界は
いやなんだ


それならぼくだけの
時計になって

そうお願いして
ここにたどり着いた


ふたりで
詩をそらんじたり
手をつないで
小さく歌ったり


あちらのみんなが
忘れていくものを
憶えておいて
失われたものたちを
思い出すんだ

そのために
大人になることをやめ
進むこともやめて
時を手放したのだから


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