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勉強とスポーツを両立させる3つのヒント

ALT+編集部ではこれまでに、「キャリア」の形成に関わるいくつかの考え方や、編集長独自の経験や見聞についてご紹介してきました。本日は、さらに趣向を変えて、「勉強とスポーツの両立」について触れてみたいと思います。

*本稿では、ここから先はストーリーを単純化するために、勉強(=机に向かう学習)と、勉強に対立する勉強「以外」のことをスポーツに代表させて論じたいと思います。例えば文化系の部活動のような、身体を使うスポーツでない場合も同様ですので、適宜、読み替えてください。

対象とする読者は、学生の方々、および学生をサポートする保護者の方々を想定しています。このテーマを取り上げた理由は、人生のキャリアを考え始めるスタートラインで、勉強とスポーツの「両立」をどのように成し遂げるかが、その後の人生において非常に重要な意味を持つと考えているからです。


1. 勉強とスポーツの両立とは

両立の意味を辞書で調べるとこのように定義されています。

[名](スル)二つの物事が同時に支障なく成り立つこと。
「仕事と家庭とを—させる」

(辞典・百科事典の検索サービス - Weblio辞書)

二つの物事が同時に支障なく成り立つ。あっさりと定義されていますが、私はこの定義は非常に奥深いと考えます。理由を含め、当記事では以下で再定義して論じます。

勉強とスポーツの両立とは、
勉強とスポーツが成り立つこと。
それも同時に支障なく。

(「勉強とスポーツの両立」の定義 - ALT+編集部)

成り立つこと、成り立たせること

現代では、学生の皆さまは、学校の勉強以外でも、部活や学習塾をはじめ、各種の習い事、スクールなど、様々に「やること」があります。昭和の時代を生きた自分でさえも多忙でしたが、情報化の大きな渦の中に生きる令和の世は、時間の流れ方が数倍(数十倍)早く、しかも密度が濃い。

私自身、子を持つ親の実感として、幼少期は家庭で基礎的な勉強をフォローする程度で、時間的・精神的な余裕がありますが、勉強とともに部活などの学問外の活動が「本格化」するにつれ、親子それぞれ、両立が難しいと感じ始める傾向かと思います。

両立という概念が悩ましく映るのは、「勉強だけでも大変なのに、スポーツを続けるのは難しい」または「スポーツに明け暮れると勉強が疎かになる」という固定観念からきているのではと私は考えます。

・・・さて、ここで1回思考を止めます。
もう一度、両立の定義に戻ります。

勉強とスポーツが成り立つこと。
それも同時に支障なく。

「成り立つ」って何でしょうか。私の頭には、目標(ゴール)を前もって決めて、それを達成した時に「成り立つ」イメージがあります。
勉強の目標が定まっていなければ、勉強が成り立つと言えない。スポーツも同様。「両立」は、勉強とスポーツが同時に成り立つ状態なので、どちらかの目標が明確に言えないのならば、そもそも「両立」は語れないのです。

もし学生の皆様、およびサポートする親の皆様の中に、目標がまだ定まっていないにもかかわらず、「勉強だけでも大変なのに、スポーツを続けるのは難しい」または「スポーツに明け暮れると勉強が疎かになる」という固定観念だけで悩んでおられるようであれば、恐らく、こんな日々なのではないかと想像します。

  • 勉強しなければいけないから勉強する

  • 勉強しなければ周りについていけなくなるから勉強する

  • 中学に入ったら部活はやっておいた方が良いと思うから部活に励む

  • 顧問や先輩が県大会を目指して厳しく練習メニューを組んだから部活に励む

私には、この状態を否定する意図はありません。勉強も、部活も、真面目に取り組まれていること自体は素晴らしいです。しかし、残念なことに、何のために勉強や部活に取り組むのか、そのモチベーションが弱いために、無駄に悩むリスクが大きくなることが心配されます。

つまり、目標を持たないと受け身になり、周りの環境や人間に振り回される。その結果、「闇雲」に動くことになる。闇雲に動いても、その空間には向かうべき光が射していないので、一部の謎を解く能力や、一部の身体能力は上がれど、時間と体力を消費すると、戸惑い、迷ってしまう。

目標を自分の言葉で定義する

両立で悩み過ぎてモチベーションの低下を招いたり、本質的でない無駄なイザコザを生んだりしたことが原因で、せっかくの大事な時期に、本人の成長の機会が失われることは、非常にもったいない。ご本人はもとより、社会を豊かにし、幸せにする何かを生む原石になり得ると考えると、その気持ちは大きくなる。だから私は一人でも多くの背中を押したいと思うのです。

単刀直入に言えば、私からは、両立を考える前に、勉強とスポーツを「成り立たせる」ための目標を自分の言葉でしっかりと定義しよう、とお伝えしたい。

一方で、「話はわかるが、まだ将来やりたいことも漠然としていて、進路もどうしたいか決まっていないから、目標を明確に持ちたくても持てない」と言う声も聞こえます。

この後の章に目標の持ち方についてヒントを語らせていただきますので、参考になれば幸いです。決して今からでも遅くはありません。

2. 勉強とスポーツに取り組む意義・目的

目的は2つある

学生の皆様が、今、勉強とスポーツに取り組むことには、大きく分けて2つの意義・目的があると私は思います。

学生が勉強とスポーツをする2つの意義・目的

1.の「基本的能力」とは、勉強では読み・書き・計算といった情報処理能力、スポーツでは筋力・持久力・柔軟性といった基礎体力や、競技別スキルに加え、協調性やリーダーシップといったコミュニケーション能力に代表される行動特性(≒コンピテンシー・姿勢)のスキルなど、個人の内に秘める全般的な能力をここでは指します。

2.の「パスポート」とは、自己の研鑽した結果を発揮して得る、その人の「属性」に当たるものです。有り体に表現すれば、勉強の世界では『学歴』『資格』、スポーツの世界では『受賞歴』『所属チーム』、その中での役割である主将キャプテンの経験も該当するでしょう。これら個人の属性を増やす、または極めることによって、個人の人生を豊かにし、稼ぐ力につながっていくとともに、周囲に対しても、その人の人生がわかりやすくなるという効能があります。

勉強・スポーツ別 目的を達成するために手に入れたいものの例

勉強とスポーツは、若き時代は「義務教育」として取り組むことから始まりますが、次第に、この2つの目的に無意識的に向かいながら、個人の意識の差によって情熱の度合いがわかれる、そんな構造ではないかと私は考えています。

*ALT+編集部では同様の観点でビジネスパーソン向けの記事を公開中:
仕事を勝ち取るための履歴書と職務経歴書とは!相手を前のめりにする極意を解説(前編)
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本格化する勉強とスポーツ

1章の途中で、勉強とスポーツが「本格化」するに従い、両立の悩みが増すと述べました。両立を考える上では、上の2つの目的に対して、勉強とスポーツが具体的に本格化した状態を眺めながら、どう立ち向かうかを考えることによって、スッキリするのではないかと思います。果たして、皆様の勉強とスポーツの取り組みは、下表のどの位置に該当するでしょうか。

勉強・スポーツが「本格化」した状態と、その結果起こること

何のために学び、運動するのか。学歴などのパスポートを得るには失敗するリスクを負う覚悟が必要だが、基礎力を高めようと取り組んだことは、確実な成果に結びつく。極めて当然のことを述べていますが、何をもって両立を考えるのかを、今一度考える良い機会になれば幸いです。

3. 3つのヒント

最後に、本稿のお題である、勉強とスポーツを両立するためのヒントを3点、ご紹介したいと思います。

ヒント1. 勉強とスポーツの目的を再確認する

勉強とスポーツの両立を考えるパターンのうち、最もハードルが高いのは上表のB・Dの組み合わせです。実際、BとDを本気で叶える目標を立てている方はどのくらいいらっしゃるでしょうか。もし、疑いもなくBとDであるならば、親子共々、覚悟が必要でしょう。

私の勝手な憶測になりますが、ずば抜けた身体能力を持っていらっしゃる学生の方以外で、高みを目指そうとしている方は、基本的に受験勉強に力を入れる=Bの方が多いと予想します。その場合、部活や習い事をどうするか悩む構図になりますが、スポーツの目的をCと割り切ることができれば、その両立も考えやすいのではと思います。

ポイントは、受験勉強に本気に取り組むと決めたあとは、勉強以外の活動は、将来的な基礎能力の向上のためにやっていることだと割り切ること。基礎能力を高めるために参加している部活が本格化すれば、練習量が増えます。練習量が増えれば「時間」が必要です。受験勉強にも時間が必要なので、勉強と部活で時間を取り合うことになります。

では、どちらを優先するのか。受験に合格するというゴールが明確に定まっているが、合格できるかどうかは不確定要素。ただし受験勉強のトレーニングに費やした時間は、合格の可能性を上げる。一方で、部活は途中で投げ出せない。ここで重要なのは、基礎能力の向上のために取り組んでいると割り切った以上、同じ時間を中途半端に過ごして無駄遣いするのではなく、しっかりとスポーツなどの基礎能力を上げるために時間を使うこと。逆説的に言えば、基礎能力の向上に繋がらないと思える時間はバッサリと切り捨てることも選択肢の一つであると思います。

一方で、身体能力が高く、スポーツ推薦やプロの下部組織への参加を目指す学生の方の場合は、Dの領域にいらっしゃいます。では勉強をどう取り組むかですが、上記の受験勉強のパターンとは逆で、DとAを両立させることになります。同様に、勉強をおろそかにする、という発想ではなく、将来に向けた基礎能力の向上のために勉強をする、と割り切る。まずは、そのように頭を整理しておくことで、闇雲に中途半端に取り組むことによる悩みから解放することができるのではと思います。

ヒント2. 「時間」を両立の対立要素にしない(取り合わない)

ほぼヒント1で述べた内容に含まれますが、ここで一つ、私からお伝えしておきたいことがあります。それは、BでもDでも、専門性を極めた人であればあるほど、一見、対立軸にあると思われがちなCやAの基礎能力をしっかりと身に付けられている方が多い。

スポーツ選手は、一流であればあるほど学力も高い。処理能力が高く、論理的な思考が、トレーニング方法やインタビューコメントにも現れています。想像できる方は多いと思います。また、教育やビジネスの世界においても、一流は同じく体力のある方が多いです。ハードスケジュールにもかかわらず、基礎体力の維持・向上の意識が高い。この差はやはり、AとCの基礎能力向上の領域をいかに大切に過ごし、質の高い時間を過ごしているかが結果となって現れていると言えるでしょう。

特に学校の学問系の授業は同じ時間を使っているのだから、その時間の濃度を濃くするための工夫をすれば、時間の取り合いは無くなります。勉強の質を上げるために何ができるのか。両立を果たすためには勉強をしないという選択肢はないと心に決めて、やり方を考えていきましょう。

ヒント3. 周りに流されず、周りの目を気にせず、自分の「芯」と「信」を持つ

勉強とスポーツの両立を考えるために、それぞれの目的意識をまず再確認したいことはすでに述べました。最後にお伝えしたいことは、その目的を設定する動機にあたる部分です。

勉強ならばBの領域、スポーツならばDの領域。偏差値の高い学校や、将来性のある組織への参加のパスポートを目指した動機はいかなるものでしょうか。そして、その目的意識は、どんな状況になってもブレない強さを持っているでしょうか。

特に学生の皆様は、同じく分岐点に立つ同級生やチームメイトの存在があります。皆それぞれに、悩みを抱えている。その環境では、実にさまざまに、いろいろな情報が飛び交います。ある時は噂話になったり、比較論が始まったりもします。毎日の生活においては、大きな漠然とした将来への不安によって浮き沈みもあります。そんな中で、一度決めた目標が、本当に自分が本気になって、他を犠牲にしてでも絶対に実現したい目標になっているかどうか。両立を考える上では、ここがブレると計画が総崩れになるリスクがあります。

周りから何と言われようと、自分の「芯」を持って「信」念を貫けるか

もし不安要素があるならば、その目的・目標を素早く再設定して、背伸びをしすぎていない適正な目標に置き換えられると良いと思います。

最後は、少しストイックな意見となりましたが、全ては皆様の成功を願う気持ちから、とご理解いただければ幸いです。
今後とも、ALT+編集部をよろしくお願いいたします。