【備忘録】これからしばらくの未来について。
ということで。
僕はあまり自分自身やその生活について知られたくないほうなんですが、自分自身への備忘録として、
#一歩踏み出した先に
について、少しだけ記録しておこうと思います。
例えば、Amazonだけのお取り扱いになる短編集があり、アマチュアに産毛が生えた程度ではあるんですが、やはり小さなころから文章を書くのは得意でした。
多くの人は「小説や詩が好きなのだろう」と思われるのですが、現実の僕は小説を読むことはまずありません。どちらかと言うと苦手な部類に属しています。活字を追うことに苦痛まで感じるんです。
数年前に西加奈子さんの「漁港の肉子ちゃん」を読んだけれど、以降はなにも読んでいませんし、ときどき漫画を読むくらい。雑誌もほとんど見ない(本田翼さんが表紙になっていれば、ファン心理として購入することもありますが)。
そういうわけで本というものにはあまり縁のない生活をしています。
約一年前に生まれ育った土地を離れ、広大な太平洋に面した高知県に移住してきました。昔からずっと海を探して、あちらこちらを旅してきたのですが、尊敬と親愛の念を持つ方からの後押しやご意見などもあり、海にほど近い町で新しい生活を送っています。
自由であるとか、気楽であると思われることも多々ありますが、人に比べて特別に自由でもないし、気楽でもない。そういうふりをしているだけです(笑)。
いま暮らしている町はとても美しい。夏のイメージで語られがちな地域だと思うんですけど、実は冬の景色がとても美しいのです。
僕は夏が、暑さがとても苦手なので、ロングコートを着られる冬がとても好きで、太平洋を眺めながら暖かいコーヒーを飲むのはとても幸せな時間になりました。
さて、本題。
創作とライター業。インタビュー記事。あれやこれやと書き連ねてきたのですが、生活を新しくした後に、「代表的と言えるものを書いておこう」という気持ちが芽生えたのです。それが昨年末のころ。同時期に、「小説書きなよ」という友人からの勧めもあり、書き手としての自分のキャリアにひとつ決着をつけておこうと思うようになりました。
どういう結末になるにせよ、そういうタイミングなのではないか、と。
なにせ、文章を書くのは好きだけれど、小説を読むことがほとんどない人間。まずはGoogleで長編小説の文字数を調べ、10万字以上がひとつの目安であると知る。けれど、それを書くに要する時間はよくわからなかった。
2月に書き始めたものの、すぐに構想の手詰まりを感じてストップ。言い訳なのですが、3月は酷い花粉症を理由にストップ。4月になって再開し、そのころには練り直したプロットもおおよその完成を果たして、少しずつ書き続けて……物語は夏の旅の話。真夏になる前に書き終えておこうと5月、6月に前半を、
7月に後半を進めて行きました。
「一章あたり、5000文字から6000文字。全30章なら15万字に及ぶ物語になる」と自分に言い聞かせて。
7月31日。第一稿が書き上がりました。手入れしておきたい箇所は残して、まずは物語そのものを最後まで進行させること。
ごく最初に、ラストシーンだけ書いておきました。そのラストにつながるように物語を構成しておこうと思ったのです。
今回は暴力も性描写も書きたくなかった。ごく一般的な、ごく普通の人たちが、鈍臭くとも善人たちが走り回る世界にしておきたかった。
それは高知県に移住してきてから考えたことでした。この地だけが特別だとは思わない。けれど、この土地は、生まれた土地を愛して、特別なことなんてなくても、毎日、なるべくなら笑って生きていようとする、心優しい人たちの姿を見てきたから。
この美しい、広大な太平洋を舞台にした物語にしておきたかった。きっとこれからも、僕はこの土地を舞台として考えてゆくでしょう。
そして。
物語そのものは8月8日に終わるのですが、わずかに早く、8月5日に僕はその小説を書き終えました。総文字数は16万8000字。そのなかには、泣き、笑い、そして手を合わせる人々の姿が描かれていると思います。
それを書いている間にも、僕は新たに書きたい物語の断片をいくつも見てきました。とりあえず、短編ひとつ、長編をふたつ。少し休んでから、また、創作を再開しようと思いながら、一度めの旅が終わった気がしました。
「こんな友達がいたらいいな」と描いた登場人物は、まるで古い友人のように思えました。
主人公の女性は、ずっと親しくしている、北海道の女性から姓を借り、その人の姿を投影しておきました。
「小説書こうと思ってる」と話したのも、その女性でした。
彼女は言いました。
「光を灯すような作品にしてね」と。
彼女は僕と違って読書家。いつも本を持っているような、可愛らしい、中学校の先生。仮にその人をAさんとしておきます。
第一稿を書き終えた7月31日。wordファイルにして、その人に送っておきました。
最初に読んで欲しかったのです。気に入ってくれるかどうかは別として、僕が書いた物語は、彼女の意見、意志を反映させていたから。そして、主人公のイメージにもなっていたから。
多忙ななか、それなりにボリュームのある小説を読み、Aさんからの返信には、喜びや驚きが込められていました。
「とても気に入った。涙でぐしゃぐしゃになりながら、わたしもこの作品のなかの登場人物たちと夏の旅をした」
真夏の旅を体感してもらえるような、そんな物語にしたかったので、試みは成功したと思いました。
なんども「ありがとう」が込められていました。本当に嬉しかった。それなりに長い物語を書き終え、自分のなかに、「また新しい物語を書きたい」という欲求に気づきました。それはとても意外でした。
いま。その物語、「新説・流星ツアー」は、出口を探しています。
ありがたいことに、Aさんからの申し出があり、プロからのご意見をいただき、これからの方法を見つけることになりそうです。その先はわからない。わからないけど、いい予感がします。
「すこい新人が現れた、という評価がなされると思うよ」という、やはりAさんからの意見、あと、Aさん以外のお三人に意見を伺ったのですが、本当に好意的な意見ばかりでした。
「ここまでやるとは思ってなかった」
……えと、それって、誉めてるのかな。以前はそこまでだと思ってなかったということですよね(笑)。それでも、いい。「泣きながら読んだ」という意見は嬉しかった。
「芥川であれ、直木賞であれ、そういう方向もいいと思います」なんて、少々、持ち上げ過ぎのご意見もありましたが、好評はやはり嬉しかった。
#一歩踏み出した先に
そこにあったのは、小説を書くということに目覚めてしまった、自分自身の姿でした。正直に言うと、そういった熱情は残っていないように思っていたから。
いまの僕は、新しい物語を紡ぎたいという欲求と生きている。
昨日。高知に来てから、お世話になっている美容室へ。そのお店のオーナースタイリストさんとはずいぶん親しくさせていただいているのですが、その彼女は、
「高知に来て、それが理由で物語ができたのなら、それだけでも来た甲斐があったんちゃう」と。
#一歩踏み出した先に
慣れた土地を遠く離れて、高知県に住まいを移して。そこにある風景と、そこで知り合った人々の姿。古くから知る友人。そのひとつの結実として、初めてになる長編小説になりました。
この試みはきっと、僕がまだ見たことのない風景へ連れて行ってくれる。いまは、そんなふうに思っています。
photograph by sayaka.
words by billy.
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