インターホンが鳴ると手が震える元カレ

高校生の時に付き合ってた元カレの話。


10個以上、歳上の彼はいつも明るくて面白くて、いつも私を元気にしてくれた。

そんな彼の苦手なものがインターホン


彼は、インターホンが鳴ると手が震える。

私はその理由を付き合う前から知っていた。


親の借金。

彼は複雑な家庭で育った。


親にお金がないのは彼の日常で。

映画でしか有り得ないと思っていた借金取りのオジサンが存在するのも、彼の日常だった。


知らないオジサンが鳴らすインターホンを、彼は20年経っても、大人になっても、怖がっていた。

恐怖を覚えきった彼の身体はとてつもなく正直だと思った。


だって彼は記憶に震えている。

そこに借金取りのオジサンが居なくても。


彼の両親は貧乏でネグレクトだったそう。

ご飯は与えてもらえず、給食だけが頼りだったと聞いた。

そんな彼の口癖は、

俺は子どもは一生いらない。


「親が居れば幸せなわけじゃないよ。」

「貧乏でも幸せな家庭があったとしても、お金はないよりあった方がいい。」

「貧乏な家庭に生まれるのか、金持ちの家庭に生まれるのか、幸せな家庭に生まれるのか、虐待するような親の元に生まれるのか、子どもは選べない。」

「もし選べるなら、俺は知らなくていいことを、知らずに生きてこられた。」


こんな話を私は、彼と別れるまでに100回は聞くことになる。


私は、彼と別れて、今の旦那と結婚しても彼のことが忘れられない。


好きだから忘れられないのではなく、弱い彼を忘れられない。


「虐待なんかするなら、俺を産まなきゃよかったのにね。」

実際に虐待されて育った人間の、この言葉がどれほど重いのか、私が理解することはできない。


でも、絶対に軽々しく親になってはいけないと、今も思っている。


結婚してから2年、どれほど子どもが欲しくても、彼の言葉が今も聞こえてきて、私は逃れられない。


まだ見ぬ我が子を

幸せにできるのか、

自由度の高い選択肢を与えてあげられるのか、

永遠にグルグルと考える。


お金がある=幸せ、ではない。

もちろん、貧乏=不幸だとも思わない。



でも、お金がないと人生の自由度や選択肢が狭くなるのは事実だと思ってる。


不幸と不自由は違う。


お金はただの手段だと分かっていても、私はずっと彼の言葉から逃れられない。

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