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【MOMO原書PJT③】"Geh doch zu Momo!"

2章に入り、物語はモモの人物像の内面に触れ、モモの特別な性質について描かれていく。

"Eine ungewöhnliche Eigenschaft"

”めずらしい性質”と大島かおりは文字通りに訳している。
Eigenschaftは英語でいうところの”feature”にあたる言葉で特性や性質を意味する単語である。

今日ははモモの”めずらしい性質”について触れたい。

その本題に入る前に、原書読破チャレンジのドイツ語奮闘記を少しお届けしたい。

ドイツ語キーボードの”めずらしい性質”

色々単語を調べる上で、お気づきの通り、ドイツ語には英語のアルファベットにないウムラウトという文字がある。「ä」、「ü」、「ö」その他にエスツェット「ß」というものもある。

それぞれ、アルファベットに置き換えると以下の通りである。

  • ä = ae

  • ü = ue

  • ö = oe 

  • ß = ss

発音もaの口でeと言う感じで、äは日本語の「え」にきわめて近いと昔習った。

ドイツ語にはこれらの文字が高頻度で登場する。何かと不便なので、ドイツ語キーボードをダウンロードしてみた
そして思い出した、この不思議な性質を。

まずウムラウトは日英キーボードの[@], [;], [:]にあり、エスツェットは[-]のところにある。これまた奇跡的に覚えていた。

ただ完全に忘れていたことがある。ドイツ語キーボードでは[Y]と[Z]が配置が入れ替わるのだ。ドイツ語はZを含む単語が多いからだと思うが、これが絶妙に打ちづらい。

そんなこんなで時代を超えたドイツ語との格闘は続いている。


モモのめずらしい性質とエンデの気持ち

さて、本題のモモの性質に戻ろう。

結論から言うと、それは「傾聴力」である。

モモはとにかく聞く力に優れている。
だから誰もが話しかけたくなり、モモがいない生活を考えられないほどだと書かれているのでとにかく優れているのだろう。

この傾聴力について、作者であるミヒャエル・エンデの主観が作中にも出てくる。

なあんだ、そんなこと、とみんな言うでしょうね。話を聞くなんて、だれにだってできるじゃないかって。
でもそれはまちがいです。ほんとうに聞くことができる人は、めったにいないものです。

『モモ』岩波少年文庫 より

このモモのめずらしい性質、エンデの言葉はとても印象的だった。

傾聴力はビジネスや社会生活における基本的なコミュニケーションスキルようにうたわれている。

はたして、そう簡単に身に付けられるものだろうか。
私もおこがましいがエンデ同様に、傾聴力が大切だという人で「傾聴」できる人にほとんど出会ったことがない。

聴くことはとても難しいから、カウンセラーやコーチングなどの職業が成り立つのだと思う。

しかし、本文にも出てくるように、「なあんだ、そんなこと」簡単だと多くの人が考えています。

このギャップはどこから生まれてくるのだろうか。

多くの人は相手の話をよく聞くことができます。にもかかわらず、モモのような人をひきつけるほどの傾聴力があるとは言えない。
それは聞くだけでなく、自分の考えを相手に伝えたり、相手にもっと話させようと思って質問をしたりするからだ。

聴いているはずが、途中で自分の意見や感想を考えてしまっている。
だから相手の話を100%聴くことができていない。
イヤホンで音楽を聴きながら、何か別の作業をしているようなものだ。

では、どうしたら真の傾聴力が身に付けられるか。
その答えはモモが知っている。

ただじっとすわって、注意ぶかく聞いているだけです。

『モモ』岩波少年文庫 より

私も、相手の話を聞くと言いながら、ついつい相手の世界に自分を挟んでしまうことがある。

相手が話し終わるまでは、何も考えずじっと聞くことに集中したい。

そのために相手が気持ちよく話し始めて、話し終えられるように、その場の空気を作ることも大切である。

言うは易く行うは難し。

組織や個人で「傾聴力」や「心理的安全性」を考えるときはモモを思い出してもらえればと思う。


都会で実践できる農ライフ、読書、ドイツ語、家族などについて「なぜかちょっと気になる」駄文・散文を書いています。お読みいただき、あなたの中に新しい何かが芽生えたら、その芽に水をやるつもりでスキ、コメント、ほんの少しのサポートいただけると嬉しいです。