見出し画像

病気のせいだと言われても

以前付き合っていた人は、相手の気持ちになって考えることが出来ない人だった。
私の好きなものを否定したり、私が真剣に話しても聞く耳を持たなかったり、それくらいならまあまだいいとして。仕事終わりに私の家に行くから、ご飯を作っておいてほしいと言われ、言われた通り作って待っていたのに、結局連絡もなしにすっぽかされるとか、しかもそれが何度も続いたりとか。仕事の関係で仕方ない時もあるのだから、連絡してくれればそれでよかったのに。時間と手間をかけて準備したものを、簡単に無駄にされ、簡単に裏切られた私の落胆を、彼は想像できない。

そういったことの積み重ねで、私の彼への信頼はどんどんなくなっていった。ああ言ってるけど、どうせ本気じゃないんだろうな、どうせ見栄を張るために話盛ってるんだろうな、とか。どうせ裏切られるから信じるのをやめようと思うようになった。
限界突破した頃、もうここにいる意味はないと思い、結局私は彼から離れた。

しばらく経った頃、彼から連絡があった。
「統合失調症になったのでしばらく仕事を休む」という内容だった。精神疾患について無知だった私は、なんだかよくわからないまま、その病気についてネットで検索してみた。
主な症状として、幻覚、妄想などの陽性症状、無気力、意欲の低下などの陰性症状、注意・集中力、判断力の低下などの認知機能障害があり、他人の感情や表情についての理解が苦手になるのも症状の一例だという。

私が幾度となく傷付いてきた彼の思いやりのなさは、病気の症状だったのかもしれないというのだ。

相手の気持ちになって考えることが出来ない人。そのレッテルをでかでかと相手の顔に貼りつけて、軽蔑して距離を取ることで、私は自分の身を守った。でもこれじゃ、私が病気に理解のない酷い人間みたいじゃないか。
突然私は自分を守る術を取り上げられ、さらにはちょっとした罪悪感すら感じさせてくるというか、感じなければいけない雰囲気を出してきた。
病気になったという後出しの事実。もう離れた相手だからなんでもいいとはいえ、だからってなんだかちょっと、ねえ。

でもどちらにせよ、私が傷付いたのは事実だ。最初からずっとそこにあった事実。散々傷付けておいて、実は病気でした、だからしょうがないでしょって言われても(別にそんなこと言ってないけど)、正直もう何も信じられないから、それが言い訳の為の嘘なんじゃないかとすら思ってしまう。さすがにそれはないんだろうけど。病気だからしょうがないってわかってるけど、そう素直に割り切れないほど、私に残った傷は根深い。

どこからがもともとの性格で、どこからが病気の症状なのか、そもそも彼の場合どんな症状が出ていたのか、私にはわからないし今更知ろうとも思わない。でも、病気のことについては知っておいてもいいのではと思い、参考にしたのがこちら。

kagshun先生のvoicyは、わかりやすい・ためになる・おもしろいの三拍子が揃っていて、聞き応えがあってよくお世話になっている。統合失調症についての回があったので、これを機にと思い聞いてみた。

ある程度病気いついては理解できたけど、やっぱり彼に対する不信感は残る。というか、不信感だけ残った。多分この不信感は病気のせいだけじゃない。きっとそう。そうだと思いたい。

せっかく続けたのに今やめたらもったいないと思って、無駄だとわかっていても時間やお金を消費し続けてしまうことを「コルコンド効果」と呼ぶらしい。私が彼と付き合い続けてしまったのは、まさにこれだったのだ!ちなみにこれはギャンブル依存症の人の典型的な心理現象らしい。コルコンドという単語をパチンコ店の名前にした人、ある意味センスあるな。

どうせ彼はもう私のことなんて忘れてるし、私が何に傷付いていたかなんて知らない。教えてもやらない。何もわからないまま一人で苦しめばいいと思って、明確な理由は言わずに私は消えた。でも結局いつまでも一人でもやもやしているのは私だけ。そんな自分が嫌になる。

でもやっぱり、私が傷付いたことは紛れもない事実なのだ。それは忘れなくてもいいと思うことにする。
また同じようなことにならぬよう、この経験を学びに変えるのだ。人間関係をうまいこと構築して、時に状況を俯瞰して、自己防衛して、生きていかねばならぬのだ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?