北海道を駆ける(サロベツ原野篇)

ツーリング日記のようなもの。

***

留萌から内陸部に入り、旭川に向かっている。
 
高速道路が見えるが、一般道で行く。
今では北海道にも高速道路が複数出来ているが、北海道の一般道は一部を除いて大体空いていて、高速道路が本当に必要かどうかと思っていた。
だが、長距離を一気に走り抜けてしまいたいという思いが、本土とは違う感覚で存在するのだ。
高速道路は、期間限定かもしれないが、無料開放している区間が結構あって走っている車両はわりと多い。 

しばらく走ると北海道第二の都市、旭川に出た。
やはり規模が大きい。
ここで北海道の地図を買った。
 バイクに乗らない人にどれだけ認知度があるのかわからないが、二輪専用(?)の「ツーリングマップル」という地図があるのだ。
最新の地図を手に入れたいなと思っていて、買うなら敢えて北海道に着いてからにしようと考えていた。
20年前に出版された地図は持っていったのだが、実際に新たに出来た高速道路などを見ているとやはり最新の地図が欲しくなってしまうのだった。 

でも、20年前の地図でも役に立った。
ツーリングの途中で出会ったライダーは地図、とりわけ昔の地図が好きなようで、持っていた20年前の地図を見せるとうれしそうに眺めていた。
その人は横浜から来ていたのだが、かなり北海道に詳しい人だった。
速水もこみち似の、背の高い、ちょっと長髪で礼儀正しく、地図を見せてくれた代わりに何故か「ツーリングの途中で食って下さい」と、道産の新ジャガを頂いた。
キャンプ時に茹でて食べた。
旨かったな。ありがとう。

せっかく旭川まで来たので、旭川ラーメンでも食べに行こう。
買った地図にオススメの店などが載っているのにも気づかずに、ただ駅前をぶらぶら歩いていると、どこかで聞いたことがあるラーメン店があったので入ってみた。昼なのに空いていた。どうも東京の同名店舗とは違うようだ。
その後、旭川の商業ビルの個室トイレで、買ったばかりの最新の北海道の地図を便器に落としてしまった。
何故そこに落とすかという思いと、本が若干フニャフニャになったことは今でも後悔している。

さあ、ここからはひたすら北に行こう。
旭川からは宗谷本線に沿って和寒、士別、名寄方面へと向かう。
牧草ロールが目立つようになってきて、北海道らしさが一段と濃くなる。

音威子府(おといねっぷ)を更に北上し、中川というところでで野営。
近くによい温泉もあった。
北海道でよく見かけるセイコーマート(略してセコマ。しかしセコマではなく、セイコマというライダーの方が多かった)で買い物をした。
品揃えが大手よりも良く、酒の種類も多い。
都市部からかなり離れたようなところでもセコマだけはあったりするためか、北海道を旅する人でセコマのファンになってしまう人が多い。
また地元の人の生活には切り離して考えられないコンビニだ。
ここで、北海道洞爺湖畔にある老舗レストラン「望羊蹄」で使用している珈琲豆を焼酎に漬け込んだコーヒー焼酎(珈琲酎)というの買ったのだが、これが美味かった。

野営はツーリングに比重を置くため、テントは寝床と割り切るつもりだ。(いつもだが....)
珈琲酎のロックをちびちびっと飲むのが、こんなツーリングには合っていた。

次の日の朝は4時過ぎに起き、湯を沸かしコーヒーを飲んで5時半にスタートする。
ツーリングの朝は早い。(そのかわり夜も早い)

行ってみたかったサロベツ原野を目指す。
サロベツの手前で、海沿いの「道道106号」に出る。
原野の手前に28基の風力発電のプロペラが並んでいて、それがだんだんと視界に入ってくる。

その先、地図でいえば北緯45度を超えるあたりだろうか。

道は、原野の中をただひたすら地平線まで延びている。
左は日本海、右は広大な原野。 

電柱もガードレールもない。
行きかう車両もなく、人工物は道だけだ。

日本にもこんなところがあるんだな。

オートバイを降りて、違った視点で考えれば殺風景となるであろうこの「何もない」風景にかなり長い時間見入ってしまった。

日本海を隔てて、うっすらと利尻富士が見える。
でかい。
距離が近いのもあり、ほんとうに富士山のように大きかった。
北海道に来てよかった。

再びオートバイに跨り、原野を行く。
向こうから走ってくるライダーのピースサインに対して、いつもよりも心をこめてお返しをした。


サロベツ原野にはモウセンゴケが至るところに生えていた。

(終わり)  

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