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「シティポップは懐かしいんですが、たぶんニュアンスは違っていて…」(回答:37歳・自営業)

「ARTinMUSIC シティポップ・グラフィックス」を観てきました。
カラフルなジャケット・デザインを通して、めくるめくシティポップの魅力をご紹介」(公式より抜粋)という、東京の京橋、BAG-Brillia Art Gallery-で行われていた展示会。会場内のBGMはもちろんシティポップ。

土曜の16時台は20人くらいが、展示会場の4面ある壁に飾られた約300枚のレコードジャケット展示を、思い思いに観てました。

そこでこんな声が聞こえてきたわけです。

「私たちには『懐かしい』だけれど、今の若い子たちにはどう映るのかしらね?――ああ、懐かしい」

声のほうを見ると、そこには一組の男女。年の頃、60代。
さて、この“お姉さん”の問いかけに答えてみませんか?というのが、今回の趣旨です。

シティポップと年齢

1979年に何歳か?2022年に何歳か?

まず、シティポップと年齢を照らし合わせてみます。
シティポップの時代は1970年代後半から80年代と言われます。ここではブームを語る際に、よくあげられる松原みきのデビューレコード「真夜中のドア~stay with me」がリリースされた1979年を軸にしてみます。

当時10~20代で、シティポップを聴いていた方々は現在50~60代。そして今「シティポップってイイ」と聴く若者は、当然ながら1979年当時には生まれていません。

年齢表

昔の曲と年代

現在の20代が、シティポップという自分の生まれるより約20年前の曲を「イイ」と思うのは、他の世代にはどういうことでしょう?

これは今の40代なら、20代だった1999年当時に1959年の曲を「イイ」と思うということ。具体的には「南国土佐を後にして」(ペギー葉山)、「古城」(三橋美智也)とか。

……はい、1999年、これらはリバイバル・ヒットしてません。
ただ、その頃に昔の曲がヒットしてないわけではなく、翌2000年は「明日があるさ」(坂本九)が注目されてました。ダウンタウンらが出演したCMも印象的でしたよね。
しかし、だからと言って、他の50~60年代の曲に注目が集まったわけではなかった。

当時は、90年代半ばからの小室ファミリーの勢いにブレーキがかかりだし、98年は宇多田ヒカル、椎名林檎がデビューし、音楽シーンの色合いが変わっていたようにも思います。

これは、この記事での本筋ではないんですが、当時10代だった私の記憶に焼き付いていますし、だから「話せるものがある」んです。

シティポップを、現役世代として聴いていた方は、好きか嫌いか別にしても、やっぱり語れるものがきっとありますよね? 
話を聞きたいんですが、ちょっとその前に答えさせてください。

「私たちには『懐かしい』だけれど、今の若い子たちにはどう映るのかしらね?」って問いに。

回答:懐かしさについて

では、37歳・自営業=私の個人的な回答です。

シティポップは懐かしいんですが、たぶんニュアンスは違っていて、「懐かしさ」もありましたが「新鮮さ」もありました。

まず、懐かしさがあったのは、シティポップにくくられて展示会場に飾られていたレコードに、私が10代後半から20代前半に聴いていた音楽があったからです。

私はギターをやっていて、高校3年の頃にバンドでインストをコピーするようになっていたことから、大学でもインストの楽曲をやる音楽系部活へ。
そこで知ったのが、CASIOPEAやT-SQUARE。フュージョンです。

で、彼らのレコードジャケットが会場には飾られていた。
「MINT JAMS」「Lucky Summer Lady」……
「あぁ知ってる、知ってる!」という感じ。
いや、それ以外にも知ってるジャケットが多かった

例えば、ギタリストのCharさんのデビューアルバム。高校の頃から好きです。ユーミンはもっと前から好きだったかも。ユーミンは歌詞集を持っていたり……。

重ねて言いますが、これってかなり個人的。一般的ではないです。同じような曲を聴く人が多かった音楽部員から「おっさん趣味」だと言われて、少なからず傷ついたこともありました。

そんなのが、私の感じた「懐かしさ」です。

回答:新鮮さについて

そして「新鮮さ」と言えば、それらをレコードジャケットで見られたこと。

やっぱり、私の世代だと音楽はCD。iTunesのリリースは2001年。10代の頃にダウンロード型音楽はスタートしていましたが、圧倒的にCDに頼っていた。
そしてCDは、レコードよりジャケットサイズが小さく、デザインが小さかったんです。

それがレコードとして展示されていた。
デザインが大きい?!

なかにはCDでも見たことはなく、当時まだ多かった音楽雑誌や、急速に広がったインターネットの中での、粗く小さな画像でしか見たことのないデザインも多く。

他のアート作品を見に行くときも同じ感覚を受けることがあります。

「あっ、この絵って、こんなに大きいんだ!」とか。

回答:雰囲気について

さて、こうした「知っていたからこそ抱ける感想」もありましたが、それに加えて37歳がシティポップのデザインを見ると、また違う感想も持ちます。

やっぱり30代にとっては、デザインのモチーフがまったく懐かしくない
10~20代にも共通じゃないでしょうか。

海や空、水着にスポーツカー。そこにはたくさんの種類の青があり、ビビッドな色合いのアイテム。
あるいは夜の星々、キラキラとしたネオン。
寄り添う男女……。

聞きたい。
「シティポップに描かれたデートを、したことがありますか?」と。
あえて言えば、あらゆる世代に。

先ほどにも書いたように、私は小室ファミリーの勢いを10代として、目の当たりにしていました。でも、そこにある音楽にハマっていなかった。だから純度たっぷりに体験はしてないんです。
でも、同世代として、今聴くと、案外(失礼)良くって「懐かしい」。

シティポップのデザインは、体験したから懐かしいのか、同世代だから懐かしいのか?

まあ、その展示会に来ていて、つぶやいた、60代らしき男女の方々は、やっぱり前者かもしれません。
例えば、真っ青な海に、真っ赤なオープンカーで乗り付けて、フルーツの入ったカクテルを飲むようなデートをしていたのかなって。
そのくらい、なんだかキラキラしてました。

それって、やっぱり下の世代には無いっスよ。
いや、私だけかもしれませんが。



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