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「多様性は何でもあり」は本当に正しいのか


私は生まれつきろう者というマイノリティとして生きてきました。日々の生活では、コミュニケーションや情報入手の困難さから、時として孤独感や生きづらさを感じていました。

ある日、SNSで目にした投稿に衝撃を受けました。「多様性の時代なら、マイノリティの存在を認めないことも思想の自由として認められるべきだ」という内容でした。この発言に、私はショックを受け、深く悩みました。多様性を尊重するなら、このような否定的な意見も受け入れなければならないのでしょうか。この葛藤が、私に多様性の本質について深く考えるきっかけとなりました。

「何でもあり」ではない多様性の真の意味

多様性を語る際、しばしば「多様性を尊重するなら、あらゆる意見を認めるべきだ」という主張を耳にします。しかし、これは多様性の本質を完全に見誤っているように思います。

多様性とは、互いを尊重し理解し合うことが基本ではないでしょうか。特定のグループを排除したり、傷つけたりすることは、多様性の概念そのものに反すると思います。お互いの意見や考え方、価値観を尊重することは重要ですが、それが他者を否定したり、傷つけたりするものであってはならないと考えています。

多様性って、私たちの社会でずっと「当たり前」と思われてきたものの見方や生き方だけでなく、違う経験や考えを持つ人たちの声にも耳を傾けることだと思います。これは、今まであまり目を向けられてこなかった人たち(マイノリティ=少数派)の存在や思いを大切にしようということだと思います。つまり、今ある考え方を否定するんじゃなくて、みんなの視野を広げて、お互いをもっと理解し合うことが大切だと思います。

違いを認め合い、尊重し合う社会

多様性は、Webでは次のように定義されていました。「多様性(ダイバーシティ)とは、人種・年齢・性別・能力・価値観などさまざまな違いを持った人々が組織や集団において共存している状態のことを指す。」
(引用元:ダイバーシティとは?意味やメリット、経営事例を解説

重要なのは、表層的な違いだけでなく、価値観のような深層的な違いも含まれることです。真の多様性とは、単に様々な属性の人が存在するだけでなく、互いを理解し、尊重し合うことだと思います。

しかし、時として意見や価値観の違いが対立を生むこともあります。このような場合、重要なのは対話ではないでしょうか。相手の立場に立って考え、互いの背景や経験を理解しようと努めることが大切だと感じています。

共通の目標や価値観を見出すことで、対立を乗り越える糸口が見つかることもあります。例えば、日本の教育現場では、外国にルーツを持つ子どもたちと日本人の子どもたちの間の文化的な対立を解消するために、「多文化共生」をテーマにした学校行事を企画し、互いの文化を学び合う機会を設けることで、相互理解が深まった事例があります。
(引用元:文部科学省「学校における外国人児童生徒等に対する教育支援の充実方策について」2016年)

また、必要に応じて第三者の仲介を求めることも有効かもしれません。日本では、地域の多文化共生を推進するために、自治体が「多文化共生コーディネーター」を配置し、外国人住民と日本人住民の間の対話を促進し、相互理解を深める取り組みが行われています。
(引用元:総務省「多文化共生の推進に関する研究会報告書 ~地域における多文化共生の更なる推進に向けて~」2020年)

多様性はもともと存在する:認識と尊重の重要性

多様性は誰かが与えたり、認めたりするものではないと私は考えています。それはもともと世の中に存在するものなのです。大切なのは、その事実を主体的に認め合い、尊重し合うことではないでしょうか。

多様性を認識し、受け入れることは、個人の成長や社会の発展にもつながると思います。異なる背景や経験を持つ人々との交流は、新しい視点や考え方をもたらし、創造性や問題解決能力を高める可能性があります。

例えば、日本企業でも、多様な背景を持つ従業員を積極的に採用することで、新しい製品開発やサービス改善につながった事例が報告されています。また、地域社会においても、外国人住民と日本人住民が協力して地域の課題解決に取り組むことで、より活気ある町づくりが実現している例もあります。

このような多様性の恩恵を享受できる社会こそ、マジョリティもマイノリティも共に生きやすい環境となるのではないでしょうか。

一人ひとりの行動から始まる多様性社会への道

私は日々の生活の中で、自分の経験や思いを周りの人々と共有するよう心がけています。例えば、ダイバーシティ関連のイベントや地域の手話サークルなどで講演する機会があれば、マイノリティとしての体験を話し、理解を深めるきっかけを作っています。

これらの小さな行動の積み重ねが、真の多様性社会の実現につながるのではないかと考えています。また、このような活動を通じて、私自身も多くのことを学んできました。異なる背景を持つ人々との対話は、自分の視野を広げ、新たな気づきをもたらしてくれます。

多様性は、私たち一人ひとりの意識と行動から始まるのかもしれません。
マジョリティの方々は、マイノリティの声に耳を傾け、その経験を理解しようと努めてみてはいかがでしょうか。
マイノリティの方々は、可能な範囲で、自分の経験を共有してみてはいかがでしょうか。

具体的な行動として、地域の多様性イベントへの参加や、職場でのインクルージョン推進活動への協力、日常生活での意識的な声かけなど、できることから始めてみるのも良いかもしれません。また、SNSなどを通じて多様性に関する情報を発信し、周囲の人々との対話を促すことも一つの方法だと思います。

私たちが共に手を取り合い、互いの違いを認め合い、尊重し合える社会を作っていけたら素晴らしいと思います。それは決して簡単なことではありませんが、一人ひとりの小さな行動が、より公平で包摂的な社会を築く一歩となるのではないでしょうか。真の多様性社会の実現に向けて、互いの理解を深め、「何でもあり」ではない、尊重と共生の社会を目指して、皆さんと一緒に歩んでいけたら嬉しいです。

あらゆる人が楽しくコミュニケーションできる世の中となりますように!