【童話読み聞かせ】柿の葉っぱ
ちょっとおちゃめな魔法のようなことば「ペケロンパ」。童話の読み聞かせを「聞かせよう」。そして、みんなで読み聞かせを「してみよう」。
このペケロンパ・プロジェクトは読み聞かせによって子どもとの暮らしを応援しています。詳細はこちらの記事でご紹介していますので、良かったらご覧ください。
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▼まずは動画で聞いてみよう!
▼読み聞かせをしてみよう!
このお話の目当て
だれでも、移り変わる自然の中に、うまく適応して、たがいに助けあって生きることの喜びを、柿の葉にたくしての創作です。
読み聞かせのポイント
青葉のころの柿の葉のせりふは、元気よく、紅葉してからの柿の葉は哀調をおびたことばで話してください。柿の木の下で、子どもたちが、楽しく遊んで歌う場面がありますが、適当な節をつけてやったら、子どもたちは喜ぶのではないでしょうか。
おはなし:出村孝雄 / え:長谷部はるか / こえ:青柳糸
/ 著書:出村孝雄 / 制作:Bit Beans
▼おはなし
池のそばに、大きな柿の木がありました。
ある日のことです。
青い小さなかえるが、柿の木にとまって、ひとりごとを、いいました。
「ゲロ、ゲロ、ゲロ、池からとび出して、この大きな木に、のぼってきたら、すっかり、のどがかわいてしまった。ああ、水がほしいなあ」
すると、どこかで声がしました。
「かえるさん、かえるさん」
かえるは、びっくりしました。
「ぼくを、呼んだの、だあれ」
「かえるさん、かえるさん。わたしは、柿の葉っぱです」
「えっ、柿の葉っぱ」
かえるが、ヒョイと、上を見ると、頭の上の枝に、青い大きな柿の葉っぱが、ついていました。
「かえるさん。かえるさんは、水がほしいのですか」
「うん、ぼくね、ここまできたら、のどがかわいて、とても苦しいの」
「かえるさん。それならね、この葉っぱの先に、ゆうべ降った雨のしずくが、ついていますからね、それを、なめたらどうですか」
なるほど、柿の葉っぱの先に、しずくが光って見えました。
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。柿の葉っぱさん、ありがとう。では、そのしずくを、なめさせてください」
かえるは、柿の葉っぱに、たまっているしずくを、のませてもらいました。
そのときです。風が、だんだん、強くなり、そのうちに、ヒュー、ヒュー、ものすごい音をたてて、吹きだしました。かえるは、おどろきました。
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。 わあ、すごい風だあ」
ヒュー、ヒュー、ヒュー。この強い風に、柿の木は、大きく、ユラリ、ユラリ、ゆれはじめました。柿の葉っぱも、おどろきました。
「わあ、これは、これは、たいへんな大風だ。かえるさん、かえるさん、だいじょうぶですか。風に吹きとばされたら、いけませんよ」
でも、この青い小さなかえるは、いまにも、柿の葉っぱから、すべり落ちそうになりました。
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。ああ、ぼく、落っこちてしまうよう」
風は、もっと、もっと、強くなりました。ヒュー、ヒュー、ヒュー。吹きつけてきます。柿の葉っぱも、枝といっしょに、ゆれはじめました。
「かえるさん、かえるさん、あぶない、あぶない。さあ、この葉っぱのかげに、おはいりなさい。そら、すべり落ちないようにして、わたしのかげに、しっかり、つかまっていなさいよ」
かえるは、柿の葉っぱのかげの枝に、しっかりつかまって、しまいました。
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。もうだいじょうぶだ。風がいくら吹いても、ぼくには、あたらないよ」
しばらく吹きつづけた風は、もう、すっかりやんでしまいました。
かえるは、ほっと、安心しました。
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。ああ、よかった、助かった。葉っぱさん、ありがとう」
大きな青い柿の葉っぱは、あの強い風にも吹きとばされないで、平気でした。
「かえるさん、よかったね。かえるさんが、よろこんでくださると、わたしも、うれしいですよ」
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。柿の葉っぱさん。柿の葉っぱさんのおかげを、よろこんでいるのは、ぼくだけじゃないよ」
「おや、かえるさん、ほかにも、よろこんでくれるものが、あるのですか」
青い小さなかえるは、夏のころ、人間の子どもたちが、葉っぱのしげっている柿の木のかげで、たのしく、あそんでいたことを思いだしました。
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。柿の葉っぱさん、夏のころでした。人間の子どもたちが、この柿の木の下でね、歌をうたいながら、たのしくあそんでいましたよ。
木かげ、葉かげ、柿の木の下で、あそんで、はねても、暑くはないよ。木かげ、葉かげ、柿の木の下で、あそんで、はねよ。みんな、みんな、おいで……ってね」
「そう、かえるさん。みんなが、よろこんでくださると、わたしは、ほんとに、うれしいんです」
柿の葉っぱの、やさしい心に、かえるも、かんしんしてしまいました。
それから、しばらくたって、秋になりました。
ときどき、つめたい風が、サラ、サラ、吹いてきます。いままで元気であった青い小さなかえるは、ときどき、寒くてふるえておりました。
ある日のことです。
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。大さむ、小さむ、ブール、ブル。大さむ、小さむ、ブール、ブル」
かえるは、ふるえながら柿の木の下まできて、びっくりしました。
あの青かった葉っぱが、どれも、これも、みんな、まっかになっているではありませんか。
「ゲロ、ゲロ、ゲロ、きれいだなあ。柿の葉っぱが、みんな、まっかになってしまったあ。うわあ、きれいだなあ」
そのときです。どこかで、
「かえるさん、かえるさん」
と、呼ぶものがありました。それはいつか、水をくれたり、大風のとき葉のかげで助けてくれた、あの大きな柿の葉っぱでした。
「かえるさん。つめたい風が吹くようになりましたが、お元気ですか」
「ゲロ、ゲロ、ゲロ。葉っぱさん、まあ、まっかな色になって、きれいになりましたねえ」
「かえるさん、わたしが、そんなにきれいに見えますか……。そうですか。わたしたちはね、みなさんが、きれいといって、よろこんでくださると、うれしいんです」
ちょうどそのときです。つめたい風が、サラ、サラ、サラ吹いてきました。
青い小さなかえるは、寒くて、ふるえてきました。
「ゲロ、ゲロ、ゲロ、おお寒い、寒い。では、柿の葉っぱさん、ぼくは、土の中へ、もぐりこみますよ。外にいるより、土の中の方が、あたたかですからね。柿の葉っぱさん、さようなら」
かえるは土の中へ、ゴソ ゴソ、もぐっていってしまいました。
秋も、深くなって、つめたい風が、吹きつづけました。
赤くなった大きな柿の葉っぱも、寒くて、ふるえてきました。
「おお寒い、寒い。おや、おや、ほかの葉っぱは、風に吹かれて散っていく。さあ、こんどは、わたしが、地めんに、落ちていく番になりました
と、いいながら、じっと、下を見ました。
「あ、そうだ。あの土の中に、いつかの青い小さなかえるさんがいる……。わたしは、かえるさんのいる土の上に落ちて、あたたかい、おふとんのかわりになってあげよう。そら……、そら……」
ピョイと、枝からはなれた赤い大きな柿の葉っぱは、風に吹かれながら、ヒラ、ヒラ、散って、パタリと、地めんに落ちました。
「ああ、よかった。ちょうど、かえるさんのもぐっている、土の上に落ちることができました。ほかの葉っぱさんたちにも、ここにきてもらいましょう」
かえるのもぐっている、土の上に落ちた大きな柿の葉っぱは、ほかの葉っぱを、さそいました。
「ねえ、葉っぱさんたち。みんな、ここに落ちてきてください。この土の下にね、かわいい小さなかえるさんが、いるんですよ」
柿の枝についている、赤い葉っぱたちは、
「はーい、では、いきますよ。そら……」
ピョイと、枝からはなれると、みんな、ヒラ、ヒラ、とんできて、パタリと、 かえるのもぐっている、土の上に落ちました。
たくさんの赤い柿の葉っぱが、かさなって、地めんは落ち葉で、いっぱいになりました。土の中の、青い小さなかえるは、からだが、あたたかくなってきたので、おどろきました。
「ゲロ、ゲロ、ゲロ、これは、あたたかだ。どうしたことだろう」
かえるが、土から頭を出そうとしたときです。
赤い大きな柿の葉っぱが、いいました。
「かえるさん、あたたかくなりましたか。かえるさんが、あたたかくなって、よろこんでくださると、わたしたちは、うれしいんです。さあ、かえるさん、柿の葉っぱのおふとんをきて、らい年あたたかい春のくるまで、ゆっくりねむってくださいね」
青い小さなかえるは、秋から冬の間、葉っぱのおふとんをきて、じっとねむっていました。
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