「人間関係」再構築の決定版的本
「目の前の人は自分」
心理学ではよく言われることのひとつがこれです。
「目の前の人は自分」
ということは、ありとあらゆる人間関係っていうのは、極論を言うと「自分との関係」だと言えるのではないかと思います。
自分との関係はどうなっているのか。
自分とどうつながっているのか。
それが反映されているのが外側の「人間関係」であって、それを見れば一目瞭然。
軽く扱われているのであれば、自分で自分を「その程度の人間だ」として軽く扱っていて、とても大事にされているのであれば、自分で自分を「とても大事な存在だ」として扱っているということになります。
言いたいことはわかる。
自分で自分のことを「大事な存在だ」と扱っていても、軽く扱ってくる人もいるじゃないですか! と言いたいんでしょう。
でもそれは、自分で自分のことを「大事な存在だ」として扱っているのと同じように、相手は相手で自分のことを「大事な存在だ」として扱っていて、それを表現しているだけだったりするんです。
「大事に扱う」と「軽く扱う」の認識の違いが生じていると言ってもいいかもしれません。
平たく言えば「価値基準の違い」です。
どうしてもそれが嫌だと言うのなら離れればいいだけの話です。
わざわざ相手を攻撃する必要はなくて、「それをされると私は嫌です」と伝えるか、そっと離れればいいだけです。
そうやって、自分のことを軽く扱ってくる人と距離を置くことによって、その結果、自分のことを大事にしてくれる人たちばかりに囲まれるようになります。
それも「自分を大切にする」ということであり、そういう「自分との関係」性が外側の人間関係に現れてくるんだと思います。
そういう意味では「人間関係」って「自分との関係」なんです。
自分が自分とどんな関係を結んでいるのか。
それは目に見えないので、それを「観る」ためというわけではありませんが、外側の人間関係があるんだと思います。
「鏡は先に笑わない」とは、さとうみつろうさんが言ったことですが(他にもたくさんの人が言っているが)
外側の人間関係って、自分との関係性を「観る」ために、「鏡」のような役割をしてくれているものなんです。
それを見ればよくわかる。
このように、外側の「人間関係」を見つめ直して整理整頓することで、「自分との関係」性を浮き彫りにするのに最適な1冊と出会いましたのでご紹介します。
『人生を変える新しい整理整頓術 人間関係のおかたづけ』堀内恭隆さん
この本は、アドラー心理学で言われているところの「私たちの悩みのほとんどは対人関係」だとした上で、その人間関係が一気にかたづく方法を全く新しい切り口で提示した今までにない1冊だと思いました。
つまり『人間関係のおかたづけ』本を読んで実践すれば、人生の悩みのほとんどが解決するということになります。
堀内さんの前著『シンクロニシティ・マネーの法則』では、
「エコシステム」という全く新しい概念を提示されましたが、今回の著書では、これまた全く新しい概念として「箱理論」を提唱されています。
「箱」を3つに分けて、人間関係を仕分けしていくということで、それをすれば「おかたづけ」という言葉通りに心がスッキリすることは間違いないでしょう。
「人間関係をおかたづけ」すると言うと、される側の身としては、急に距離を置かれたり、キャラ変されたりとそういうことを想像するかもしれませんが、たしかにそれはあり得るんですけども、結果としてはその方がいいとも言えます。
こちらから距離を置こうとしなくても、相手の方から勝手に距離を置いてくれるんで、不必要な人間関係に苛まれることは減っていくことになるのではないでしょうか。
SNSを通して、人は人とつながり過ぎました。
つながる必要のない人たちとも物理的な距離を超えてつながってしまったんです。
そしてそれが、今までにはなかった人間関係の軋轢として、人々に重くのしかかっているのではないかと思います。
それらを「おかたづけ」して、身軽になるために「3つの箱」を用意して、人間関係を仕分けしていく。
そのための具体的な方法と注意点、そこから一体何が得られるかが、誰にでも理解できる言葉で、そして誰も傷つけない表現で書かれてあるのが、この本の特色なのです。
「3つの箱」のうち、ひとつだけ書きますと「どうでもいい箱」というものが出てきます。
この「どうでもいい箱」というのは、言葉通り「どうでもいい 」人を仕分けするためのものなのですが、これを僕は「むやみに干渉しない」「相手の自由に介入しない」ことだとも言えるのではないかと感じました。
人のことは言えませんが、人は自分にとって「どうでもいい」人に対して、干渉し過ぎですし、相手の領域に土足で介入しているところがあると思います。
それをやめましょうということです。
それをやめて、自分にとって大切な人は誰かを明確にし、その人たちとの時間に比重を置いていくことが「人間関係」をおかたづけする上で、とても大切な姿勢だと思います。
もっと言えば、「どうでもいい人」の自由を尊重することにもつながります。
自分にとって「どうでもいい人」でも、誰かにとっては「大切な人」です。
そこに思いを馳せ、想像することで、相手を尊重する。
それはつまり、自他の区別なく「自分も相手も大切にする」ということであり「自分との関係」を築いていく上で、とても大切なポイントだとも言えるでしょう。
「人間関係」をおかたづけするということは、「本然」を思い出す、つまり「本来の自分を知る」ということになるのではないでしょうか。
この本では、「3つの箱」に仕分けるという論点で書かれてありますが、普段の生活を送っている人たちはそうではないと堀内さんは言います。
どういうことかというと、たとえば、「夫としての箱」「妻としての箱」「子どもとしての箱」「親としての箱」「上司としての箱」「部下としての箱」「同僚としての箱」「恋人としての箱」「友だちとしての箱」等など
たくさんの「箱」に仕分けていて、中には重複しているものもあり、それぞれのルールに縛られた状態になっているということなんですね。
詳しくは堀内さんの新刊をお読みいただきたいと思いますが、僕はこの本を読んで、このような本を思い出しました。
それぞれの本では、「箱」というものを「役割」「仮面(ペルソナ)」と表現されています。
人は他人を、「その人そのもの」として見ているのではなくて、「役割」として見ている、あるいは、「仮面」を付けた状態で見ているということです。
その人自身ではなく、「夫」として見ている、「妻」として見ている、そして、そういう「役割」として扱っているので、本来のその人自身を観ることができていない。
さらに、自分もそういう「役割」を自分に当てはめて「仮面」を付けた状態で日常生活を送っているがゆえに、そこで息苦しさや窮屈さを感じて苦しんでいる。
自分のことですら「仮面をかぶった状態」として観ていて、本来の自分を忘れている。
「仮面をかぶった自分」を自分だと思いこんでいるということですね。
「仮面」をつけていることを忘れて、「仮面」をつけた人たちと人間関係を築いている。
そこに、その人自身の体温が感じられる交流が、はたしてあると言えるのでしょうか。
そしてこの「役割」や「仮面」といったものは、他人がつくったものです。
自分がいいと思って「こうしよう」と意図してつくったものではないのです。
しかも、そこにも気づいていない。
他人がつくった「そういうものだ」「こうするべき」「こうしなければ」という価値観を採用して生きている。
それが自分の身体のサイズに合っているのであれば、それほど問題は生じないかもしれません。
しかし、身長が180センチもあるのに、ストロベリーサイズの服を着ていたら窮屈でしょう。
というか、そもそも着ることすらできないですよね。
すでに大人なのに子供服を着ようとしているようなものです。
「役割」や「仮面」は自分でつくったものではありません。
親や社会から無抵抗に刷り込まれた他人の価値観です。
そのルールを自分にも他人にも当てはめているので「人間関係」に悩むのです。
堀内さんの新刊では、この「役割」や「仮面(ペルソナ)」といった他人がつくったルールを一度見直して、自分にとって心地よい形にデザインし直そうというのが「人間関係のおかたづけ」だとしているのではないかと感じました。
阿部敏郎さんのこの本には、
付属品として誘導瞑想CDが付いていたのですが、このCDの中で「社会的な自分をひとつずつ剥がしていって、誰でもない自分になる」というものがあります。
まさにこれだなと思いました。
他人から与えられた価値観やルールを一旦すべて剥がして、素の自分(本然)になってから、新たに自分にとって心地よい価値観を採用していく。
これが、堀内さんがこの本の中で伝えたいことのひとつではないかと「僕は」思ったのです。
ほとんどの人は、親や社会から刷り込まれた価値観やルール、「べきねば」といったものを、疑いなく採用してしまっています。
採用していると言いましたが、より正確に言うと「従っている」んです。
他人から与えられた価値観に従っているということは、ある意味「奴隷」状態と言っても過言ではないです。
しかもその自覚がない。
自覚がないから、自分がしていることを他人がしていない場合、そこにイライラや怒りを感じ、他人に自分と同じことをするように強要するようになってしまう。
日本特有の「同調圧力」というやつです。
「私は我慢して頑張ってやっているのだから、あなたたちも私と同じように我慢しなさい」
そういう態度で関係を結んでしまうのです。
これが、「他人に干渉する」「他人の自由に土足で介入する」ことにつながってしまうのだと思います。
それ、やめましょう。
私には私の自由があるように、相手には相手の自由があります。
そこにむやみに干渉せず、相手の自由に介入しない。
そのためには、他人から刷り込まれた価値観やルールといったものを一旦剥がす必要があるんです。
一度すべてを剥がして、自分の心地よい形にデザインし直す。
そうすることで、他人に干渉することがなくなります。相手の自由に介入しなくなるんです。
人間関係にストレスを感じないから。
自分にとって心地よく感じる人たちとつながり、そうではない、自分とは価値観の違う人たちとは、相手の存在を尊重しつつも、一定の距離を置いて接する。
これができるようになると、「人間関係」における悩みのほとんどはなくなるのではないでしょうか。
自分と他人を優劣というルールで見るのではなく、横並びの対等な関係で「心地よさ」を重視してフラットにつながっていく。
一緒に何かやる時は集まるし、それが終わったらまた、それぞれの場所に帰っていく。
ベタベタしない。干渉しない。相手の自由に土足で介入しない。
そして、相手の価値観を尊重する。
そういう「人間関係」を結ぶことが出来たら、人と関わることにストレスを感じることなく、もっと自由に自分を表現できるのではないかと思いました。
「目の前の人は自分」です。
他人という姿かたちをしていますが、相手を見ているようで、自分の価値観を観ているんです。
「表層に騙されるな」とは池田晶子さんの言葉ですが
他人という姿かたちをしていても、結局それは「自分自身」であり、親や社会から刷り込まれた価値観やルールが「鏡」に映っているだけなんです。
それを剥がして、誰でもない自分として、体温の感じられる関係を他者と築いていく。
そのために「人間関係のおかたづけ」をするのです。
おかたづけをすると、「自分」がわかります。
自分はどんな人が好きで、どんな人が苦手か。
どういうつながりが心地よくて、どういう関係をつくっていきたいか。
他人から刷り込まれた価値観やルールに従うのではなく、誰でもない自分と再び関係を結び直す。
堀内さんの新刊は、テーマこそ「人間関係」ではありますが、「人間関係」を扱うことで「自分」を扱う、言ってみれば「汝自身を知れ」本だとも言えると思います。
自分自身を知る、そして「役割」という他人から与えられた呪縛から解放する。
それが、堀内さんの新刊『人生を変える新しい整理整頓術 人間関係のおかたづけ』という本だと思いました。
冒頭のアドラーの言葉にあるように、対人関係で悩まない人はいません。
人は多かれ少なかれ、「人間関係」に悩みを抱えています。
その悩みはなくなることはないかもしれませんが、気にならないくらいに小さくすることはできます。
この本にあるように、様々な「箱」に仕分けしていた人間関係を、新たに「3つの箱」に仕分けするだけです。
しかもこれは、自分だけでできます。
相手は関係ありません。
どこまでいっても「自分」なんです。
その方法論と具体的なケーススタディ、そして様々なワークまでをも網羅した全く新しい「人間関係」本の決定版がこの本です。
それにしても、堀内さんの著書全てに共通して言えることですが、今回の「箱理論」のように、既存の価値観を全く新しい枠組みで再構築して、しかも誰にでも理解できて実践できる形にまでわかりやすく提示できてしまう堀内さんの独創力と最適化能力には脱帽です。
「人間関係」に課題を抱えている人は勿論、カウンセラーやセラピスト、コーチなどの対人援助職の人には必読の書と言えるでしょう。
さらに、恋愛関係について、いつも同じパターンを繰り返してしまう人にとっても、既存の恋愛指南書とは違う画期的な1冊となるのではないかと思いました。
「人間関係」に悩むすべての人に、自信を持ってオススメします。
『人生を変える新しい整理整頓術 人間関係のおかたづけ』
この本で「誰でもない自分」と心地よい関係を結び直すきっかけにされてみてはいかがでしょうか。
何者でもない物書き 上田光俊
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