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備前さんぽ#03 レトロ教会と発酵文化の息づくまち・香登

自分の足でまちを歩いて備前のまちを知りに行こう!というコンセプトではじまった「備前さんぽ」。3回目は備前市の西部に位置し、おとなりの瀬戸内市とも接する「香登(かがと)」を訪問しました!

香登は旧西国街道にある宿場町。

昔は醤油蔵が多く、まちのあちこちから醤油の香りが立ち登っていたことから「香登」という地名になったそうです。
今も「鷹取醤油」という老舗のお醤油さんがあり、地元の方や観光の方で賑わっています。

おいしい醤油やソフトクリームに舌鼓! 鷹取醤油

というわけでまずは「鷹取醤油」へ!

この日は8月の中旬。カンカン照りの真夏日だったので、名物・ポン酢ソフトクリーム&醤油ソフトクリームでひーんやり。ポン酢ソフトクリームはまるでレアチーズケーキ、醤油ソフトクリームはキャラメルのような味わいでとっても美味!

そのあとは、種々様々なお醤油や、味噌だれ、ドレッシングなどを店内で味見!バリエーション豊富で、どれをとっても味わいが違うので、「おいしい!」の連続でした。自家製タレで漬け込んだピリ辛きゅうりや、冷やしうどんの試食まで出てきて、まるでお醤油のテーマパークのようでした。

備前の発酵文化のまち・香登

今回はお盆で残念ながらおやすみでしたが、香登には、ほかにも「馬場商店」の紅麹味噌、「ゴロベエ酢」など、代々引き継がれる発酵食品のお店が色々。もしかしたら香登=備前の発酵文化のまちと言っても過言ではないかもしれません。

こだわりの味噌・醤油・お酢と、香登駅周辺に広がる田んぼで採れたお米をあわせたら、美味しい定食が完成することまちがいなし。宿場町だった頃は、旅人もきっと美味しい食事に舌鼓を打っていたのでしょうね。

さらに香登では「お歯黒」の生産も盛んだったそう。「使いやすくて、匂いも少ない」と評判で、全国の生産量の80%が香登で作られていたのだとか。江戸時代には地区の450戸のうち100戸がお歯黒の製造や販売に関わっていたという資料もあるそうです。いっときは生産が途絶えましたが、「日東酵素」「香登おはぐろ研究会」が黒豆の調理に使うお歯黒として再び生産をはじめ、オンライン販売をしています。

香登米を満喫! 穂の蔵 & Curry Shibabe 

まちあるきの合間のランチは「穂の蔵」「Curry Shibabe」をはしご!

まず最初に訪ねたのは、香登米を使ったおにぎり屋さん「穂の蔵」。こちらもバリエーション豊富&色とりどりの具材が美味しそうで、どれにしようか迷います。ふんわりやわらかめに握られたたおにぎりと冷たいお茶で一服。

美味しかったねえと言いながらすぐさま2軒目へ。
香登さんぽ、なんだか食いだおれ旅になってきました(笑)

「Curry Shibabe」では、シンプルな「かがとのカレー」を注文。うつわはもちろん備前焼です。一口食べると「なんだか優しい味!」とびっくり。カレーの辛さももちろんあるのですが、とてもまろやか。聞くと、小麦粉を使わず、野菜をみじん切りにしてふんだんに煮込んでるからなのだとか。

他にも「シーフードカレー」「焼きカレー」なども絶品なのですが、もう一つご紹介したいのが「クレオパトラカレー」マスカットのワインとジャムを隠し味にいれたオリジナルカレーで、小麦粉や添加物も使わず90%が野菜でできてるの女性にオススメの一品なのだとか。通販でも買えるので、気になる方はぜひチェックしてみてください!

木漏れ日の備前焼ギャラリー・Quiet House

メイン通りを離れ北の山の方へ向かうと、竹林とさらさら音をたてる渓流が見えてきます。そのそばに居を構えるのが、備前焼ギャラリー「Quiet House」です。

Quiet Houseは、4人の備前焼作家のユニットで、”アノニマス”をテーマに、あえて作家の名前を伏せて「うつわを使うその人自身が主役になれるように」というコンセプトで活動を行っています。

今回はじめてギャラリーにお邪魔したのですが、夏の日差しの中、木漏れ日が涼しげでにゆれていて、とても心地よい場所でした。

ギャラリーの裏手には青々と広がる山々。2023/11/10~12には秋のオープンアトリエも行うそうです。気になった方はぜひこの機会に遊びにいってみてくださいね。

(帰るとき「裏に小さな古墳もあるんですよ」と教えていたき、ちょっと探検へ。中はしっかりした石室だそう!)

蔵や古民家の残る街並み

メイン通りに戻って散策すると、古い蔵や古民家が多く残っていることがわかります。

きちんと手入れされた小さなお社が何個も目につきました。
昔の旅人が、旅路の安全をお祈りしてたのでしょうか?
それともお商売の神様をおまつりしてるのでしょうか?

風見鶏とステンドグラスが特徴的な小児科病院も。レトロで気になる!

白く映える近代レトロ建築・香登教会

レトロ建築といえば、きっと香登の人が真っ先に思い浮かべるのがこちら。
真っ白な外観が目を引く「香登教会」です。
今も礼拝や結婚式が開かれるこの教会は、近代建築としても評価が高く、見学のため遠方から足を運ぶ方もいらっしゃるそう。



わたしたちが訪れると、牧師の坪内さんが丁寧に中を案内してくださいました。

窓辺から差し込む光が優しい。素朴でおだやかな雰囲気の礼拝堂。

教壇には備前らしく備前焼の十字架が。

奥の新館にはゴスペルホールも(奥の白い壁は、陽の光によって白い十字架が浮き上がって見える仕掛けになっています)ここで礼拝のほか、コンサートなども行われているそう。

香登教会ができたのは1895年、今年128年を迎えます。

地方の農村部にクリスチャンが多く、これだけ立派な教会が建てられた地域はとても珍しかったそう。それが今日まで残り続けてきたのは、明治大正の厳しい時代に粘り強く活動し続けた伝道師たちと、信仰心の強い地域の人の支えがあったからだそうです。

特に、1886年に地元の実業家・武用五郎辺衛が洗礼を受けたのは大きなきっかけでした。
なんだか聞いたことがある名前ですね。そう、記事の前半でも登場した「ゴロベエ酢」の五郎辺衛です!武用五郎辺衛は志が篤く、「岡山孤児院」を開設し"日本の児童福祉の父"としても有名な石井十次とも親交があり、同じキリスト教として彼の活動を支援していたそうです。

香登とキリスト教の歴史が紐解けてきたところで、坪内さんに「坪内さんが牧師になったきっかけはなんだったのですか?」と質問してみました。

「中学時代にいじめを経験しました。それが大学生になった後に教会と出会い、そのときに中学生の頃の体験を振り返り、"ゆるし"の体験ができたんです」

自分自身の人生と聖書の教えが重なり、牧師としての道を歩むことを決めた坪内さん。
お仕事として中国に渡った経験もあり、そこでの体験もまた印象的だったと語ります。

「聖書の教えに"人の子も、仕えられるためではなく仕えるために…来たのです。"という言葉があります。中国に渡ったのは伝道のためだったのですが、訪れたまちには、信仰どころかその日の生活があやうい人や子どもがたくさんいたんです。そのとき、一方的に教えを授けるのでなく、"その人がより良い人生を歩むために今何が必要なのか? 目の前にいる人にとって何が助けになるのか?”と寄り添い、支えることが重要なのだと学びました」

丁寧に言葉を選びながら、ご自身の思いと教会について教えてくださった坪内さん。
見学を終えて帰る頃には「教会」という場所が前より少し近くに感じられるようになりました。

おいしい発酵文化から歴史ある教会まで、今回は「香登」の魅力にたくさん出会えました。この日残念ながら時間があわず訪問できなかったスポットもあるので、香登にはまたもう一度訪れたいと思います!

備前さんぽ、次はどのまちへ出かけよう?

BIZEN CREATIVE FARMでは、不定期で「備前さんぽ」を開催しています。
自分の足でまちを歩いて、見て、聞いて、街の人や参加メンバーと話をして、知っているようで知らなかった備前のことを知る1DAY企画です。
開催する際はSNS(Twitter / Instagram)でお知らせするので、よろしければぜひご参加ください。はじめましての方も歓迎です!

(最後のお写真はQuiet Houseの裏道で出会ったヤギのクロベエ)

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