【黒漆楼閣人物螺鈿硯箱】って何?美術館で役立つ漆器作品のキャプション読解テクニックと、5つの装飾技法を紹介!
あなたは美術館で漆器の工芸作品を見ていて、
このようなキャプション(作品の名札)
を見たことがありませんか?
『黒漆楼閣人物螺鈿硯箱』
作品が綺麗だったのでキャプションを見たものの、
5文字以上の漢字が羅列されると
「ああ、ごめんなさい」
「専門家じゃないのでわかりません」
という気持ちが押し寄せてしまいます。
挙げ句の果てに、
キャプションを見たのちに
「ふむふむ」「ほほう」と
さも理解したかのような雰囲気を出しながら
その場をゆっくりと去る…
なんて行動をしてしまいますよね。
でも今日からは、
「漆器の作品が好きな人」から
「漆器の作品がわかっていて好きな人」
になれるでしょう。
今回の記事では、
漆器作品のキャプションを読み解く方法と
文様を付けるための技法についての基本を
ご紹介したいと思います。
もう長い名前に惑わされない!
【キャプションが語る漆器作品の真実】
漢字が並んでいて、
難しいと感じる方が多いと思いますが
「読み方」さえ覚えていれば、
その作品の基本的な情報が理解できるようになります。
基本的に、
〈塗り〉〈文様〉〈技法〉〈用途〉
の順で作品の名前になっていると覚えてください。
ちなみに、記事のタイトルから登場している
【黒漆楼閣人物螺鈿硯箱】はこんな作品でした。
ここで、応用としてこのキャプションを読み解いてみましょう。
もう、5文字以上の漢字も怖くありませんね。
〈塗り〉は朱漆、
〈文様〉は花鳥、
〈技法〉は沈金、
〈用途〉は膳です。
【朱漆花鳥沈金膳】は、こんな作品でした。
もっと漆器作品を理解するために!
【知っておきたい5つの装飾技法】
漆器作品のキャプションは
理解できるようになりましたが、
まだ「?」が残るのは「文様をつける方法」でしょう。
ここでは、漆器作品に使われる
文様をつける方法を5つ紹介します。
もちろん、文様をつける方法は
5つだけではありません。
この記事を読んで、
技法に興味を持った方は調べてみてくださいね。
⑴沈金
沈金刀という、彫刻刀のような刀で文様を彫り
その溝に漆をすり込み、その漆が乾かないうちに
金箔や金粉を押し込んで密着させます。
文様以外の金を拭き取ると溝は金色の、
鋭く繊細な文様になります。
先ほどの【朱漆花鳥沈金膳】がその例です。
⑵螺鈿
夜光貝やあわび貝を、砥石で摺り
1ミリ以下の薄い板状にします。
これを文様の形に切り漆器にはめ込んだり、
貼ったりすることで虹色に変化する文様が生まれます。
光の向きで変わる色味に心奪われます。
⑶箔絵
漆で文様を描き、金箔を押して接着させます。
完全に乾かしたあと、金箔を吹き払うと
漆で描いた文様が金色になって現れます。
この金箔の上に黒漆で文様を描き入れて仕上る技法です。
⑷堆朱
漆に砥粉(砥石を切り出す際に生じた砥石の粉末)を混ぜた|灰漆《はいうるし》に文様を彫ったり、または木に直接文様を彫ったりして、その上から朱漆を塗ります。
漆を塗り重ねて、文様をレリーフ状に彫っていく方法もあります。
堆朱には「朱」という文字が既に含まれているので
「どんな文様か」から名前が始まっていますね。
⑸堆錦
漆に朱や黒の顔料(絵の具)を混ぜて練り、
粘土状にします。(堆錦餅という)
これを棒で平たくのばし、
文様の形に切り取って貼り付け
柔らかいうちに凹凸をつけ、線を入れて仕上げる技法です。
本居宣長の和歌、
「敷島の大和心を人とわば朝日に匂ふ山桜花」
をモチーフした文様です。
明治後期から昭和初期にかけて、
発注された漆器だと言われています。
「祝凱旋」の文字の意味としては戦勝記念品であったためです。
漆器作品がより美しく見える!【キャプションと技法】
美しい漆器の鑑賞を楽しむためには、
キャプションを読み解くことが重要です。
キャプションには美しい漆器の世界を理解する
ヒントや背景、制作技法などが含まれています。
そのため、私たちはキャプションを読み解くことで、漆器の魅力に気づき、より深い鑑賞ができるでしょう。
この記事がみなさまのお役に立てれば幸いです。
応援したいと思ってくれたらうれしいです! これからも楽しく記事を書いていきます☆