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Think positive 前向きになる英語の名言。

前向きな言葉を必要とするときがある。有限の人生を送っている現実世界において「永遠」など存在しないかもしれない。次々と降りかかってくる困難に追われる毎日において「希望」を持つことは難しい。それでも私たちは時々、永遠や希望という「やさしい嘘」を求める。

成功を遂げた著名な人々の名言はこころの支えになる。一杯の水のように乾いた内面を満たして、明日に一歩踏み出す元気をもらえる。

かつて英語の名言をちりばめた曲を作ったことがあった。JAZZっぽいインスト曲だったので歌詞ではないのだが、映像の中に言葉をマッシュアップしてX(Twitter)で公開した。

この曲を作るにあたってWebサイトから拾ってきた言葉を、あらためて見直してみたい。ウンチクを解説するのではなく、英語の名言から考えたあれこれをとりとめもなく書いていこうと思う。


Look on the bright side.
前向きになろう。

誰の名言というわけではなく、ポジティブシンキングの代表的なフレーズ。「いい方向に考えよう」という意味である。

日の当たるところには必ず影ができる。物事にはよいことと悪いことの両側面があり、よいほうを考えることが大切になる。しかし、究極のポジティブシンキングは、明るい面だけでなく暗い面(dark side)も受容すること、ネガティブを受け入れることではないだろうか。輝いた面だけ見るのは、片手落ちという気がする。

コップに半分の水が入っているとき「もう半分しかない」「まだ半分ある」という視点の違いがよく引き合いに出される。これも両側面の考え方が大切ではないか。楽観視だけでは乗り越えられない危機もある。時には、悲観的な見方に輝き(bright side)を見出す感性も必要だ。

There is always light behind the clouds.
雲の向こうはいつも青空。

『若草物語』の原題は『Little Women』だったのか。読んだことがないのだが、作者であるルイーザ・メイ・オルコットの言葉である。「light」は光であり「太陽の光に溢れている」という訳でもよいと思う。ただ「雲(曇り)」と対比して「青空」がいい。

しかし、その青空の向こうには宇宙があり、漆黒の闇が拡がっている。青空は暗い宇宙を隠す嘘であり、海の多い星だからこそ得られる恩恵である。だからこそ地球は美しい。青空の嘘によって地上の世界は守られている。

Tomorrow is another day.
明日は明日の風が吹く。

『風と共に去りぬ(原題はGone with the wind)』のスカーレット・オハラの台詞。日本の映画の字幕に用いられたことから広まった模様。この訳には賛否両論があるとか。

直訳すると「明日は今日とは別の日」であり、落ち込むことがあったときに使われるネイティブフレーズらしい。余計なことを述べると『三匹のこぶた』ではないが強風の日には不安になる。オオカミに屋根を飛ばされたくない。明日に吹く風は穏やかであってほしい。

Your time is limited, so don’t waste it living someone else’s life. きみの人生は限られている。だから他人の人生でムダにしてはいけない。

アップルの創業者、スティーブ・ジョブズの言葉。スタンフォード大学のスピーチで語った言葉のひとつであり、最も有名なものとしては「Stay hungry, Stay foolish(ハングリーであれ、愚かであれ)」がある。ひたむきでありすぎて自分が創った会社を追われたり、人生の後半には闘病に苦しんでいたりしたジョブズを考えると、この言葉の切実さが身に沁みる。

どうでもいいゴシップに対して評論家まがいのコメントを付けたり、うわさ話に盛り上がったり、他人の人生に口を突っ込むのはムダな気がする。もちろんそうやって留飲を下げて、精神の均衡を保つことも大事かもしれない。しかし、人生は短い。ビートルズもそう歌っている。

The future starts today, not tomorrow.
未来は今日始まる、明日じゃない。

ヨハネ・パウロ2世の言葉。世界中を飛び回ったことから「空飛ぶ教皇」と呼ばれたそうだ。

「明日やればいいか」と思って先延ばしにしたことは、永遠にやらないかもしれない。TO DOリストを作ることに夢中になって、それだけで時間が終わってしまう。気持ちを整えてからやるのではなく、やるから気持ちが整うことがある。どんな一歩でもいいから踏み出してみると、世界が変わる。

いまという時間は茫洋たる未来の突端にあり、自分たちの後ろには吸い込まれるような巨大な過去がある。「いまここにいる」存在は孤独であり、過去と未来の中間点において、ふるえながら立っている。過去は分かっているが、未来はどうなるか分からない。だから足がすくむのだろう。

しかし、勇気が必要だ。跳躍とはいわなくても、ちいさな一歩を踏み出すことで未来が始まる。

If you can dram it, you can do it.
夢を見ることができれば、それはできる。

夢には現実に見る夢と、レム睡眠のあいだに見る夢がある。現実に見る夢は理想などという言葉に置き換えられる。

眠っているときに見る夢は、できれば現実になってほしくない(なってほしい場合もある)が、考えたことはすべて現実の一部といえないだろうか。現実の一部なのだけれど、夢を言葉にすること、夢のために行動に起こすことの間には大きな隔たりがある。

ビジネスでいえば、思いつきのアイデアと企画は別物だ。ぱっと浮かんだ着想を現実化するためにはしっかり設計し、計画を立て、細部を組み立てて、行動を起こさなければならない。

これはウォルト・ディズニーの言葉。ディズニーが凄いのは、やはりアニメを作り続けたことにある。夢を見るだけでは、現実を変えることはできない。夢を語るだけなら、単なる妄想と変わらないだろう。「できる」という確信によって、夢が現実を変える。

The secret of getting ahead is getting started.
成功の秘訣は始めること。

夢を妄想で終わらせないためには、とにかく始めるしかない。『トムソーヤーの冒険』などの小説を書いたマーク・トゥエインの言葉。冒険は英語でadventure。ベンチャー企業のventureも冒険的な取り組みを示す。新しい領域を開拓する冒険は、わくわくする気持ちが伴う。

既存のビジネスモデルを基盤として革新的な事業を展開するベンチャーに対して、スタートアップといわれる企業もある。違いとしては、スタートアップは成長が軸になる。

始めなければ何も始まらない。成功はもちろん失敗も始めたことによる結果であり、スタートすること自体に意義がある。

In the middle of difficulty lies opportunity.
困難の中に機会がある。

特殊相対性理論で知られるドイツの物理学者、アルバート・アインシュタインの言葉。困難な課題に直面したとき「待ってました!」というひとは少ないかもしれない。しかし困難は自分を鍛える機会でもあり、難しい課題には取り組むべき本質的な何かが潜んでいる。

ただ、コロナ禍のときに言われた「ピンチはチャンス」という考え方は違うだろう。ピンチはピンチだ。みんなが困っているときに、ビジネス的な機会を見出し、自分だけ都合よく儲けようとする姿勢はいかがなものだろうか。倫理的に間違っていると思う。

chanceとopportunityについて調べてみると、チャンスはたまたま運がよくてラッキーに恵まれたことに対して、オポチュニティは意図して機会を得たという違いがあるようだ。アインシュタインのひらめきは偶然に生まれたものではない。考え続けた日々があったからこそ、願いを成就する機会を得られたのである。

ピンチはチャンスなどという上司には、軽蔑の目を向けたほうがいい。おそらく、自分のピンチをチャンスと考えて、あなたのせいにするかもしれない。あるいは自分では努力せずに、他人の手柄を横取りする。信頼できるのは、他人のピンチに手を差し伸べられるひとだ。

If you want the rainbow, you gotta put up with the rain.
虹を見たいなら雨を我慢しよう。

ドリー・バートンの言葉。虹とは成功や夢の実現であり、雨は困難。成功をつかむためには、困難に耐える時間が必要になる。といっても、我慢大会ではないのだから、不毛な我慢はやめにしたい。

我慢することが頑張りではないと思うし、我慢を仕事にしてはいけない。リモートワークによって、我慢して通勤電車でオフィスに通うのは不要という気運が高まった。我慢することが美徳ではない世の中に変わりつつある。

しかし、待つことの楽しさがあっていい。我慢せずに、雨の日には虹が出るのを楽しみにすること。さらにいえば虹に期待しすぎないこと。虹が出なかったとしても青空が見えたなら、それだけで嬉しい。

Imperfection is beauty.
不完全であることは美しい。

マリリン・モンローの言葉。この後には「madness is genius and it’s better to be absolutely ridiculous than absolutely boring.(狂気は天才、そして超つまらない人でいるより、超おばかさんのほうがいいのよ:超訳)」と続くらしい。

不完全というのは欠点があることだ。そもそも完全な人間はひとりもいない。テストで100点を取ったとしてもそれがパーフェクトな人間を証明するわけではないし、人生は数値評価だけでは判断できない。

スティーブ・ジョブズの言葉に戻ると、他人の価値観で生きているうちは自分の人生を生きていない。極論をいえば、マリリン・モンローに「つまんないひとね」と言われてタバコの煙をふーっと吹きかけられても、きみがこれでいいと思ったのなら、それでいいのだ。

美しさとは何だろうか。ココ・シャネルは次のようなことを言っている。「Beauty begins the moment you decide to be yourself.(あなたが自分らしくいたいと決めた瞬間に、美しさは始まる)」。

Everyday is a new day.
毎日が新しい日。

アーネスト・ヘミングウェイの言葉。84日間に渡って魚を釣り上げることがなかったサンチャゴを描く『老人と海』にある。「Tomorrow is another day.」に重なるかもしれない。今日は収穫はなかったけれど、明日はまったく違う一日になって大物を釣り上げるかもしれない。

年を取ると毎日が同じ日にみえてくるらしい。冬なのか夏なのか、朝なのか夜なのか、分からなくなってしまうようだ。田舎の認知症の母親が、いつからかそんな風に日々の境界を失っていった。東京という遠い場所から何もできずに、変わっていく親の姿を見ていた。しかし、今日がいつだろうが、新しい一日として生きればよいのではないか。

何度も繰り返そう。人生は短い。朝に生まれて夜に死ぬような気持ちで、毎日をひとつの生として過ごしてみてもいいかもしれない。といっても自分の人格を変えるわけにはいかないし、過去をリセットすることはできない。最近読んだ東浩紀さんの『訂正する力』という書籍のタイトルを使えば「訂正」して生きるのである。

ニーチェの永劫回帰からアイデアを得たともいわれる『恋はデジャ・ブ』という映画を観たことがある。ビル・マーレイが演じるフィルは、意識はそのまま、2月2日を永遠に繰り返さなければならなくなる。最初は自暴自棄になるのだが、そのうち繰り返しのパターンを覚えて、ピアノを練習して上達するなど豊かな毎日を送るようになる。退屈な繰り返しの毎日は、自分次第でいかようにも変えられる。

新しい一日を過ごすためには、今日の後悔を明日に引きずらないこと、明日の朝に目覚めたら、気分を刷新して一日に臨むことが大切だ。

Keep your head up.
上を向こう。

誰かの言葉というわけではないが、頭を上げていこうという意味。頭を上げるといいこともある。

空を見上げて歩いていたら、梅が咲いているのをみつけた。地面ばかり見ていると気づかない風景がある。といっても、俯いて歩いていれば100円硬貨をみつけることがあるかもしれないけれど。

受験シーズンを過ごすひとへ。

勢いあまって5,500文字あまりも書いてしまったが、過去の偉人たちの言葉に元気と勇気をもらえた。言葉のチカラを信じることができた。若い頃には、こういう言葉に対して軽く舌打ちしながら冷ややかに眺めていた。しかし、あっさりと言葉のチカラに騙されてしまうのも幸せかもしれない。

いまの時期、小学生、中学生、大学生の受験生たちは、大変な時期ではないだろうか。

受験だけが人生ではない。しかし結果がどうであろうと、あらゆる挑戦には価値があり、いろいろ悩んだり苦しんだりしながら過ごした時間は貴重な体験のひとつだ。

ちなみにタイトルの「Think positive」は文法的には「think positively」が正しいようだ。しかし「単純形副詞(flat adverb)」としてアメリカの会話では使われることが多いとのこと。

試練に挑むみなさんに、これらの言葉を贈りたいと思う。
身体に気を付けてくださいね。

2024.01.27 BW


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