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『その謎を解いてはいけない』書評まとめ

ありがたいことに発売5日で重版、その後もまた重版していただいた拙著『その謎を解いてはいけない』ですが、賛否両論(ちょっと否多め)をいただいています。
本格ミステリの面構え(真顔)をしながら「なんやねんこれ!」みたいなことをいっぱいしているのですが、ぼくとしては言葉と加害性、小説やミステリという表現形式についてにまつわるかなり真面目なタイプの小説だと思っています。
未読の方はぜひ読んでみてください。

……というのはさておき、いろんな方がいろんな書評を公開してくださっているので紹介させてください。

こちらは大森望さんからの書評です。
大森さんのことをぼくは勝手に「日本書評界の悪童」と呼んでいるのですが、その名に恥じぬ(!?)著者イジり書評です。この小説自体がイジり笑いを多用しているのもあり、意趣返し書評として鮮やかな技巧が発揮されています。

こちらは杉江松恋さんによる拙著の分析がネタバレを回避しながらおこなわれています。ご指摘はまさにぼくが書いているときに強く意識していたことに触れておられ、とてもうれしかったです。
小説はクイズじゃないし、手を離れてしまえば作家の意図云々はどうでもいいものではあるものの、こうした技巧面の言及は小説の読みかたもまた小説のたのしみの大きな一角を担っていると思います。

夢原明日美さんの書評は、この小説の純文学的側面というか、ミステリ部分の裏にあるものに強くコミットしたものです。
杉江さんの書評にもある通り、作中でぼくは「探偵と作家の類似性」をしていますが、夢原さんが指摘しているのはその裏にあり、おなじくらい重要な「探偵と作家の似ていなさ」です。ともに重要な問題で、言及されている箇所はまさにぼくがこの小説を書くうえで実際に抱えていた〝ミステリ作家としての矛盾〟であります。

あわいゆきさんの書評もまた、ミステリの裏にあるものに注目してくださったものです。
あわいさんは本作で〝脱線〟要素として出てくる創作論・探偵論・大人と子どもの対話といったものがどのように接続され、まとまった1作品として読めるかをナビゲートするように書いてくださっています。いろんなものがごった煮状態で本に押し込まれたこの小説をもうすこしスッキリ見たいという方の大きな助けになるのではないか、と思います。

方梨もがなさんは本作の構成を「パロディ」の観点から説明してくれています。小説のなかにはたぶん注釈をつけはじめるともう一冊くらいできあがりそうなほど大小さまざまなパロディが仕込まれていますが、その手つきについての方梨さんは実作者らしいアプローチで考察くださっていて、とても勇気づけられました。


ミステリ評論家・千街晶之にインタビューをしてもらいました。ぼくの読書遍歴・この小説の着想やざっくりとした狙いについて話しています。かんたんに言えばイキり倒しています。

(新しいものを発見次第、追加していきます)

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