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初note ショートショート『花言葉』

俺は、いつものように彼女に合う花を探していた。 

「スイートピーはこの前あげたし、その前はカンパニュラだったし、たまにはストレートにバラもありか…」

花はいい。
何の悩みもてらいも無く、みずみずしく咲き誇り、優しく悠然と散りゆく花々。 
彼女は、そんな綺麗な花々にとてもよく似ている。


……なに恥ずかしいこと考えてんだ俺。


柄にもない思いを巡らせて花を決めあぐねていると、もうすっかり顔見知りとなった花屋のおばちゃんが話しかけてくる。 


「あらいらっしゃい、今日はどの子たちにしますか?」


花を“子”と呼ぶおばちゃんに、俺は一気にもっていかれたのを覚えている。 このおばちゃんもまた、みずみずしく咲き誇ってきた人なのだろう。


「はい、今日はバラにしようかと」

「いいじゃない、バラをもらって喜ばない女性はいないですよ」

「ですか」

「そうですよ。万が一、喜ばれなくても優しくしてあげてください。トゲ、のある態度はダメですよ」

「はは。ありがとうございます」


いつも少し粋なことを言うおばちゃんだ。


バラを包んでもらい、いつもの道を歩く。 
今日は少し風が強い。
バラが震えるように揺れている。 
まるで風邪を引いた“子”のようだ。

またもや、そんな柄にもないことを考えているうちに、彼女の元へとたどり着く。 


今日は何を話そう。


誰にでも優しい彼女。

見た目より幼く見えることを気にする彼女。 

鼻声の彼女。 

よく泣く彼女。

その何倍も笑う彼女。 

少しガンコな彼女。 

猫もいいけど犬も好きな彼女。 

本が好きな彼女。 

曲がったことが大嫌いな彼女。

大好きな、彼女。 



苔ひとつない、手入れが行き届いたお墓の前に立ち、俺はつぶやく。 

「…元気?」

つぶやいた刹那、目頭が熱くなる。

「俺、結婚する事になったんだ」

あれ、おかしいな。

「だから安心してよ」

もうあれから随分たってるのに。

「今度、奥さんを紹介するよ」

涙が出る。 

「色々報告があるんだけど」

涙が出る。 

「うまく言えないや」

きっと風が強いからだ。

「ごめんよ」

きっと砂が目に入ったんだ。



「孫の顔くらい、見せてやりたかったよ」

帰り道、吹き抜ける風の中、母が好きだったクチナシの花の香りを微かに感じた気がした。


 
~文章 完 文章~




おかげさまで素敵な本が出せました
↓↓↓
初書籍BKBショートショート小説集電話をしてるふり

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【2020年4月8日(最後に追記あり)】

ちょいと後書き

(初noteにまずショートショートでご挨拶かましての、自己紹介)


初note。

まずは、ショートショート読んでもらってありがとうございました。

自己紹介してからショートショートをのせようか、ショートショートをのせてから自己紹介しようか迷った結果、自己紹介で飽きられてショートショートまでスクロールされなかったらまずい、という芸人特有の用意したツカミが弱いと不安なまま舞台に向かう精神が働き、まずショートショートぶちかまして、ちょいとだらだら書くことにしました。

まあ、ショートショートでつかまれなかった方は、ここも読んでないと思うのでそれすら計算通り。ふふふ。BKBの手の平。


改めまして、BKBこと、バイク川崎バイクです。
バイクだけにブンブンとか、BKBヒィア、スススとか主に言う、変な名前のピン芸人です。

バイク川崎バイク。


システム的には裁判員裁判です。

ジョンソンエンドジョンソンです。

永遠のネクストブレイク芸人です。



ツカミはこの辺にして(これもツカミかい。保険多いな)

このショートショートの物語はけっこう前に、BKB(別の過去の媒体)で趣味で投稿していたものを、加筆修正して再投稿したものです。


それがnoteという、文章を載せるのに最も適した媒体があると知り改めて書きました。


昔からショートショートが好きで、


オチで少しなるほどね~と思わされるものが好きで、


二回読み返したくなるものが好きで書きました。


BKBを以前から知ってくれてる人には、

へ~、BKBってBKBって言うだけの存在じゃなかったんだ。こんなのも書いたりするんだ、幅広いんだ、マジブンブンだわ。
とか言ってほしくて書きました。


BKBを知らなかった人には、

よくぞここまで目を通してもらってマジBKB(べ別に…感謝してる訳じゃないんだからね…バーカ…!)


失礼しやした。 


                                                                                                      

ちなみに、僕の同期の芸人仲間にしずる池田という奇才がいるのですが、以前池田にショートショートを読んでもらった時、
「いいねえ。上手くまとめててムカつくねえ笑。これBKBが書いたって言わずに公開したほうがいいんじゃない?なんつーか、賢い人だと思われちゃうよ?芸風の邪魔しない?」
と言われました。

すぐさま賢い人だと思われたい、と思いました。
ギャップエモいって言われたい。


そして、想像だにしてなかったこの未曾有の事態の今、仕事もできなくなり、収入的にも不安も募り、したいことはするべきだと。どう思われようが、したかったことはやってみるべきだと。


という訳で早い話が、
noteで

BKB(文章で軽くボロ儲け)

できたら恐悦至極です。
良かったな、これからも読んでもいいかな、マジブンブンだったなと思ったら、
SOS(サポートお気持ちサポート)
(noteのアプリではなく、ブラウザで見てもらってこのページ下のほうに、サポートできる画面出てくるよ!へへへ)


とはいえ、そもそもこの全人類SNS大発信時代の大海原をBKBがどこまで航海できるかは甚だ疑わしいですし、興味を持ってもらうことの難しさは分かっているつもりです。
ただ、幸か不幸か、周りに凄い人は多いですので、刺激という波に乗りながら、せっかく手元に容易に握れる発信源というオールがあるのだから、できるだけ握りしめたいなと思います。
船だけに。いや船かい。バイクで例えんのかい。


話は脱輪しましたが(バイクだけに)
我々芸人の資本であり基本はやはりライブです。
笑い声をダイレクトに浴びたいがためやってきた16年、芸人を曲がりなりにもやれてきた現在、少なからずどこかの誰かの元気の一端を担えているのだとは思います。そしてその笑い声を聞いてこちらも元気になるという素晴らしいシステム。

それが出来ない現状、この違った形のアプローチもそれはそれは暖かく見守って頂ければこれ幸いなりです。


いつか、ブック川崎ブック出したいです。



駄文ブン、長文ブン、最後まで読んでもらった方、ありがとうございました。

お身体に気をつけて。

それでは一旦エンジン切ります。

バイクかしこバイク🛵


🛵🛵🛵🛵🛵🛵🛵🛵🛵💨


【2020年8月追記】

この追記を読む方がどれくらいいるかは分からないですが一応。
この初のnoteを書いたのが4月、緊急事態宣言が出た次の日。

あれから4ヶ月。

変わらず世界は大変な状況が続いています。ただ、個人としては、その頃とは環境もやや変わり、できうる仕事や劇場もまだ少ないながらも戻りつつあり、なんとなんと、ここで夢として描いてた本が出せることになりました。
正直に言いますが、ここで書いたような

BKB(文章で軽くボロ儲け)

はできなかったです。
まあショートショートは無料記事で行ったのでそりゃそうです。
でもでも、サポートをしてくれてた方ももちろんいて、助かりました。少しは儲けさせて頂きました。マジありがとうございました。マジで制作費にあてます。

そして無料記事にしたからこそ、たくさんの方の目に触れて、広まって、出版にまでこぎつけたのは間違いありません。

このnoteには書いてない、書き下ろしショートショートも含め50のお話、素敵な素敵な本に仕上がりました。それはもう。



BKBショートショート小説集『電話をしてるふり』

おそらくこの自己紹介だけふわっと読みにきた方もいるかと思います。

他の話も読んでもらって興味がもし出れば、どうぞ本を、本で、読んでみてやってください。

ショートショートはこれからも書き続けたいと思います。

では改めて、お身体には気をつけて。

エンジン切ります。

バイクかしこバイク🛵

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