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経営難を産む経営者の自信

(中小企業改革シリーズ Vol.1)

日本の企業数は、約360万社。その内、中小企業の割合は全体の99.7%である。そして、大企業は0.3%しかない。また従業員数でみると、全体の70%が中小企業の従業員である。(経済産業省,2016)

しかし、なぜか大企業の論理や、マス視点で経営が語られるケースが多い。経営戦略/マーケティング/人材育成など、あらゆる点において、大企業と中小企業では大きく異なる。特に、小規模事業者においては全くと異なると言ってよいだろう。

そこで今回から、中小企業の現場から経営と事業のヒントを考えるをテーマに、noteを書くことにした。


浮き沈みの激しい中小企業の経営

中小企業の経営は、常に浮き沈みがつきものだ。これまで順風満帆という企業も盛者必衰の~である。内部環境(社内の環境)を如何に強固なものにしても、取引先/マーケット/競合他社などの外部環境(社外の環境)まではコントロール出来ない。

これまで数多くの中小企業を支援してきた経験から、常に思うのは「もっと早期に支援を求めて頂ければ、多くの策が打てたのに・・・」ということだ。ほとんどのケースが、手当が困難な程、経営が悪化してから社外に支援を求める。なぜこのような事態になってしまうのか。今回は、その理由を考える。


なぜ、ギリギリまで支援を受けないのか?

中小企業の経営者は、自身のアイディアと判断で今日までの成功を築き上げてきた。その結果、経営者は自身のアイディアや判断にとても自信をもっている。その為、他人の意見に耳を貸さない経営者は実に多い。実際、幾多の困難を経営者自身のアイディアや判断で乗り切ってきたのだから、今回もまた自分を信じて乗り切れると思うのは当然だ。

しかし、この「自信」が「傲慢さ」を産んだ時、仇となる。自分の判断はいつも正しい!と傲慢になり過ぎると、大けがをする。このような経営者は、社内の意見に耳を傾けない人が多く、耳を傾けたとしても、社外の者の意見ばかりである。きっと、「社内では自分が一番の正解を知っている」と思っているのだろう。

また、「教えて」「分からない」と言えなくなった経営者も意外と多い。自分は、強くて賢明でいつも正解なリーダーであると信じ過ぎているのか、はたまた、プライドが高くなり過ぎているのか、いずれにしても弱いところが見せられなくなっている。その為、他人に頼るのがとても下手になっている。

このように、自信が産み出す傲慢さや、弱みが見せられなくなった結果、早期に他者の意見に耳を傾け、より良い解決案を模索することが出来なくなる。つまり、「もうダメだ!」となるまで他者からの支援を受けようとしないのだ。

ここまでの内容を踏まえると、次のことが重要となる。

・自分を過信しない
・完璧を演じない

プライドの高い経営者にとっては、この2つが意外に難しいのだ。

しかし、経営者は完全無欠のヒーローではない。類い希なる才能と努力の結果、ビジネスを成功に導いたとは言え人間である。そして、人は誰しも得手不得手がある。また、調子の良い時もあれば悪い時もある。完璧で万能ではないことを認めることが重要である。


病気がちな人ほど長生きする

とある医者が言うには、「病気がちな人や臆病な人ほど長生きする」そうだ。なぜなら、しょっちゅう風邪をひくなど、病気がちな人は病院に足を運ぶ頻度が高く、それらの受診をきっかけに他の重大な病気の予兆が早期に見つかるケースが多いからだそうだ。臆病な気質で、ちょっとしたことで受診する人も同様だ。

しかし、健康自慢の人や病院嫌いの人は、重度に体調が悪化してからしか病院へは足を運ばない。その結果、手遅れになるほど病気が進行しているケースは多いそうだ。

これは、経営者にも言える。前述の話に重ねて考えてみると分かりやすい。

■健康に自信がある=経営に自信がある

 その自信から、他者に頼ろうとしない傾向がある。

つまり、自信が産み出す傲慢さが、リスク管理の怠慢を産むのだ。

「自分を信じるな」という訳ではない。「信じ過ぎるな」ということである。経営者は、自身のアイディアや判断を信じる必要があるし、それが信じられなければ、経営という大きなリスクを背負うエネルギーは湧いてこないだろう。だから、自分を信じつつも、過信と傲慢に至らぬよう日々のリスク管理が重要となる。

日々のリスク管理には、(王道ではあるが)次の2つを忘れてはならない。

①社内外にブレインを持つ
②批判する人を歓迎する

①社内外にブレインを持つ
ブレインはとかく社外に求めがちだが、社内にも持つことを忘れてはならない。会社のことは「中の人」が一番よく知っているからだ。社内のブレインは、しっかりと足もとを見据えた視点を与えてくれる。そして、社外のブレインは、会社や経営を客観視してくれる。

②批判する人を歓迎する
社内外のブレインに限らず、経営者に対して耳障りの良いことを言う人は多い。関係悪化を避けるために、本質を突いた指摘は避けたがるものだ。批判には、経営難に陥らないためのヒントが隠されているだけではなく、企業成長のヒントが沢山含まれていることが多い。批判こそ経営の健康チェックだと思えばよい。そもそも、批判する人を遠ざけると、経営者が裸の王様になってしまうので危険だ。


まとめ

経営者は、自身のアイディアや判断を信じて今日までの成功を築き上げてきた。しかし、過度な自信が傲慢さを産んだ場合、それが仇となり経営難を招くことが多い。

現在、経営が順調だとしても、経営者は自身を過信せず、社内外にブレインを持ち、複眼的に経営をチェックすれば、甚大な経営難に陥る前に回避が出来る。

また、批判には、経営難回避のヒントのみならず、企業成長のヒントが多く含まれている。批判する人を歓迎しよう。


がんばってイイ記事書きます^_^