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人間とは何かを考えてみた文章
太宰治の小説『人間失格』で、題の言葉が読めるのは終わりの方だ。友人(と肉親)の画策で実社会から追放された瞬間につぶやかれる。主人公はずっと痛々しい自意識を抱えているが、この瞬間まで、自分が人間である資格を一度も手放したことはなかった。
他人がつながりを断つ瞬間に失われるもの。この人間は、「つながりを持つ資格」だと言いかえることができる。そして、それは決して『人間失格』だけの話ではない。
私たちは「同じ人間だ」といって他人に近づく。このとき「人間」は、他人とつながるための資格としてある。さらに私たちは「人間と同じだ」といいながら、動物、自然、物語の登場人物とさえつながろうとする。
つながり、交わり、ともに生きようとするために必要な資格。この「人間」は、パスポートにたとえられる。私たちは、私たちはそれ自体ではまだなにものでもないけれども、「人間」というパスポートを握りしめ、あらゆるものとつながる旅に出ているのである。
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