お金に負けた日
人間が作り出した価値観なんて当てにならない。
一番はお金の価値観だ。これこそ人間が勝手に作り出した価値観で、生まれたばかりの赤ん坊は食欲と睡眠欲は生まれ持って備えてて、思春期になると性欲も湧き上る。
これらは間違いなく生きるために必要な欲だ。
しかし、お金に対しての欲は生まれたばかりの赤ん坊には備わってないし、お金のない世界に生まれたら一生持つことのない欲だ。
しかし、そんな生物としては持ってない金欲を周りの大人が赤ん坊に植え付けるのだ。本来ないはずの欲を人間が勝手に作り出し、それを子供に植え付けていく。
もちろん、お金に対する欲がないと今の現代社会を生きていくのに苦労するだろう。みんなお金のために働き、そして家族を養っていく。
お金に執着するのは決して悪くない。悪くないけど、人の心を雑に扱ったり踏みにじったりするほどには、お金は大事ではないと俺は思う。
俺は歩くたびにポケットから1円玉がこぼれ落ちるような日々を何年も送った。人を助けるだけじゃなく、人の心を落ち着かせるためだけに無駄なお金を使ったこともある。
なんで、こんなことにこだわるんだろう?なんで、自分の生活も苦しくなるのに、こんな馬鹿なことをするんだろう?
そんなことを何回も思ったが、でも、目の前の大事な人の心の方がずっと大事だから、俺は自分が一生懸命に貯めたお金を無駄な事にも湯水のように使った。
お金なんかより人の心の方が遥かに大事だったからだ。
でも、俺が心を大事にしようとしてた人は俺の心なんかよりお金の方が大事な人だった。
俺の使った時間の価値も俺がお金を使った本当の意味も、何もその人の心の中には残ってなかった。俺からもうこれ以上のお金は出ないと分かったら、アッサリと俺から離れて行った。
これが現実だ。俺という人間はお金の価値に負けたのだ。
悔しいというより情けない。
一体、何年間も俺は何をしてたのだ?
俺は「お金よりあなたの方が大事だよ」
そんな心をずっと伝え続けてきたはずが、結局はお金の価値観に俺は負けたのだ。
人間が勝手に作った価値観に……
俺はお金が嫌いなわけじゃない。お金の支出管理はしっかりしてるし、お金が残るように生活はして来たはずだ。それはお金を貯めて贅沢したいからじゃない。もし何かあった時に人に迷惑をかけず、自分の蓄えの中で問題を解決出来るようにお金を貯めてたのだ。
でも、お金を貯めても何もなかった。自分のために使うだけのお金なんて虚しさだけしか残らなかった。
ロクに試着もせずに服を大量に買い込んだり、毎日昼は出前で寿司を頼んたり、これぐらしかお金を使わなかった。
人に使って、人と楽しんでこそのお金だったのだ。
そんな時に、シングルマザーで夜の街で1人で借金を抱えて働いてる女性と出会った。
俺の腐りかけのような死んでるお金はこの人に使った方が生き返ると思ったんだ。
だから、出会って一週間もしないうちに、その人が抱えてた借金を俺が全て返済をした。
人間が作り出したお金なんかより、その人の人生と子供の生活の方が遥かに価値があると思ったからだ。
俺は、やっと人のために生きれると思ったが、結局はお金という価値観には俺は勝てなかったわけだ。
彼女は俺と違って、俺の心よりお金の方が大事だった。
でも、子供がいたからだ。子供の命と生活を守るために俺よりお金を取ったのだ。
俺は現実を知るのは辛いから、そう思い込んでる…
今の俺はまだ、お金より人の心を選べるかな。
全財産を失った今でも、また人を助けようと出来るのか?
たまに自分に問いかける。
でも今は、少しは大人になったと思う。
今は、自分の出来る範囲で人を助けるだろう。
でも、またいつの間にか全力になってしまいそうで怖いなぁ。
まぁいっか。また全て無くなったら、また一からやり直せばいい。
結局お金は人間が後から作った価値観でしかない。
だから俺は、全てを失ったようで何も失ってない。
そう思い込んで生きていく。
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