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【韓国】ずっと食べてる

初めて韓国に行った時のこと。
訪れたのは大学2年生、ハタチの冬。
"パスポートをすでに持っている"というだけで、海外旅行へのハードルが少し低くなる。気軽に近場のアジアへ行ってみよう、と友達と3人で韓国へ向かったのだった。

ハングルは丸と四角と棒とちょん、でできている

韓国語がまったくわからぬまま、ツアーバスに揺られる。
通訳ガイドさんの「これから両替をしに行く」というアナウンスを聞きながら外を眺めていた。標識に書かれているハングルの文字はひとつも読めない。

しかし、わからぬ文字というのも異国を感じられる大事なエッセンスでもあるので、ワクワクはしていた。丸と四角と棒とちょん、で構成されている文字たちはかわいい。

韓国に着いてから初めて口にした飲み物はリンゴジュース。なんとなく見たことのある形の上部のロゴには「デルモンテ(델몬트)」と書かれている。
日本ではこのメーカーのケチャップがよく売られている。

近くの国だからか、こういう"ちょっと違うけど似てる"がいくつもある。文字が読めなくてもなんとなくわかるので、旅の難易度はそれほど高くはない。楽しい。

止まらない食欲

ホテルに到着したのは19時。
所在地はソウルの中心部からは少し離れていたが、クァンナル(광나루)という駅の近くだったので、地元の人向けの食堂がいくつもあった。お腹がぺこぺこだった私たちは、その中でも一番入りやすそうなお店で晩ごはんを食べることにした。

もちろん観光客向けではないので、日本語メニューは用意されていない。これが食べたい、と写真を指差して注文した。
何とかなるものだ。

そして幸いだったのが、韓国が初めてだという私たちに食堂のおばちゃんがとても親切だったこと。箸はここ、ナムルはここ、なくなったらおかわりしていいからね、とジェスチャーを交えながら説明してくれた。

箸とスプーンはここ。

机に埋め込まれている。

注文したのはビビンバやトッポギ。これぞ韓国、というメニューにした。
目玉焼きの半熟が絶妙でおいしかった。
写真左上に映っているキムチやナムル、韓国の食堂ではこういったおかずがおかわりし放題なのもありがたい。もちろん遠慮なくおかわりした。

そして、たらふく食べた帰りにコンビニに寄ってアイスを買った。この時の私は相当お腹が空いていたに違いない。

滞在2日目。

朝からスタバでホイップもこもこのチョコレートドリンクとスコーンを食べ、

ボリューミーなソフトクリームをぺろりとたいらげ、

またもや晩ごはんにビビンバを食べた。
前日のビビンバとは違い、こちらはタコの入った海鮮バージョン。バリエーションも豊富で、ビビンバひとつとっても飽きない。

夜食におにぎりも食べた。
赤い方が牛肉コチュジャン味、青い方がツナマヨ味。

我ながらよく食べる。
というか、観光するよりも食べてる時間の方が長かったかもしれない。

そして滞在3日目の朝ごはんは、初日の夜に入った食堂。
おばちゃんも、あんたたちまた来たのね、とにこやかに迎えてくれた。

お粥とキンパをいただいた。もちろんナムルも。
さらに追加でマンドゥ(餃子)も注文した。おばちゃんも私たちの食べっぷりにさぞ感心していたことだろう。

一応ではあるが、観光らしい観光もしている。

昌徳宮(チャンドックン)という昔の王宮を見に行った。曇天に映えるビビットな赤、緑、オレンジ色が印象的。

この池は濁っているのではなく、凍っている。ソウルは相当寒い。

チマチョゴリという民族衣装を着て写真を撮ったりもした。
スタジオでは衣装レンタルと、メイクやヘアセットもしてくれるのだ。撮った写真は肌ツヤや背景などが加工された後、ホテルに届けてくれる。まさに女子旅という感じ。
しかし現在、その写真は実家の押し入れの奥底にしまわれている。きっと私だけではなく、他の観光客のみなさまも同様ではなかろうか。

それからはまた食事に戻り、晩ごはんにホルモン焼肉。
シシトウだと思っていた付け合わせの青い唐辛子をひと口かじったところ、火を吹くような辛さで、焼肉おいしかったねと和やかに終われるような夕食にはならなかった。
燃え尽きた。

…かのように思えた。

口直しに、と路上で売られていたお菓子を買ってホテルへ戻った。
指にはめられそうな筒状のスナックが袋にパンパンに入っている。デロン菓子というらしい。
底なしの食欲だ。

すべては載せきれていないが、この他にも屋台ソーセージやプルコギバーガーを食べたり、休憩に入ったお店でコーヒーなどを飲んでおり、とにかく目についた料理をひたすら胃に入れていくというような旅だった。

もちろんお土産には韓国のりとお菓子をたくさん買って帰った。

食と語学のつながりは唐突に

食べてばっかりの韓国旅行ではあったが、その中で学んだことがあった。

それは、文字が読めるということは、メニューや商品名が読めるということであり、食べたい物を注文できたり、商品が何であるか理解できるということでもある、ということである。
逆に言うと、言葉を知らないが故に食べ逃しているおいしいものがあるかもしれないということである。そんなのもったいない。

ちなみに雪見だいふくのようなアイスに書かれていた文字は、
찰떡 = もち米の餅
아이스 = アイス
호두 = クルミ
である。帰ってから調べた。

「日本語がわかれば生きていけるじゃん」と、これまで外国語の授業をあまり真剣に考えたことがなかった私。
高校の英語の授業では毎回最初に単語テストがあるのだが、だいたいいつも合格点に達しないので、ペナルティという名の単語書き出し練習をさせられていた。大学でも必修の第二外国語の単位を落としていた。

このままではいかん。
言葉を知れば知るほど、グルメ旅がもっと楽しくなるってことではないか。

そう気づいた。
私がやっと語学の勉強に目覚めた瞬間だった。
ただ食い意地がはっているとも言えるのだが、とにかく、気づきのタイミングというものは唐突にやってくるものだと実感した旅であった。

(2009年2月22日~25日)

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