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新規事業の成否は試行錯誤ですが・・・ ~試行錯誤に適した体制構築してますか?

※誤って記事が削除されたため、2021年1月13日の記事を再掲致します。

ウガンダの事業を抜けて2か月。最近、新規事業の起ち上げの話を伺う機会が増えてきた。

事業開発における成功とは、何度失敗しても、”成功するまで試行錯誤し続けられること”と考えている。
これは、大企業の中で行われる新規事業開発でも、
地域に根差した食堂、ゲストハウスの起ち上げでも、
スタートアップでアイデアを事業に昇華させるのでも、
同じだろう。

多くの人は『試行錯誤が大事!』には合意してくれるだろう。
だが、本当に『試行錯誤を前提としたチーム作り、体制作り、運用作り、コミュニケーション、役割分担、意思決定、予算配分・・・を考えていますか?』と問われると、深く考えないでチーム運営していることはないだろうか?

事業開発の成功が、試行錯誤を続ける事であるならば、
そもそも、”高速の試行錯誤に耐えうる体制(チーム設計)を構築しているか?”は大事な問いになる。

よく検討しないでチームを作ると、試行錯誤に適さない”一発勝負”の体制を作りがちだ。


”アイデア”自体に対した価値はない。

まず大前提として、最初にふと思いついたアイデアがそのまま成功することは圧倒的に少ない。

『ありそうでなかったサービスだから、イケるかも!』
『この客層(ターゲット層)は空白地帯だ』
『この製品は痒いところに手が届くが、まだ誰も始まってない』
などなど、
自分(達)がパッと思いつくアイデアは、過去に何千人が思いついて、何十人が実際に試してみたのだなと思うくらいの方がよい。

※だからといって、そのアイデアを始めるなと言いたいのではない。念のため

まずは、その思いついたアイデアを起点にスタートするのだが、中々思い描いた通りには進まない。
● 不便だなと思っていた事が、別に不便ではなかった。(ニーズがなかった)
● お客さんの行動をよく観察してみると、このサービスではお客さんの抱える課題解決に繋がらなった。
● 期待していた客層にはハマらなかった。
● 想定した客層の規模・購買力は思ったよりずっと小さくてペイしなかった。
● 思ったより競合が強くて入り込めない。
● 想定の何倍ものコストがかかってしまった。
などなど

思い通りにいかないからこそ、
できるだけ早く始めてみて、お客さんにぶつけて、フィードバックを得て、糧にして試行錯誤を繰り返し、ハマる形にブラッシュアップしていく。

息切れする前に(諦める前に)、『これだ!』と世の流れ、社会の流れ、お客さんのニーズに合致するものが見つかれば事業は立ち上がる。
その前に息切れしたら、頓挫する。

息切れする前に、限られた制約条件(期間・お金・人員など)の中で、どれだけ多くの試行錯誤を繰り返せるか?が成功確率を左右する。

最初の半年で一つのターゲット層に絞って一発勝負をかけるよりも、
同じ半年の中で、厳選した5つのターゲット層にアプローチした方が、成功確率は上がる。

試行錯誤できるチーム運営を築いていますか?

ここからが本題のチーム運営について。
試行錯誤が大事と分かっていても、その体制が整備されているか?は一度立ち止まって考えたい。

例えば以下の自問自答。

■ メンバー間の情報共有や報告に一日のどの程度の時間を使ってますか?事業立ち上げに直接関与する仕事に9割以上の時間を割けていますか?
■ 単独なら数分で出来る意思決定に、数日かかることはないですか?
■ これやってみよ!って思いついた小さなアイデアを実行に移すまでに、チーム内、社内の調整にどれだけ時間を要してますか?
■ 当初の仮説がハマらなかった時、誰も中止(方向転換)の決定を下せずに、惰性で続けていませんか?
■ 次の仮説を実行するのに、何日要してますか?責任の所在や反省会に時間を費やしていませんか?
■ 検証する仮説は明示されてますか?当初の仮説を評価するタイミングは分かっていますか?メンバーに浸透していますか?
■ そもそも試行錯誤するネタ帳はありますか?メンバーが追加したり、互いに共有できる状況ですか?


どれだけ試行錯誤が大事!と唱えても、コミュニケーション、意思決定、情報共有、活動計画、役割分担、予算配分が試行錯誤できる計画や体制になっていなければ、実際には中途半端な試行錯誤で終わってしまう。

以下、陥りがちな事象を挙げながら具体例を示そう。

【そもそものコミュニケーション設計、意思決定の問題】

まずは初歩的だけどよくあるコミュニケーションの問題から・・・


■ メンバーが個別で情報交換をしており、情報が偏在。メンバーがプロジェクトの全体像を把握していない。
例:『これ、xxさんに聞けばいいの?誰が知ってるの?』の会話が頻発
例:同じ内容の報告を上司と同僚、上司Aと上司Bなど、複数の人に複数回する。チームの中で同じ質問が繰り返される。

■ メンバーのスケジュール調整に時間を取られる。
例:『AさんとBさんのスケジュールの会う時に打ち合わせしたいのですが。。』とスケジュール調整のタスクに時間が取られる。
例:『Aさんに確認したいんだけど、今どこにいるの?』と他人の場所やスケジュールを知るために、人の作業時間を中断させる。

■ 貴重な情報がシェアされずに放置される。
例:『お客さんから貴重な意見を貰ったんだけど、これ、誰に話せばいいんだろう?』と迷って埋没する。せっかくフィードバックを反映できる機会を損失している。

■ 会議や報告のための準備、資料作りに時間が取られる。
例:『週次の定例報告のために、各所のTODOやリスト、データを寄せ集めて転記するので、毎週の資料作りに3時間使っている』
毎週、資料作成にかかる時間で、2か所は営業にいけた。
チーム内の定例に使うだけで、定例が終わったら見向きもされに資料の作成に時間を費やす必要はあるのか。Googleスプレッドシートを共有すれば済む話かもしれない。

例:『週次の定例会議の議事録に半日費やし、各所のレビューを受けて3日後に共有される』
情報共有の目的であれば、もっと簡略化できないか。その時間を施策を試し実作業に回した方が良い。

■ 集中力を妨げるコミュニケーションが多発。思考に集中できない。
例:『上司や同僚から、あれどうなった?と頻繁に声をかけられるので、作業に集中できない。ノッてきたと思ったら声をかけられて中断させられる。』など、メンバーの作業を無暗に中断していないか。
集中するには時間がかかるし、一度切れた集中力を取り戻すにはエネルギーを要する。

などなど・・・


チーム内の情報共有、報告、スケジュール調整はコストであり、価値を生み出さない。
にもかかわらず、コミュニケーション(情報共有・意思疎通・調整作業)に忙殺されて、本来すべき仕事に注力出来ない状況は多発する。

コミュニケーションの問題は、ちょっとしたことでも、ぐっと改善できる場合も多い。例えば、、

・Slackなどを活用し、メンバー全員に情報共有する(又聞きではなく一次情報を共有している)
・口頭で決まった内容を、要点だけSlackに投げる習慣をつける
・Googleカレンダーを使って、メンバーのスケジュール・所在地を誰でも確認できる状況にしておく
・必要な連絡先をチームのGoogle contactに入れてチームメンバーのスマホと自動同期させる
・Trelloなど、メンバーが常に確認
・緊急でないコミュニケーション以外は作業している人に声をかけない。急ぎでなければ、Slackでメッセージを投げる、時間指定のリマインダーを投げるなど相手の作業を中断させない工夫を入れる。
・そもそも、作業を中断してまで訪ねたい事項をピックし、別の方法で共有できないか検討する。(予定確認ならGoogle Calendar、進捗確認ならTrelloのメモ欄とか)

試行錯誤を妨げる意思決定プロセスも注意が必要だ。

■ 誰に判断を求めて良いか分からない。
例:『この配送ルート、少し変えた方が良いんだけど、誰に相談すればいいの?』と誰が判断・決断しているか分からない。
忙しい中で、誰に判断を求めるか考えるだけでも面倒。そのうち、新しいアイデアを試す事自体が億劫になる。

■ 意思決定者がたくさん
例:『この商品、店頭で少し試したいんだけど、仕入れ担当、調達担当、エリアマネジャー、店長、経理担当、皆に意見を聞かないと進められない。』と、明日からでも始められるアイデアを試すのに1か月要する。
さっと1時間で注文して店舗に置くだけの事が、社内の調整だけで3人日も費やす。
結果、試行錯誤することが面倒でばからしくなる。

■ 意思決定に無駄に時間がかかる
例:『ちょっとSNSマーケティング試したいから、一人プロに手伝ってほしいだけなんだけど、上司、事業部、人事にお伺いたててたら、入社までに3か月以上かかって機を逸した』
サクッと業務委託契約を結んで、明日からでも始めてもらい、実工数1週間程度で結果を得られる事だったのに、数か月後に入っても意味がない。だからプロに業務委託する選択肢は『現実的ではない』の認識が広まり、自分達で何とかしようとする。。
プロでもない人達が不慣れな業務をこなすので、大変なだけで、結果も出ない。


既に定常化しているオペレーションと新規事業のアイデアを高速で試している段階では、意思決定の本質が異なる。
多くのアイデアをぶつけてみる!事が大事な新規事業において、試行錯誤の機会をいかに増やすかが重要で、
意思決定が、貴重な起ち上げ期間を浪費し、メンバーの無駄な工数を食いつぶし、試行錯誤の機会損失を減らしてしまっては本末転倒である。

スムーズな意思決定をするには

業種や規模、体制により様々なので、これをすれば意思決定がスムーズになるという解決策はないが、
僕は、ありがちなケースを想定して、シミュレーションして事前に問題を洗い出したりする。

『自分がxx担当だった場合、この局面に遭遇したら、
どの内容は事前に知っておきたいか?
誰に共有しておくと手戻りがないか?
事後報告でも良い事は?』
など、少し考えるだけでも、検討すべき事項が洗い出せると思う。

・このオペレーションの変更だったら、AさんとBさんが話し合えば良くて、10分で済む。
・この程度のレイアウトの変更だったら、Aさんが独断でやって、Slackに事後で投げておくだけで良い。
・この程度の予算内だったら、現場スタッフで都度試して、何が上手くいったか行かなかっただけを定例で簡潔に話せばよい。
などなど

実働メンバーと非実働メンバーを切り離す

また、多様なステークホルダーが絡むような状況では、実働メンバーの境界線を明確にするとよい。
ワクワクする事業になれば、アドバイスしたい人、情報だけは欲しい人など、手を動かさない人も集まってくる。
実働に関与しない人、現場にいない人をどこまで意思決定プロセス、情報共有に含めるか?はシビアに判断した方が良い。
こういう人達は概して地位が高く、本来は意思決定に必要ないのにお伺いを求められたりする。
アドバイス好きな人も多く、その場のノリで全体の方向性を無視したアドバイスを発して現場が混乱する事もある。

【”一発屋”を前提とした計画ではなく、”失敗”を織り込んだ計画へ】

さて、より本質なプロジェクト計画に話しを移す。


試行錯誤が大事と言われながら、初期のアイデア(仮説)がハマらなかったら、次を試すスケジュール、マイルストン、予算配分、人員体制になっていない事が多い。

起ち上げ前は、『このアイデアならいけます!』と皆、意気揚々としている。このアイデアが当たったらいいな!と妄想を膨らませている。
そのアイデアが当たらないなん考えるだけでも不吉だ。
こんな状態になっている事は多い。最初の仮説がハマらなかった時まで思いを馳せずに事業計画を作ってしまう。

数か月後、最初の仮説がハマらなかった時に、『さあ、次を試そう』としても、もう余力のある人材もいない、予算も使ってしまった。
打てる手が限られ、結果として次の仮説を試す事ができない。

こちらもよくある事例を挙げてみた。

■ 仮説判断の基準、評価のマイルストンが不在。(またはメンバーに周知されていない)
例:『このターゲットは不発だなと思っているんだけど、どうするんだろう?』と皆、薄々、この仮説は外したなと思っているのだが、どう手仕舞いしたらよいかわからず、とりあえず惰性でもがく。次へ進めない。
気づいた時には最初の仮説検証だけで3か月経過していた。。最初の2週間でイマイチと分かって止めていたら、この間に4つのアイデアが試せたのに。。

■ 最初のアイデアに予算を全部突っ込んで、最初の仮説検証が終わったころには予算が残っていない。
例:『新たなターゲットに対してキャンペーンを打ちたいのに、最初の2か月で新規施策の予算が残ってない。新しい事が試せない。』
結果として、新たなアイデアを試しはするも、中途半端な投資・工数で、結論が出ないまま撤退する。
または、新たなアイデアを試す余裕がないから、上手くいっていない最初の仮説に盲目的にしがみつき、徹底する。

■ ”失敗”を前提としておらず、責任転嫁、無駄な反省が続き、いつまで経っても次のアイデアに行かない。
例:『思ったより売上が上がらないのは、Aさんの市場の読みが甘かったからでは?』と最初の仮説が外れた原因をチーム内で押し付ける。
そんな時間があるなら、さっさと次に行った方がよい。所詮、仮説は仮説であり、その通りに行かない事の方が多い。さっさと割り切って次にいこう。

例:『あの時、こうしておけば、もっと損害を抑えられたのではないか。どこに問題があったのか?』と過去の失敗原因の検討ばかりで、次のアクションが実行されない。
失敗から学ぶこと自体は重要だが、それは次のアクションに活かすためであり、調査報告をするためではない。
初期段階の失敗は、次へのクライテリア(必須事項)なので、さっさと次の行動に時間を向ける。

■ メンバー全員の工数がパツパツで、作業に時間が取られ、新しい事を考える余裕がない。
例:『日々の作業が多すぎて、毎日残業。寝る時間も惜しんで働いている。お客さんが残した小さなサインに気付く余裕もない』
事業起ち上げ時期は、慣れない仕事ばかりで余裕がない。あれもこれもやらないといけない。
ただ、この時期に作業に忙殺されると、撒いた種(アイデア)から戻ってくるフィードバックを受け取る事が難しくなる。業務負荷を意図的に8割に抑えるなど、”空白”の時間を前もって設計した方がよい。

例:『皆でちょっと試してみたいアイデアがあるんだけど、くそ忙しい時に声をかけても無視されるだけだ』
上記と同じく、初期の時期だからこそ、色々なアイデアを試す余裕を普段以上に確保しておく必要がある。
可能ならば、遊撃要員を確保する。挙がったアイデアをさっと実行に移すために、普段の業務負荷を5割に抑えておく要員だ。
また、トップ(リーダー)が作業に忙殺されない事が大事になる。初期の頃に、トップが最前線の現場に入って肌感覚を持つのは必要だが、トップが作業要員として現場から離れられなくなると、大きな手を打ちづらくなる。

【試行錯誤のネタを集める仕組みを持つ】

最後は、試行錯誤のネタを集めること。

次々に新しいアイデアを試すには、そもそものアイデアのストックを持つ必要がある。
一つの仮説がハマらないと分かってから、『さて次に何しよう?』では遅い。
小さいアイデアであれば、同時多発的に試せるし、
大きな方向性を変えるアイデアであれば、初期仮説の試行中に種を仕込んでおき、ハマらなかったら、すぐに次を実行に移した方がよい。

■ 思いついたアイデアを忘れないで貯めておく
例:『現場で話していると色々なアイデアが浮かんでくるのだが、雑談で流れてしまう』
初期フェーズは新しい事にワクワクして、妄想が広がり、色々なアイデアが出てくる。現場で準備している時だったり、みなでランチしている時だったり。
そこで挙がったアイデアを文字に残し、共有するだけでも大きい。

メンバーに共有しているGoogle Spreadsheetのリストに一行ずつ思いついたものを書き込んでいくでもよいし、
Trelloのカードを作るでも良い。

最初の仮説が否定されていき、落ち込んでいる時に新しいアイデアを練ろうとしても中々妙案は浮かばない。
色んなアイデアを拾っておく仕組みは作っておいて損はない。

■ 外部者を巻き込んでアイデア出しをしてもらう。
例:『チームで考えていても、毎回似たようなアイデアばかり。』
自分達(チーム)だけでアイデアを出す必要はない。
例えば、月に一度、外部者を読んでざっくばらんにブレストしたり、協力してくれるお客さんを呼んで、ディスカッションに入ってもらったり。。
予め考えておいて、予定に組み込んでおくと尚よい。

■ 外部を巻き込んで、アイデアの実行も担ってもらう。
例:『色々なアイデアを試行錯誤したいけど、メンバーもカツカツ。回すだけで精一杯、新しい事を試す余裕がもてない。』
現実的には、試行錯誤したくてもやってくれる人がいないから少しずつしかできない。というの状況が多いだろう。

人がいないから実行できないは永遠の課題だが、まだ出来る事はあるかもしれない。
過去に関与した例では、『近くの大学の研究室が、この事業テーマ(社会課題)に興味を持っており、研究室の活動の一環として、アイデア出しとイベント企画・運営をしてもらう』という地場の企業と大学との連携があった。
大学側にとっても、リアルなケーススタディになるし、実体験から学べる貴重な機会になる。

限られた期間、予算、人員、体制の中で、いかに試行錯誤をするか?

地域の地場に根差した商売から、新技術のスタートアップ的な事業、大企業の大きな事業開発に至るまで、
”最初の仮説が不発に終わってから”が本当の勝負どころなのだろう。

試行錯誤を繰り返す心づもりをしておくことは、チームのモチベーション維持の観点からも重要だ。
特に、最初の仮説(アイデア)が失敗に終わる(ハマらなかった)時に、チームのモチベーションが低下する。
皆に次の仮説を試す心づもりがあれば、次に思いを馳せることで勢いを保つことができる。
心づもりがないと、落ち込み、スピードが落ちる。ギクシャクし始める。士気が戻るまでに時間を浪費してしまう。

世に言われる成功事例は、たまたま偶然成功したわけではなく、
その偶然を勝ち取るまでに水面下でたくさんの不発を繰り返している。
不発をしっかり糧にできるチーム運営が新規事業の成功確率を上げる。

『数を打ちゃあたる!』と闇雲に試行錯誤を繰り返せばいいわけではないが、
”限られた制約条件(時間、お金、人材、体制、技術など)の中で、どれだけ試行錯誤できるか?”は大事だけど見落とされがちなポイントなので具体例含めて纏めてみた。

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