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絵を描くことは、自分に正直になること

私は、絵を描くことが嫌いになっただけではなく、

絵を楽しく描いていたことすら
人生において無かったことにしていた時期がある。

突然、消えたくなった

小学校3年生のとき、
「夏」をテーマに絵を描こうという授業があった。
私はお祭りが真っ先に浮かんだので、
早々と筆を進める。

私が描いたのは、たくさんの屋台が私を取り囲む画。
焼き鳥屋さん、わたあめ屋さん、風船やお面が売ってるおもちゃ屋さん。

描いている最中も、実際のお祭りの様子を想像して
思わず笑顔になっていた。

私の通っていた小学校では、絵を描く授業の際
最初に鉛筆で下書きをし、先生に見せに行き
OKが出るとその下書きをネームペンでなぞる。

そのあとに水彩絵の具で
色付けをするという流れだった。

今考えるとすごくおかしなシステムだったと思う。
どこの学校もそうなのだろうか…。
とくにネームペンの工程が謎だ。

そうして当時の私は下書きを終え、周りを見ると
すでに先生に許可をもらうための列ができていた。
私も慌てて列に加わる。

前に並んでるコは
結構先生に修正されてるみたいだったけど、
私はすぐにOKをもらう自信があった。

だってこんなに楽しく描けた絵は久しぶりだったから。

そして私の番。
先生は「こうした方が勢いがある」と言いながら、

屋台に囲まれて、
楽しそうに笑う絵の中の私
…の腕をまわりの屋台に向かって伸ばした。

その腕は人間の構造上あり得ない方向に曲がっている。
おまけに脚まで八の字に曲げられた。

席に戻り、先生が描き加えた腕や脚の
濃い鉛筆の線を見ながら、しばらく手が動かなかった。


褒められても、嬉しくない

結果、その絵は佳作という賞をとった。
私は先生が描き加えた通りに描き直したのだ。

その通りにしないと先に進めない、
私は『描き込む』よりも
絵の具で色をのせていく方が好きだったので、
とにかく下書き、ネームペンの段階から脱したかった。

それに、色をつけ始めたら
この嫌な気持ちも変わるかもしれない。


でも逆だった。
もうすっかり「私の絵」では
なくなってしまったその作品に色をつけるのは

楽しくもなかったし、苦痛だった。
早く終わらせて、この作品から離れたかった。

それがどうだろう。
賞をとってしまった事によって、
嫌でもまたその姿を見ることになってしまった。
みんなが『すごい』『おめでとう』と言う。

私は苦しかった。
ちがう、それは私の作品じゃない。
先生が描き直した、先生の作品。

友達から向けられる羨望の目と
胸が張り裂けそうなくらい辛い気持ち。

小学3年生の私には深い傷になった。
それ以来、
自分が描いた絵を人に見せることが嫌になった。


私は間違っていなかった

発信することを避けるようになったとはいえ、
絵は変わらず好きだった。

ただ、自分の作品を人に見られることに
大きな恐怖を感じるようになり
同時に人との接触が怖くなった。

それからだいぶ年月が経ち、
高校生になった私は友人に誘われて美術部に入った。

その時の顧問の先生は、
私の高校に来る前は養護学校にいて
同様に美術を教えていたらしく
過去に受け持った生徒さんの作品を
よく見せてもらっていた。

その作品のほとんどはたくさんの色が使われていて、
おそらく作者が好きなものや
印象に残ったものを誇張して描いていたり、

それは時に目が覚めるような、
作品に没入してしまうような感覚に陥った。


先生は私にこう話した。

「彼らは“障害”という才能を持って
生まれてきたから、
私たち凡人には思いつかないような表現をするんだ。」

さらに話は続きます。



でも、僕らが子供の頃は
みんな同じ才能を持っていたんだよ。


でも大人たちは葉っぱは緑、トマトは赤だと教える。 でも本当は、葉っぱは一枚一枚微妙に色が違うよね。

赤かったり黄色くなっていたり、
枯れたものは茶色を通り越して黒くなっていたりする。自分が感じたことをそのまま表現していいんだ。
その気持ちを持ち続ける事が大事。
技術はその次なんだ。

先生のその言葉で、
これまでのモヤモヤがすべて吹き飛んだ気がした。

何が間違っているのかという話ではない、
どれも正解なのだ。
少なくとも創作においては感性は人それぞれ、
自分の物差しで修正してはいけない。

技術と感性は別物だ。
技術は指導できるが感性は尊重されるべきである。
私はそう確信した。


私だけの色


空はいつも青色ではない。
天気や時間、季節、場所によって絶え間なく変化し、
楽しいとき悲しいときで
感じ方が違う日もあるかもしれない。


もし誰かに否定されても、
私は『私だけの色』を持っている。

大人になって仕事を日々続ける中で
理不尽なことを言われて悩むことはあっても

創作の中では自分に正直に、
絶えず変化する私だけの色を持ち続けて
生きていきたいと思う。


***


以下で紹介している12点の作品たちは
誰かに見せるためではなく、
自分のためだけに描いたものです。


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