長いタイトルはラノベの専売特許じゃない

 中野京子「危険な世界史 運命の女篇」で、デフォーの「ロビンソン・クルーソー」のタイトルが、紹介されていました。曰く「ヨーク出身の水夫ロビンソン・クルーソーの生涯と驚嘆すべき大冒険。難破船でただひとり生き残り、オルノーク河口近いアメリカ沿岸の無人島で二十八年間過ごし、奇跡的に救助されるまでの詳細を、本人記述」というもの。
 面白いのはこのタイトルについて「まるで「何とかサスペンス劇場」の番組案内みたいに長くて説明的」と書かれている点。
 ここ十年くらいは長くて説明的なタイトルと言ったらライトノベルを思い出すところですが、それ以前は確かにミステリ・サスペンスの2時間ドラマが長いタイトルの代名詞で、新聞のテレビ欄を埋め尽くそうとしているかのようなタイトルが度々話題になったものだということを思い出しました。
 そして最初のロビンソン・クルーソーもそうであるように、近代の欧米文学にも長い長いタイトルは存在します。ぱっと思いつくのはポー「ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語」ですが、「ガリバー旅行記」も確か正式名称は長かった筈と思って検索すると「船医から始まり後に複数の船の船長となったレミュエル・ガリヴァーによる、世界の諸僻地への旅行記四篇」というタイトルでした。

 僕もついついラノベの説明的なタイトルには批判的になっていたのですが、このようなタイトルで作品の見どころをあらかじめ提示する手法は、ラノベが始めた訳ではない、それどころか伝統的に使われていた手法と言ってもいいと気付かされました。
 反省反省。

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