【童話読み聞かせ】山びこ
ちょっとおちゃめな魔法のようなことば「ペケロンパ」。童話の読み聞かせを「聞かせよう」。そして、みんなで読み聞かせを「してみよう」。
このペケロンパ・プロジェクトは読み聞かせによって子どもとの暮らしを応援しています。詳細はこちらの記事でご紹介していますので、良かったらご覧ください。
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▼まずは動画で聞いてみよう!
▼読み聞かせをしてみよう!
このお話の目当て
おやつばかり不規則にたべていると、食事がまずくなり、栄養にかけることがあります。空腹にしてたべれば、食事のとき量もふえて栄養の面でプラスにもなる。そんなことを考えて、山びこを追いながら、子どもを空腹にさせました。
読み聞かせのポイント
三ちゃんの呼ぶ「なにかあ」と、山びこの答える「なにかあ」は、はっきり区別をつけてください。山びこの方は、遠くから聞こえてくるのですから、小さな声でゆっくりと。また、山びこを聞くときの、適当なジェスチャーもくふうしていただきたいと思います。
おはなし:出村孝雄 / え:田島和泉 / こえ:今角夏織
/ 作:出村孝雄 / 制作:Bit Beans
▼おはなし
三ちゃんには、悪いくせがありました。
三ちゃんは、ごはんをたべたあとで、いつも、おかあさんに、おやつのおねだりをします。
「おかあさん、なにかちょうだい、なにか、なにかあ」
おやつをたべたあとでも、すぐ、おねだりです。
「おかあさん、なにかちょうだい、なにか、なにかあ」
おかあさんの顔さえ見れば
「おかあさん、なにかちょうだい、なにか、なにかあ」
と、おねだりです。
一日に、なんかいも、お菓子をたべている三ちゃんは、ごはんは少ししかたべません。よく、おなかをいためますので、おかあさんは、とても心配していました。
ある日のことです。
お昼ごはんをたべた三ちゃんは、また、おねだりをしました。
「おかあさん、なにかちょうだい、なにか、なにかあ」
「おや、また、はじまりましたよ。三ちゃんは、今、ごはんをたべたばかりでしょう。もうしばらく、がまんしましょうね」
「いやだあ、なにかちょうだい、なにか、なにかあ」
「三ちゃん、そんなに、なにか、なにかあというなら、なんでもある、なにか山へいったほうがよいようね。……さあ、これからお友だちとあそんでいらっしゃい。そのあとで、おやつをあげますからね」
「なんでもある、なにか山ってあるの、そんな山へいってみたいな」
と、いいながら、三ちゃんは外へ出ていきました。
外に出た三ちゃんは、家の前の原っぱで、ぼんやり空を見ておりました。空は青空です。その青い空に、白い雲が、ふわり、ふわり、とんでおりました。
「わあ、白い雲が、とんでいる。あの白い雲に乗ってみたいな。原っぱも山も、下に見えるからな、山といえば、おかあさんが、いっていた、なんでもある、なにか山ってどこだろうな、あの白い雲に乗って、なにか山へいってみたいな、なにか山へいって、なんでも、なんでもたべてみたいよ」
三ちゃんは、そんなことを思いながら、白い雲のとんでいる空を、じっと見ておりました。
と、どうでしょう。空のむこうから、白い雲が、ふわり、ふわり、三ちゃんの方に向かっておりてきました。
「わあ、白い雲がおりてきた。……あっ、あの雲の上に、おじいさんが乗っている」
しばらくすると、白い雲に乗ってきたおじいさんは、三ちゃんのそばにきました。
「あっ、おじいさんは、だれですか」
そのおじいさんは、白髪を長くのばして、白いひげ、白い着物をきた、とてもやさしそうなおじいさんです。長い杖を持って、立っていました。
「三ちゃん、わたしはな、なにか、なにかあの、なにか山のおじいさんだよ」
「えっ、なにか山のおじいさん」
「はい、はい、三ちゃん、なにか山には、とても、おいしいものが、たくさんあるんだよ。さあ、おじいさんといっしょに、なにか山へいきましょう」
「おじいさん、なにか山って、どこにあるの」
「三ちゃん、ずっとむこうに、山がかすんで見えるだろう。あの山を越えていくのだよ」
「おじいさん、そんな遠くの山へ、ぼくはいけないよ」
「三ちゃん、おじいさんといっしょならだいじょうぶ、さあ、いこう」
おじいさんは、持っていた杖を、ビューッと、ふりまわしました。と、空から白い雲が、むく むく集まってきました。
三ちゃんは、おじいさんといっしょに、雲に乗ってふわり、ふわり、空へとんで行きました。
しばらくして、三ちゃんは、高い山の上におりました。
「おじいさん、ここが、なにか山ですね。さあ、なにかちょうだい、なにか、なにかあ」
「三ちゃん、もっと大きな声で、なにか、なにかあ、と、呼んでごらん」
三ちゃんは、大声をはりあげました。
「なにか、なにかあ」
そのときです。むこうの山の方から声が聞こえてきました。
「なにか、なにかあ」
三ちゃんは、びっくりしました。
「あっ、おじいさん、むこうの山でも、なにかあ、と、いってるよ」
「そうだよ、三ちゃん、なにか山は、もっとむこうだ。さあ、むこうの山へいってみよう」
また、おじいさんは、持っている杖を、ビューッと、ふりまわしました。と、空から白い雲が、むく むく、集まってきました。
三ちゃんは、おじいさんといっしょに雲に乗って、ふわり、ふわり、空へとんでいきました。
しばらくして、三ちゃんは、また、高い山の上におりました。
「おじいさん、ここが、なにか山ですね。おじいさん、さあください、なにか、なにかあ」
「三ちゃん、もっと大きな声で呼んでごらん、なにか、なにかあ と、ね」
三ちゃんは、ガッカリしました。
「おじいさん、まだ、なにか山には着かないの、なにか山って、どこにあるの」
「さあ、大きな声で、呼んでみなさい」
三ちゃんは、また、大声を、はりあげました。
「なにか、なにかあ」
と、そのときです。もっと、むこうの山の方から、声が聞こえてきました。
「なにか、なにかあ」
三ちゃんは、また、びっくりしました。
「おや、おじいさん、なにか山は、もっとむこうですね」
「そうだよ。なにか山は、もっとむこうだ。さあ、いこう」
おじいさんは、また、杖をビューッと、ふりまわしました。白い雲が、むく むく、集まってきて、おじいさんと三ちゃんは、その雲に乗って、空をとんでいきました。
こうして、三ちゃんは、おじいさんといっしょに、雲に乗って、山から山を越えて「なにか、なにかあ」と、呼んでいるうちに、おなかが、ペコペコに、すいてしまいました。
「おじいさん、ぼくおなかがすいて、ペコ ペコです。なんでもよいから、なにかたべるものを ください」
おじいさんは、目を丸くしていいました。
「ほう、三ちゃん、おなかがすいてしまったの、では、よいものをあげよう」
おじいさんは、「えいっ」と、いって杖をふりました。おじいさんの片手に、ピョイと、のったのは、おにぎりでした。
「さあ、この、おにぎりを、たべてごらん」
三ちゃんは、おじいさんから、おにぎりをいただくと、とても、おいしそうにたべました。
「ああ、おいしい、こんな、おいしいおにぎり、ぼく、はじめてだあ、ああおいしい」
三ちゃんが、おにぎりをたべてしまうと、おじいさんは、にっこり笑っていいました。
「三ちゃん、おなかがすいてから、たべると、たいていのものが、おいしくたべられるよ。これから、きまった時間に、おやつをいただいて、ごはんになるまでは、なにか、なにかあ、と、おねだりしないようにしようね」
「あっ、わかった、おじいさん。はらペコになってから、ごはんをたべればなんでもおいしく、たべられるんですね」
「そうだよ、三ちゃん、さあ、おかあさんの待っているお家へ帰ろうね」
「でも、なにか山は、どこなのおじいさん」
おじいさんは、三ちゃんの頭をなでながらいいました。
「三ちゃん、ごめんね。なにか山って、そんな山はないのだよ」
「えっ、なにか山はないの、でも、おじいさん、ぼくが、なにかあ、って呼んだとき、どこかの山で、同じように、なにかあ、と、いったのは、あれは、なあに」
「三ちゃん、あれは、なにか山ではなくて、山びこというんだよ。三ちゃんの声が、むこうの山にあたって、こちらへ、はねかえって聞こえてくるのだよ。だから、いくらおっかけていっても、なにか山はないのだよ」
このことを聞いて、三ちゃんが、前の方を見ると、山はいくつもかさなっています。
うしろの方を、ふりむくと、ここへくるまでに越えてきた、たくさんの山が見えました。
「ぼくの家は、あの山のむこうにあるんだ。よし、ぼくは、おかあさんを呼んでみよう」
三ちゃんは、大きな声で呼びました。
「おかあさーん」
すると、山びこが、
「おかあさーん」
と、答えました。
三ちゃんは、また、おじいさんと雲に乗って、おかあさんの待っている家の方へ、とんでいきました。
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