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「この景色を見て美しいと思える心」さえあればいい

夏も終わりに近づいています。いかがお過ごしでしょうか。
今日は、少し精神論を語ってみようかと思います。医者の世界というのは、非常に狭く、また職業柄、特別扱いを受けてきた人間が非常に多いです。一方で、そのような人間たちが切磋琢磨(あるいは蹴落としあい)を繰り広げる中で、ダークサイドに落ちていく者を数多く見てきました。しかし、医者は人の人生を左右する「病気を治す」ことが主な仕事であり、ある意味で最も倫理観が求められる職業だと思います。
多くの医者が忘れていること、それは、「困っている人の役に立ちたいと思う心」だと思うのです。否、もちろん必ずしも完全に忘れているわけではないのですが、金銭欲や出世欲に振り回されるあまりに、無意識の領域に追いやられているのではないでしょうか。

その人が生きてきた人生を大切にする

私は外科医ですから、手術を生業にしているといってもよいでしょう。しかし、手術しかできない倫理観のない外科医とはいかがなものかと思います。まず、大事にしなければならないことは、患者さんやその家族の価値観です。「手術適応のある/ない」は科学的にとても大切ですが、その人がどのような人生を歩み、どのような死生観を持ち、この先どのような人生を歩みたいかをしっかり把握する必要があると思います。ただ、画像だけを見て手術をするか決定するような外科医にはなってはいけません。薬の処方も同じです。本当にその薬が必要なのか、検査値だけを見るのではなく、その人の生活にどのような影響を及ぼすかまでしっかりと見極める必要があります。そのような総合的な判断は今のところ、AIにはできないでしょう。人の心を知り、それに沿って治療計画を立てていくことが、AI時代の医師に求められる姿ではないでしょうか。

終わりなき欲望よりただ純粋に生きる

もちろん、金銭欲や出世欲などを否定しているわけではありません。医者の世界は、シビアですから、自分自身が生き残っていくために業績を積み上げていくことも大切です。良い業績や金銭的成功を獲得するためには、死に物狂いで取り組むことが求められます。しかし、時間やタスクに追われ続けることは自分自身を見失うことにつながります。シビアな世界で生きるからこそ、時には初心に帰り、自分自身の生き方や価値観をもう1度見直すことも必要ではないでしょうか。今まで目に留まらなかった景色を見て感動できる人生を送りたいものです。

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