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#小説
トロッコ問題――久世正宗の場合
”君はレールの切り替えポイントにいる。
今走ってくる暴走列車は、5人の人間をはねようとしている。
君がレールを切り替えれば、軌道が変わり5人は助かるが、別の1人が犠牲になる。
君は、何を選択するだろうか”
たちの悪い人外が、この哲学的命題を発したときに、既に嫌な予感はしていた。
華奢な手のひらが、電車の玩具を持ち上げる。
モーター音と空転するタイヤ。
そもそもトロッコ問題は、問いであることに
【SS】カフカの赤と黒
フェノールフタレイン溶液について。
水に溶けにくいフェノールフタレインをエチルアルコールに1%溶解したものは、ph9以上で赤色を呈する。
そのため、対象が塩基性かを判別するための指示薬として使用される。
‡ ‡ ‡
「この中には黒猫がいるのだ」
背中を壁に預けたまま、サイファーは傍らのドアを示した。
「開けるなら慎重にしたまえ」
猫にたいして興味があるわけではないけれど、僕は細く開けた
【SS】ホワイトアウト、そしてアンサー
――【御前】と呼ばれる少女による回想――
それを追ってみる方に心が傾いたのは、戦略が私に向けて調整されていたからだろう。
まず、相手は私が生徒会室前の廊下に、朝、誰より早く到達することを知っていた。
そして、落ちている校章を必ず拾い上げることも。
片膝を曲げて腰を落としたとき、目の高さになる消火栓の底部。そこに無造作に貼られたガムテープを見つけて、両者が無関係でないことが確定した。
ステップご
【SS】菊と刀とバレンタイン
教室に戻った生徒がそれを話題にすると、水に熱した石を放り込んだように、教室が好奇に突沸した。
【御前】がチョコレートを詰め込んだ紙袋を持っていた!
それは男子生徒にとって甘く苦い、それこそチョコレートの風味がする感傷へと、徐々に落着していく。
袋の中には特別豪勢な、つまり本命へ捧げるためのたった一つの逸品ではなく、複数の包装が収まっていたと報告されたからだ。
【御前】とあだ名される美しい生徒
【4/6】廃章 報酬系回路の電気刺激で行動制御は可能か――あるいは アマノサグメ
ナナイロ5日前。赤。教科書のページ。
4日前。不明。
3日前。黄色。椅子。
2日前。緑。儀礼刀。
1日前。青。鞄。
今日。藍色、紫色。上靴。
御手座 巴は法則を読み取る。
綾目 若彦が進行している魔述。
罠は、久世正宗の持ち物の、本人が”気づく”場所に仕掛けられている。
そして今日を除き、同じものには結んでいない。
ならば――。
不明である4日前の仕掛けを想像で補う。
おそらく橙色だ
【ノベルゲーム】クラウンワークス虚実概論
クラウンワークス虚実概論は、全6章で現在4章までリリースされているノベルゲーム。
魔述で戦い、脳科学に従う。
ただし心理学で裏をかく。
トラウマだけが武器になる。
0章 レミニセンス主人公・久世正宗はカウンセラーと対峙する。
彼が同級生を殺した。その真相を聞き出すため――
しかし、カウンセラーは何かがおかしい。
1章 記憶の物質化阻止によるPTSD予防と治療のあり方――あるいはスフィンクス久世
【3/6】廃章 報酬系回路の電気刺激で行動制御は可能か――あるいは アマノサグメ
アイミテノ僕たちは虚しい鬼ごっこをしていた。
力を失ったイデアと未熟な魔述師の、どちらが先に相手を出し抜くか。
一方でそれぞれが握った秘密故に、協力しなければ外圧に抗しきれない。
確かなことは、先に裏切ったほうが勝ち。
ただ、相手を失った状態で生き残れる確証を得た場合にだけ、裏切りは可能となる。
――頭が痛む。
支配のアンテナが取り付けられた場所が破門のように苦痛を広げた。
こうして僕に敵
【2/6】廃章 報酬系回路の電気刺激で行動制御は可能か――あるいは アマノサグメ
アヤメ一週間に渡る長雨が、居座り続ける朝。
天気と同じ憂鬱が、日曜日のエディプス幤学校を満たしていた。日曜授業と引き換えになる明日の振替休日は、7日間連続登校の倦怠への報酬としてはささやかすぎた。
空から重力に引かれ落ちてくる雫が従う一定の法則と同様に、昇降口を通り抜けていく白い制服の群れも、緩やかな規則のもとにふるまう。
傘立てで一度立ち止まり、それぞれの靴箱に移動して、靴を履き替えて校舎の
【1/6】廃章 報酬系回路の電気刺激で行動制御は可能か――あるいは アマノサグメ
エピグラフわたしは不幸にも知っている。時には嘘によるほかは語られぬ真実もあることを
――芥川龍之介
レミニセンス虹彩が狙いをつけている。
君は虹と関係しただろう。
指差したか。
写真を撮ったのか。
まさか根本に金の杯が埋まっているなんて嘘を信じて、あれに近づいたりはしていないね。
よく思い出すのだ。金の杯は掘り出したものを幸福にするが、手放した瞬間あらゆる不幸が襲いかかる。
失わせるための幸
【SS】グレンデルに関する前哨的課題
【問題】
以下の文章を読んで違和感を形にせよ。
陰鬱な自然に挑むように、その城はあった。
ヘオロット城は、前線である。
王とその麾下の兵士たちは、異形たちが荒れ地を越えて人の世界に流入しないように、ここで睨みをきかせる。
これまでも、これからも。
しかし緊張の糸は張り詰めれば細く、長引けば切れ易くなるものだ。
それは稀な休息の日。遠くコルキスから訪れた賓客をもてなすために、城