見出し画像

白黒の世界 携帯小説1

第一話 希望

(全12話)

登場人物
森 龍牙(もり りゅうが):物語の主人公
木原 京(きはら けい):龍牙の親友
鳥海 紅音(とりうみ あかね):新入社員

画像1


綺麗な色だなぁ。。。

ピンク?パープル?ホワイト?
色とりどりの桜が咲く季節

街はどこか慌ただしく
新入生、新社会人が
新しい生活を夢見て
新生活を始める準備をしている

俺にとっては何気ない日常の1Pだった。。。

➖➖➖➖➖

この物語は彼が愛を綴った日記が
発見されて描かれている

➖➖➖➖➖

今日は入社式
スーツにネクタイ、あと革靴
ふだん着ることのない
俺の職業は美容師

全店舗で考えるとかなり多くの
新入社員が入ってくる

毎年この時期は
どんな子が入ってくるのか
楽しみなんだけど
今年は実はそうでもないんだ。

俺は夏に退社が決まっている
自分のやりたいことがあって
独立するんだ。

自分のやりたいようにやる。

だからあまり気持ちが入っていない

店長としては残り3ヶ月
新人社員が入ってきても

今までのようには
教えることもないだろう


そう考えてる自分がいた


京(けい)「森、何やってんだよ早く行かねぇと怒られるぞ」

龍牙「うるせぇな、そんな急がなくてもまだ大丈夫だから静かにしろよ」


親友の京は俺よりも先輩店長で
顔に似合わず時間にうるさく真面目だ。
そんな先輩にも俺は強気な態度だ


俺はどうも生意気で変わってるらしい。


式場に向かうと
たくさんの人が入社式の準備をしていた。


「おはようございます!」


「早く手伝ってよ、何ぼけっとつったってるの?」俺たちの女上司が言った


入社式は思い返せば自分にも
こんな時期があったんだなぁと
初心を思いださせてくれる


素敵な空間


期待とワクワクと、
不安とが入り混じった
社会人一年目


懐かしい。。。


俺には同期がいなかったし
個人店に入ったので式典などない。

だから
会社の入社式というものには憧れがある

辞令があったり会食があったり
新入社員を、歓迎してくれるからだ


社長「辞令、【鳥海 紅音】貴殿を令和元年4月1日よりRize(ライズ)池袋店勤務を命ずる」


紅音「ありがとうございます、頑張ります」


京「あれお前のとこの新入社員じゃね?いいなぁ女の子か」


龍牙「あぁ、でもさ俺辞めるから興味ねぇよ」


京「まぁでもあれだないつも野郎ばっかりだから華があっていいな」


龍牙「まぁな」


社長「辞令、、、、」「辞令、、、、」「辞令、、、、」


入社式は長い。


龍牙「やっと終わったな、つっかれたぁ!!!あれなんとかならないのかな、どこかきゅっとまとめるとかさ!社長の話なげ〜から睡魔との戦いだよな本当に」

仕方のないこどだとわかっていても
いちいち不満が出る


「これから会食何階だっけ?」


京「49階天使の間だったような気がするよ」


長い入社式のあとの
ここからがお楽しみの食事の時間。
懇親を広げる場所だ


人間と言う生き物はどうも
お酒が入ると打ち解けあえる習性がある


「さぁ食ってたくさん飲もうぜ!」


司会「それでは各店長は、名前を呼びますので自分の店舗のスタッフをむかえに言ってあげてください、、、池袋店 鳥海紅音」


龍牙「よろしく!」


紅音「はい!よろしくお願いします」


龍牙「緊張してる?リラックスしていいよ」


紅音「せやけど、なかなか、、」


龍牙「ん?出身どこ?関西なの?」


紅音「京都です!上京してきました!一人暮らしがしたくて」


地方から上京してくる子はいつもやる気に満ち溢れている。


この気持ちを心のどこかで
適当に扱ってはいけないと思った。


紅音「店長明日、お店にお伺いいたしますので、よろしくお願いします」


龍牙「お、おぅ、」


京「ほんと冷たい男やなぁ」


龍牙「そうか?」


なんなんだろーでも、やっぱり
身が入らない

どうせ夏でサヨナラだもんな

でも、かわいそうだからちゃんとしなきゃな

そう思った俺は彼女の連絡先を聞いた


「じゃ。なんかあったら連絡してこいよ」


京「紅音ちゃん気をつけなね、すぐ森は手を出すから」


龍牙「本当うるさいなぁ黙ってろって」


紅音「ふふっ、めっちゃいいコンビですねー」


龍牙「そうか?腐れ縁ってやつだな」


紅音「店長も、ぶっきらぼうな感じですが、根は優しそうで安心しました!」


京「紅音ちゃんいいねーよく言った こりゃ大物になるぞ〜笑」


紅音「あっ私何か失礼なこと言いました?すいません!」


龍牙「気にすんな 笑」


お酒の泡がなくなる頃
僕たちの心の距離は少しずつだが、
近くなっていった気がした

—————

次の日

「店長私にできることあったら言ってください」

「店長これであってますか?」

「店長これ教えてください!」

店長!店長!!店長 !!!

。。。

しょうがないなぁ

「これはこうするとよくなるよ」

「こういうときはこうするんだよ」

「大丈夫か?あんま無理するなよ」


すごく頑張るなこの子。


「私同期には負けたくないんです早くスタイリストデビューするんで教えてください!」


次第に自分も熱く指導し始めていることに
気付き夢や希望を持った人と一緒にいると


楽しいという感情が芽生えていた。


数日後


「店長のお店に配属されて良かったです。同期の皆に聞くと他店ではあんまり教えてくれないって言うし、もうカラーの塗り方まで教えてくれてどんどん成長出来てるのが自慢できます!」


相変わらず目をギラギラさせていた。この子には自分が辞めるなんて言えないなぁ。。。


「まぁな、俺に不可能なんて文字はないしな。何かあってもなんとかしてやるから、なんでも言ってこいよ!」


自然と心を動かされているのがわかった


面倒見ない!って決めてたのに
いつの日か、この子がスタイリストになって
髪を切っている姿を見たい

そう思うようになってしまった。


そんなある日の朝


「私少し具合悪くて、熱があるみたいなんです」


「大丈夫か?裏で寝てていいから安静にしてろよ」


美容室の時計の針が時を刻むたびに
彼女の体調を悪くし、熱は増していった。


「おまえ、38度まであがってるじゃんか。今日は早く帰って寝ろ」


「店長具合悪すぎて帰れません」


「仕方ねーなちょっと待ってろ」


俺は近くの薬局へ行き、とりあえず市販の風邪薬と熱冷ましのシートを買った


「とりあえず、これ飲め!あとおでこだせ」


俺は通称冷えピタのフィルムを剥がし
あつあつのおでこに貼ってあげた。

そして、シャンプー用の膝掛けをたくさん集め
紅音ちゃんにそっとかけてあげた。


「店長すいません」


「まぁ、新生活ずっと気を張ってたから疲れちゃったのかもな。お店は大丈夫だから、ゆっくり休んで、また頑張ろうな!」

「zzz...」

あったかくなり、寝てしまっていたようだった。その寝顔はどんな花よりも素敵な蕾のように感じた。これから咲く花はどんな色で、どんな咲き方をするんだろう

俺のような白黒はっきりした
モノクロの自分に
鮮やかすぎる色彩が日常に着色された

どんどん惹かれているのが
自分でもわかってしまった。
近いうちに来る退社を言い出せずにいた。


「紅音ちゃん、具合どうだ?営業終わったぞ?」


「あっ店長だいぶ良くなってきたので今なら帰れそうです。」


俺は彼女の家まで送ることにした。


「おんぶしてやろうか?」

「いや、いいです。」

「じゃ、お姫様抱っこしてやろうか?」

「セクハラで訴えますよ」

「んじゃ、とりあえず前歩いてやるから、ちゃんとついてこいよ!」

暗い夜道を照らすかのように歩いた、、、
空には無数の星が、、、
と言いたいところだが

現実はドラマのようにはいかない。

ここは大東京なのだ。
雑踏の中、天空(そら)に明かりはない

希望を持って歩く為に
今は上を向くのではなく。
前を向けということなのだろう。

そう前を見れば街は明るい
ネオンで輝く摩天楼

田舎より都会は冷たい
それ故に今を生きるだけの子が
増えてしまっている。

そんな中未来を見て生きる
彼女の気持ちに答えなければ

一花咲かす為に上京してきた彼女を
守ること、育てること。

それが自分の生きがいに変わっていくのを感じていた。

「じゃ、俺はここまで。」

「ありがとうございました、おやすみなさい。」

龍牙は色で着色された世界を知ってしまった。
暖かくて優しくて、愛に溢れた世界を

それを片思いと呼ぶ

願いが叶うかどうかはわからない
でも希望を持ち始めていたのは確かだった

彼は新社会人同様に新生活と
向き合うことになっていたのだった。


次の日の朝


「おはようございます。
すいません、ちょっと頭痛ひどくて昼から出勤しても大丈夫ですか?」

その連絡後、音信不通となった。

続く


次回予告
紅音に想いを寄せ始めた龍牙。体調を崩す紅音に伝えていく言葉、自分に何ができるのかを考える中迫る退社時期。

次回 焦心

https://note.mu/blancetnoir/n/n076055351c34


#小説 #短編小説 #恋愛小説 #美容師 #美容室 #コミックエッセイ大賞 #推薦図書 #あの恋


この記事が参加している募集

推薦図書

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?