(5) 中国で「日本企業文化論」を開講したワケ(2018.5.23) by ワークスアプリケーションズ中国 董事 五十木正 を抜粋加筆しました。

2013年、私が当時通学していた北京大学経済学院EMBAコースで、日本語学科の教授に講義を受ける機会があり、休憩時間に教授に素朴な質問を投げかけてみました。

「北京大学のような一流大学の日本語学科卒業生は皆、一流日本企業に就職するのでしょうね?」と。
答えは意外なものでした。

北京大学の就職先の一番人気は国家公務員または国営企業であることは理解できました。
しかし、二番人気は欧米への留学であり、日系企業就職は三番人気だと知り、愕然としてしまいました。

欧米留学を選択するということは、せっかく習得した日本語を捨てるという意味です。
即ち日本語を専門に勉強した学生にとって、日系企業への就職が魅力的ではないということです。


中国人のみならず、中国に駐在している日本人の口からも、在中国の日系企業は保守的で、人事制度面で欧米流グローバルスタンダードからはずれていると漏れ聞くことも多い。

特別な能力を持つ社員、例えば高度ITスキル保有者の給与を特別に高くすることもなく、高い実績をあげた社員の昇級・昇給スピードを格段に上げることもありません。
あるのはグラスシーリング(見えない天井)だけだと。


その一方で、社員を大切に扱い、長い期間をかけて育成しようとする家族主義的な日系企業が意外と好感を持たれている事実を、我々は認識すべきです。

近代社会において世界経済は確かに欧米企業が先導してきたが、実は世界一長寿企業が多いのは日本です。
家族主義的経営であるが故に世界一の企業長寿化を成し遂げ、また長寿の秘訣はイノベーションの積み重ねにより支えられています。


さらには、社会との共生を重要視するが故に、売り手と買い手だけではなく世の中にとっても良い、まさに “三方よし”であることを。

ただし、認識するだけでなく、それを中国社会にきっちり説明する努力が日系企業にはまだまだ足りていないからこそこの当講座の意義があると考えています。


言語化。
日本人が中国人に、いろいろなことを言葉にしてキチンと伝えられていない現実があります。

人間は、言葉をもって物事を考え、言葉によって相手とコミュニケーションするということを毎日、繰り返している、ということを最近良く感じるようになりました。
言葉の使い方や、伝え方、説明方法により、良い関係にも良くない関係になってしまいます。


これは、
「自分は外国にいる。中国人という異国人とコミュニケーションを取っている。」
という意識付けをして、正確に分かりやすい言葉で伝えることを常に心掛ける、ということだと感じます。

顔や肌の色、髪の毛の色などが日本人と良く似ているので、日本人の気持ちが通じやすいという錯覚をつい、してしまいます。

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