【MOMO原書PJT①】原書と日本語訳のものがたり
勢いだけではじまった『MOMO』原書プロジェクト
15年ぶりにおそるおそるページをめくるドイツ語の児童文学。
そういえば、最後に読んだドイツ語原書はエーリッヒ・ケストナーの『点子ちゃんとアントン』だったと思い出す。当時は現役バリバリで、日独電子辞書や独独辞典で読み進めるもケストナーの詩的な表現に手こずった記憶がよみがえる。
今回頼るは大島かおり訳の岩波少年文庫の『モモ』
辞書も探せばあるはずだが、どこにあるか見当もつかないためなしで始める。
今はWebの翻訳でも十分やれるはず・・・
私のドイツ語読解力の現在地
『モモ』は第1章の前にアイルランドの子どもの歌が引用されているのだが、それを何も見ずに訳文を考えてみる。
あれ?意外といける!
子どもの歌だからなのかかすかに覚えている単語が短い一文に複数含まれているだけでとても安心感がある。
格変化や語順はあやふやだが、いけている。意気揚々と第1章に突入。
章題もなんなくいけた。
なんだ、まあまあいけると思ったのもつかの間、私のあわい希望は早くも打ち砕かれることになる。
エンデのしっかり情景描写がおそってくる。1節目より、その街に何があって、人々が何をしていてをとにかく詳しく書いている。
文字だけで読者をものがたりの世界に引き込み、絵を想像させるのだから小説家とはすごいスキルだ。ましてや子ども相手に。エンデおそるべし。
偉大なる翻訳家大島かおり
おそらく3歳児レベルのドイツ語の私は文字通り一語一語につまずく。名詞に、形容詞に。
進めないので日本語訳と見比べる。
そして早くも大島かおりという偉大なる武器(翻訳家)の存在を知る。
Strassen
Gassen
Gaesschen
という3つの名詞が冒頭出てくる。
なんとなくの記憶でこれらが「通り」と訳されるものであることはわかった。
(それだけでも自分をほめたい)
ただこれを訳そうとすると「大通り」「路地」「路地」。え?
二つ目の路地はもっと小さい路地というニュアンスであるが日本語で訳し分けると不自然である。
それを大島かおりは
大通り
裏通り
路地
と見事に通りの広さの大中小を表現している。それでいて原文のニュアンスを壊さない絶妙な訳である。
同様にそれぞれに形容詞がついている。
文字通り訳すと
広い「大通り」
狭い「裏通り」
曲がりくねった「路地」
と当たり前になりすぎてしまう。
これらを
ひろびろとした
せまい
ごちゃごちゃとした
と都会の「通り」の情景を見事に表現している。
なるほど日本語訳とあるが、『MOMO』はミヒャエル・エンデの作品であるが、『モモ』は大島かおりの作品なのだと気づいた。
作者・作品へのリスペクトを持ちつつの母国語での創作性を加える翻訳家のプロフェッショナリズムに心躍らせたそんな記念すべき第1ページだった。
そう、まだ1ページ。原書残り268ページ。
これから先どんな恐怖、絶望、そして発見が待っているのだろうか。
乞うご期待!
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