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抗ってなにが悪い。

 髪が伸びて、久しぶりのロングヘアを愉しんでいる。
コロナ禍が偶然の理由。虫の知らせか?という緊急事態宣言後を見越したかのようにデジタルパーマを施し(スタイリングが楽です)ハイヒールも履き慣れてしまった5センチじゃなくて、以前の8センチに戻した。この時代に、
抗ってなにが悪い

 今、一番の女性である時間を謳歌している。また、此れがほんの束の間の通過地点である事も知っている。

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 子供が生まれると、驚くほど自分自身を手入れする時間が皆無になる。シャンプーしてドライヤーで乾かす時間すら惜しかった。そもそも、赤ちゃんと24時間一緒に過ごした夜は気力すらない。空いた時間は束の間の睡眠を貪るような日々。夜泣きで一晩中過ごして、朝を迎えてしまった記憶も。髪に手を掛けられないのならばと、前下がりのショートボブに切ったら、周りから似合うよと褒められて、頭も心も少しだけ軽くなったような気がした。母親は子供の世話をしたって、当たり前だと褒めては貰い難い。髪型も育児も、経験しなければ分からない事があるものだ。

 自分は、"母性なんて持ち合わせていない女"だと、ずっと思っていた。

 自分中心の生活から親になる為に正直苦労したし、事実、子供は可愛いが目も離せない。自分の時間は子供に否応無しに注ぐ事になり、好きな読書も映画も無し、マニキュアも香水も仕舞い込んで、どっぷりと"母親の責任という名の元"に奮闘をしたほぼ十年間。二人目を出産して…この状況がずっと続くんだろうか…と絶望感に苛まれた。

 時が流れて、子供もまだ完全に離れた訳じゃないが、乳幼児期をとうに過ぎて、自分の事は自分である程度は任せられる年齢になった。
小学生低学年の頃、娘はのんびりな性格で、なかなか学校生活に馴染めない部分があった。否定された訳じゃないのに、わたしが育てたせいだろうか?と自分を責めた。
個人面談で先生から、「どうしましょうか?考慮しますよ」と有り難く言われた提案にも、いち大人として、子供にとって、"最良の選択"とはどのようなものだろうか?と悩みつつ最終的には、
「親としては自分の子供が傷をつかないように守る判断も必要とは理解していますが、その時点では上手く収めたとして、それで解決する事が将来にとって良い結果になるとは思えない。出来れば"理不尽な思い"は、なるべく幼い頃に経験した方がいいと思っています。打たれ強くなる事を知って欲しい。その時の辛さも、その先への忍耐力が育つ力と繋がるはずだと思うので。人は成長と共に逃げられない場面が必ず訪れる。親が子供の人生を歩ける訳じゃないので、やはり、その子、個人に向きあわせる事を望みます。その分、家庭で出来る最大限の努力とサポートはしますから、先生には今後もご協力を頂きたい。宜しくお願い致します」と話した記憶が戻って来る。

 紛れもなく、じぶんでじぶんに向けていた言葉だった。
子供には子供の人生がある。
親はその一生を見届けられない。
先に去らなくてはならない。

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 "逃げるは恥ではない"が、子供の本来の力を摘んでしまい成功体験の場を失わせてしまう場合も無いとは言えない。

 崖から子ライオンを突き落とす親ライオンには到底なれないが、危ないからと言って、その要素を先回りして取り除いてしまうような真似はしたくない。

 経験こそが一番の学びに繋がっている。

 早くに母親を亡くしたわたしが通って来た道。
辛くて泣いたことも沢山あったけど、その分強くなった。負けてたまるか。一般的な母親とは違うかも知れないけど、母性が何かも掴めていないけど、
抗ってなにが悪い

 娘は六年生まで、一度も「学校に行きたくない」と言わなかった。強い子。不器用ながらも忍耐強く、ゆっくりと身体も精神も成長した。今では生意気な発言をするくらい。子供のペースで、親も成長すればいいじゃないか。
抗ってなにが悪い

 "私が居て、この子が居る"それ以上に求めるものは無い。ただ、幸せな人生を歩んで欲しい。この世に生まれた事を幸いだと感じて欲しい。理想の母親像には到底なれないけれど、そんなものは偶像だ。遠くに投げてしまえ。あってないようなものは彼方此方に点在する。家庭の数だけカレーの味や具が異なるように、その中のひとつだと単純に捉えればいい。
抗ってなにが悪い

 久しぶりに履いたヒールで、左足を靴づれしてしまった。
調整するのは大切。
シャキッと背筋を伸ばして、其れでも歩く。
最近は、コンフォートシューズも主流になりつつあるけれど、まだ"楽な方"に手を出したくは無い。
多分、出さない。年齢に、
抗ってなにが悪い

 帰宅して、大切に靴を磨いていたら、
娘が「何だかママ楽しそうだね」と笑った。
楽しい事は、この先に沢山ある。
きっと、最後まで強がりを繰り返して、弱さをみせずに終わるのだとも思う。
それ以上に至福感にも包まれている。
楽な方には、逃げられない性分を恨めしくも、眩しく、
抗って、抗って、抗って、

抗ってなにが悪い?

と、今日も呟く。


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#親になるということは #ハイヒール再び

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