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「それが唯一の生き方じゃないわ」ってお前が言った

最近、久しぶりに小説を書いた。

といってもこの1年間くらいずっと、書いては直し、書いては直し、書いては上手くいかなくて消し、また書いて、、、

っていうのを繰り返していたから、厳密に言えば書いていなかったわけではない。

久しぶりに、書き終わった。というのが正しい。

で、これまた久しぶりに、新人賞に投稿した。

結果が出るのは来春。

果たしてどうなるやら。


思えば28歳で小説家になることを志して以来、7年。

僕の心境も随分変化した。

あの頃は、1年ほどでプロになり、その道で食っていくことしか考えていなかった。

そしてそれを信じて疑わなかった。

ところがどっこい。

いざ書き始めてみると、自分が想定していた以上に、小説というものは難しかった。

才能の世界だから、だとかそういうことじゃない。

言葉で上手く言い表すことが出来ないんだけど、小説を作ることが結果として出来ない。その難しさ。

いや、これだとさすがに何も言い表せてなさ過ぎるが…。

つまり、小説っていうのは、文章の積み重ねで作られている媒体だ。

そんなの当たり前な話だけど、これがとても重要な気がしていて、

文章っていうのは、ひとつひとつの文字の積み重ね。

「あ」とか「い」とかって文字が、ひとつずつ並べられていって、意味を持って、文章になっている。

一個の小説の全体が、身体だとしたら、ひとつひとつの文字は細胞だ。

細胞を地道にくっつけていって臓器や器官になっていく。それが文章だ。

この、細胞のくっつけ行為がうまくいかないと、文章もうまくないものになる。

そもそも一文の中から一文字欠けるくらいならまだ文章の損なわれ度合は小さいけど、二文字欠けるだけでもその文章はだいぶ歪になる。

その程度のことで文章は崩れてしまうんだ。

となると、文章ってのは形を持っているようで、本来はとてつもなく幻想のようなものと言える。

文章はとても脆い。

脆いからこそ、簡単に組み立てられるくせに、適切なものを組み立てるのは難しかったりもする。

上手い下手は、文章力によるものな気がするけど、

実際のところ、どんなに文章力を磨いても小説は生まれてこない。

文字を一文字一文字打ち込んでいって、文章が出来ているはずなのに、なぜか目の前にあるものは小説にはならない。

一見すると小説のようだけど、それは小説に似た、まがい品。

なぜ小説にならないのかが分からない。

これは実際に書いてみないと、絶対に感じることができない難しさだ。

僕は何年も、何作も、この壁にぶつかって、粉々に砕け散ってきた。

その経験が、「自分には才能が無いんだ」という結論に結びついてきた。

そう、それを成し得るかどうかこそが、才能の有無だと思った。

でも、もしかしたら違うのかもしれないと、最近になって考えが変わってきた。

小説の才能は、この壁を越えるまでの速度のことを言うのではないか。

早いうちから、文字の積み重ねが小説という身体になっていく、そんな人が才能のある人間で、

才能の無い人間は、小説という身体を作れるようになるまで時間が掛かるというだけ。

ようするに、へこたれず何度でもやれば、作れるようになる。

小説家志望として理想論のような考えだけど、実感として、ある。

今回の小説を書き上げて、僕は初めて自分の手で『小説』を作れたと思った。

一つの文章の文字を少し入れ替えるだけで、ガラリと変わる。別に語尾を変えると印象が変わるとか、そういう話ではない。

表現の仕方、描写の仕方の問題だ。

書き出しと書き終わりで、自分自身の能力(みたいなもの)が大きく変化しているから、完成後に推敲して前半を直していくと、作品がまるで違う身体になっていく。

それを繰り返した結果、目の前には小説が顕れた。

何度読み返しても、これは結構いいんじゃないか、と思った。


7年も掛かってようやく辿り着いたのがこの程度の地平だけど、それでもまぁ続けてよかった。

結果につながることを祈っているけど、それを置いといても、続けてきてよかったと感じる。


最近は、小説家一本で食っていくっていうことをあまり考えなくなった(急に話変わった)

専業で食っていくのはもちろん目標ではあるけど、現実も見るようになった。

あぁ、年取ったなぁ。

というか、僕は別に子供の頃から小説が好きな人間だったわけではないから、小説家になることが夢なわけでもないんだけど。

社会で生きてくのがしんど過ぎるから、唯一希望を持てそうなのが作家だったいうだけだ。駆け込み寺みたいなものだ。

僕の夢はそもそも別にあって、それは幼少期から変わらない夢で、厳密にはちょっとずつ形は変わってるんだけど大元は変わらない。

そっちの夢は作家よりはもう少し社会に寄与するものだから、その方面でも収入を得られるようになったらいい。

欲しい物はちゃんと全部手に入れたい。傲慢ぽいけど、最近はそう考えるように変わってきた。

でないと、人生厳しすぎるから。

せめて、全部手に入れる努力とか行動だけはしようと思う。

仕事も夢も恋愛も、今は全部上手くいってないけど、これからは全部手に入れる生き方をしていこうと。

なるべく他人に迷惑を掛けない形で。

少し前まで、色々な側面で、自分の生き方を自分で固定してきた。

でも、そんなものとっぱらった方が楽だと、今さら気付いた。

今年の半ばは小説に対して大きく挫折したけど、やっぱり小説家にはなりたいから、引き続き全力を注ぎ込もうと思う。

ちなみにこの記事のタイトルは、僕の好きなSOUL'd OUTの楽曲からのサンプリングだ。

という適当な締め括りだ。


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