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備前さんぽ#02-1 備前焼のまち伊部&片上商店街

2023年3月20日、備前さんぽ#02 伊部・片上編を開催しました。

きっかけはFARMメンバーの南が、片上の観光MAPの片隅に「ホワイトノイズ」というちょっと気になる横文字を発見したこと。

調べてみると、片上を拠点に活動した現代アーティスト・林三從(はやしみより)という方のアトリエ兼ミュージアムだとか。「アートに関わる身としてこれは行かなくては!」と思ったのが始まりでした。(林三従さんのご紹介はボリューミーなので別記事で!)

美術手帖「女性たちの美術史特集」(2021年)にも名前が。
日本の美術史にも名前を残すアーティストが備前にいたことにびっくり

参加の声かけをしてみると「備前のディープなスポット、行ってみたい!」と12人から連絡が。埼玉や香川からも参加があり「ならばせっかくなので!」と、備前焼の里・伊部にも足を運ぶことにしました!

備前焼作家の窯とギャラリーが集うまち「伊部」

最初に向かったのは備前焼の里「伊部」。備前焼は、鎌倉時代にルーツを持ち「日本六古窯」の中で最も古い焼物と言われています。伊部駅を出ると目の前に備前焼ミュージアム(2023年5月~リニューアル工事)、駅中に現役作家の作品を鑑賞・購入できるギャラリー、徒歩1分圏に窯やギャラリーが並ぶ旧山陽道と、あちこちで備前焼の香りを感じられるまちです。

この日は、一陽窯の木村敦子さん、ギャラリーKaiの藤田恵さんがガイド役となって、伊部のまちを案内してくれました!

まちを歩くとそこは備前焼の世界!桃山時代に使われていた大きな水甕も。「こんな大きな物どうやって焼いたの?」という質問には伊部の南にある「南大窯跡」が答えになります。

南大窯跡

南大窯跡は、本物の山を切り拓いて造った巨大な窯!
写真のように山の斜面を掘って造られた窯跡がいくつも残されています。最大のものでは奥行50mにも及ぶとか。

足元には備前焼のかけらがびっしりと。当時の破片もあるんじゃないかと思うと歴史心がくすぐられます。(ただし史跡なので持ち帰りはNGです!)

伊部には県内外から集まったたくさんの備前焼作家さんが暮らしていますが、桃山時代には限られた家だけが備前焼を作ることを許されていました。それが木村・金重・寺見・森・大饗・頓宮の"窯元六姓"。この六家が特に古い歴史を持つ窯元で、今回案内してくれた木村さんの一陽窯もその子孫なのだそうです!

天津神社

「天津神社」の境内には、備前焼で造られた十二支像や、備前焼作家の陶印をきざんだ陶板がいっぱい!

備前焼の裏に押される作家の印「陶印」が刻まれた陶板
備前焼のねずみ発見!
虎!
七福神も
絵馬も備前焼!

至る所に備前焼があるので、まるで宝探しのよう。
偶然会えた宮司さんには「今日みたいな晴れの日も気持ちいいですが、私は雨上がりが一番好きです。雨に濡れた備前焼は、艶が出てきれいですよ」と教えていただきました。

北大窯跡

帰りは新緑の山道を通っておさんぽ。
山沿いには「北大窯跡」の碑が。南大窯跡ほどではないけど、こちらもまた山の斜面を活用した大きな窯だったそうです。

天保窯

至る所に窯があり、煙突から煙が上る。それが伊部のまちです。

山を降りると右手には「天保窯」。天保窯はその名の通り天保時代に使われていた窯で、その当時の窯がここまで綺麗なかたちで残っているのは全国でも数少ないそう。

窯の前には早咲の河津桜が。空も青くほんとうにおさんぽ日和でした。

一陽窯

木村さんの旦那様・木村肇さんとそのお父様・木村一陽さんの作品を取り扱う「一陽窯」では、備前焼作りの工程を見学させてもらいました。

工房の裏には薪の山。
一度の窯焚きでこの写真に映ってる量の薪があっという間に無くなります!(見切れていますがさらに大量の薪が)

土の準備。
ひよせと呼ばれる田んぼの地下の粘土層から集めた土を、砕いたり、水槽につけたりして、焼物を作るための土を準備します。
土作りも作家の個性が現れるポイント。山奥の洞窟から土を集める人もいれば、備前以外の土も配合する人も。備前焼は、土の風合がそのまま肌に現れるのでここにもこだわります。

この日は工房の中までお邪魔して、木村一陽さんの作陶風景も見学させていただきました。粘土の菊練をし、ろくろで湯呑の成形をする姿。手元の道具たちや手捌きから、備前焼と向き合い続けた年月を感じます。

完成した器は、ひびが入らないようゆっくり時間をかけて乾燥させます。

そしていよいよ窯詰め!焼物を運び入れる運道(うど)の上には神棚が。

うつわの場所、重ね方、藁の置き方etcによって、焼色や模様ががらっと変わるため、窯詰めもまた大事な工程です。

窯に火を入れると、昼夜を問わず薪をくべ約10日間火の番をすることに。窯焚きの前後は、備前焼作家にとって最も忙しい時期といえるでしょう。

できあがった作品の一部がこちら。
同じ備前で作られるKotiビールのためのビアグラスです。飲口が薄く広めでホップの香りがふわっと広がるかたちになっているそうです。
一陽窯の備前焼は、しっとりした質感で手になじむのが魅力だと思うのですが、こちらのビアグラスもやっぱりそんな魅力を感じました。

Gallery Kai

次に訪れたのは、藤田さんの旦那様の藤田祥さん、森大雅さん、馬場隆志さんという3人の作家さんの備前焼を展示販売する「ギャラリーKai」。

3人それぞれに違う作風が楽しめます
「ぼたもち」の備前焼

ここでは、備前焼の景色(焼き色や模様)の違いを教えてもらいました。
緋だすき、ぼたもち、胡麻etc… 焼くときに藁を置いたり、上に違う器を重ねたりすることで、作家さんはさまざまな景色を作り出します。

釉薬を使わず土の感触がそのまま残った赤茶っぽい焼色も特徴の1つですが、中には藁をくくりつけることでゴールドのような艶&質感になったものも!土や焼成の仕方によって本当にいろんな景色が表現できるのです。

特に注目だったのがこちら「白備前」! 新しい技法かと思いきや、実は江戸時代にこの技法は確立されていたそうです。乳白色が美しい…。

岡山出身のメンバーからも「備前焼のこと、知っているようでまだまだ全然知らなかった!」と感想が飛び交いました。

ギャラリーKaiは足元まで備前焼!
木村さん・藤田さん・FARMの南が企画したおみやげ「BIZEN PRODUCT」も

午前中だけの駆け足伊部さんぽ。見きれなかったお店もたくさんあったので「また来てね!10月には備前焼まつりもあるよ!」とご案内して終了しました。

そして次は片上へ!

北前船貿易のまちから図書館のまちへ「片上」

「片上ってどんなまちなの?」
「商業のまちかな?アルファ備前や商店街によく買い物に行きました!成人式をした市民センターや市役所もあって、備前の中心エリアって感じかな」

そんな会話が向かう車の中で交わされました。

片上は、今まさに新しくなろうとしているエリア。
海辺の図書館の新築計画や、閉業後20年越しにアルファ備前の改築計画が立ち上がるなどして、少しずつまちが動き出そうとしています。

かつての北前船の寄港地、片上。海が見える図書館がここに生まれる。

旧片上鉄道跡 ゼロ起点

片上湾のすぐ目の前は、旧片上鉄道の始発駅跡。
FARMメンバーの子供の頃は、ここから津山方面に向けて南北に電車が走っていたのです。今は「片上ロマン街道」というレトロな駅舎や地元B級グルメが楽しめるサイクリングロードとして整備されています。新築図書館にはサイクリングセンターも併設されるそう。楽しみです!

片上商店街

片上商店街はかつて「片上銀座」と呼ばれていた商業の中心地!
「でも高校を卒業してからは来てなかったなあ」ということで散策に。

懐かしいお店は閉まっている所もありましたが「あれ?こんなお店が!?」と思うようなお店もオープンしていました。

NicoNicoDo SMILE CANDY SHOP」のかわいい外観&ラインナップには思わず足を止めて立ち寄り!(写真を撮り忘れ…)岡山市から参加のメンバーが「岡山市のカルチャーゾーンの近くにもある、NPOが運営するお店ですよ。デザインにもこだわってて素敵ですよね!」と教えてくれました。

さらに図書館プロジェクトの一環で「まちじゅうどこでも図書館」という個人が運営するオープン本棚もあちこちにあり、本のまちとして少しずつ動きだしている感じがしました。

ゑびすや荒木旅館

ランチは「ゑびすや荒木旅館」で、ちょっと贅沢に備前焼御膳。
備前焼のカップでビールもいただきました。

荒木旅館は、江戸時代から続く老舗旅館。北大路魯山人や、美空ひばり、柴田錬三郎、イサム・ノグチ、バーナード・リーチ、明治天皇など、数々の文化人が滞在した歴史ある場所です。

この日は、女将さんが館内のご案内もしてくれました!

片上商店街は、たくさんの旅人が行き来した旧山陽道がルーツ。かつては通りのすぐ目の前まで片上湾がきてたこともあり、旅人・商人・北前船の乗組員でにぎわう宿場町として栄えていました。荒木旅館は、最初は廻船問屋として商いをスタートし、その後旅人をもてなすお宿となったそうです。

明治ガラスがレトロで素敵!
磨き抜かれた床からも、歴史の深さを感じます。

美空ひばりがコンサートをした大広間。上手下手に役者が引っ込む出捌け口があったり、能舞台のような仕立てになっていたり、本格的です。

昔の片上の様子を描いた日本画も。

レトロな電話室。片上で4番目に電話がひかれたので「電4番」。
今も荒木旅館の電話番号の末尾は「04」です。

明治天皇が過ごした部屋の一室。
床の間には、備前焼作家で人間国宝の藤原啓さんの書が飾ってありました。
あちこちに文化人の香りが…。

この日お昼を頂いたのはこちらのお部屋。
ここはなんと、備前焼陶友会が結成されたお部屋なのだそう!

(「備前焼陶友会」とは、備前焼作家やその販売や制作に関わる事業者が力をあわせて備前焼の保存・継承・互いの親睦のために設立された組合です。こうした窯元の組合は、全国でもとても珍しいそう!)

ひとつひとつのお部屋に歴史やエピソードが残っているので、興味のある方は訪れた際にぜひ聞いてみてくださいね!

福井堂

ランチ後は「ホワイトノイズ」の見学へ。見学を終えてすっかり日が暮れた片上商店街を歩いていると「福井堂」の明かりが目に入りました。

和菓子・洋菓子両方を取り扱う備前の老舗のお菓子屋さんで、最近では「COUTURE FUKUIDO TOKYO」という新しいお菓子ブランド展開も。お土産に、生カステラや名物ワッフル、おはぎなどお買い物を楽しみました。


伊部&片上の備前さんぽレポート、いかがでしたか?

次の記事からは、今回の備前さんぽのきっかけとなった、片上を拠点に活動した現代アーティスト「林三從」さんと、ミュージアム「ホワイトノイズ林三從ミュージアム」についてじっくり紹介します!


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