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慣用句から学ぶ韓国語 #3

徐旻廷(ソ・ミンジョン)

「국물도 없다(クンムルド オプタ)」
=「スープもない」


ソルロンタン
画像出典:pixabay

 最近、寒くなってきて、温かい「국물(クンムル)」(スープ)が恋しくなる季節になりましたね。皆さんは、このような季節に思い出す「クンムル」がありますか。ここで「クンムル(국물)」は、「汁ものやチゲなどの料理から具を除いた部分」を意味します韓国では、このような「クンムル料理」に「~국(~クック)」、「~찌개(〜チゲ)」、「~탕」(〜タン)などを付けます。例えば、「미역국(ミヨックック):ワカメスープ」、「떡국(トックック:お餅のスープ)」、「김치찌개(キムチチゲ)」、「순두부찌개(スンドゥブチゲ)」、「삼계탕(サムゲタン)」、「설렁탕(ソルロンタン)」などがあります 。 このような「クンムル料理」は、日本語では普通「〜スープ」と翻訳されることが多いようですが、通常、韓国人は具よりクンムルの量が多ければ「クック(국)」クンムルより具が少なければ「チゲ(찌개)」長い時間煮込んだ料理には「タン(탕)」を付けるようです。  今回紹介する慣用句は「국물도 없다(クンムルド オプタ)」=「スープもない」です。「국물이 없다(クンムリ オプタ)=スープがない」といえば、なんとなくその意味が分かる気もしますが、「〜도 없다(〜もない)」だと、否定的なニュアンスが込められているような気がします。では、日常ではどのように使われているのでしょうか。

그런 식으로 하면 국물도 없을 줄 알아!
(そんなことしてたらタダじゃおかないよ!)

이번에는 용서하지만 다음에는 국물도 없어!
(今回は許してやるが、次は容赦しないぞ!)

「クンムル」には「何かの代価として生じるほんの少しの利得や副収入を俗に言うことば」という辞書的定義もあります。飲むクンムルにどうしてこのような意味がつけられたのでしょうか。


ご飯とおからチゲ
画像出典:pixabay

 韓国人の食卓は、クンムルとご飯がセットです。クンムルさえあればご飯が食べやすくなるため、他のおかずがなくても一食の食事になるのです。そのためか、韓国にはこのようなクンムルの種類がとても多いです。
 クンムルのベースとしては主に肉や魚が使われますが、かつてはクンムル料理を作ると具は大変貴重な存在でした。食べ物があまりなかった時代には、具は家長や長男のお椀にたくさんのせられ、他の家族はほんの少しの具とクンムルが全てでした。そんなクンムルでもあればましな方でした。ご飯と一緒に最小限の食事ができるのですから。

 したがって、「국물도 없다(クンムルド オプタ)」は、具はおろかクンムルもやらないことを意味します。つまり、ささやかなものでも利益となるものはあげないというわけです。また、相手が間違えたり、誤ったりした場合、今回は見逃すけれど次からは絶対許さないと警告するときにも使われます


味噌チゲ
画像出典:pixabay

 韓国人の情緒について語る際に、「정(情)」を非常に重視するイメージがありますが、「국물도 없다(クンムルド オプダ)」は「情」がなくて、冷たく感じることばかもしれませんね。

 今日の夕べは、温かいクンムル料理とともに家族の「情」が感じられる時間を過ごすのはいかがでしょうか。

記事を書いた人:徐旻廷(ソ・ミンジョン)
慶應義塾大学、上智大学など非常勤講師。専門は社会言語学(朝鮮語)。博士(学術)。


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