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こんなの守れるか! 武を修める者が守るべき「学生十不可」は机上の空論か否か?

おはようございます。「腱引き」「つるた療法」の別府湯けむり道場、大平です。

留学時代(17年前)の日記帳をパラパラとめくっていました。すると、とても自分が書いたとは思えない興味深い文言がそこに記されていたので、掲載します。

 <学生十不可>
1・不可軽師(師を軽んじてはならない)
2・不可忘義(義を忘れてはならない)
3・不可逞斗(ケンカをしてはならない)
4・不可欺人(人をあざむいてはならない)
5・不可酗酒(酒を飲み過ぎてはならない)
6・不可賭博(賭け事をしてはならない)
7・不可吸烟(タバコを吸ってはならない)
8・不可戯色(女遊びをしてはならない)
9・不可炫耀(見せびらかしてはならない)
10・不可無礼(無礼であってはならない)

「学生」とは単に学校に通う者を指すのではなく、老師に師事する者のことを指します(もっとも、中国武術ではただの学生と内弟子とで教わる内容が違うということが往々にしてあるのですが、ひとまず大意を訳するに留めます)。

当時のわたしが一体何を思ってこれらを日記に書いたのかは今となっては不明(おおかた何かの文献でも読んだのでしょうが)ですが、これは武術だけでなく、その他の習い事においても大体は当てはまるのではないでしょうか。

それに、十不可と言っても特別なことを述べているわけではないということが、ざっと見た感じでもお解りいただけると思います。

1・2・10に関しては人に何かしら物を教わる姿勢として至極当然のことですし、4に至っては嘘も方便という場面もあるとはいえ、あくまで例外。もはや武術以前のモラルの問題です。

そして5・6・7・8は嗜好の問題です。私自身は賭博や喫煙をしませんし、酒も月に一度でも飲めばかなり多いほう。女性への興味などは人並みであれど、さりとてこの学生十不可をかつての武術の生徒達に無理強いするでもなし。

9は師父が「自分を安売りするな」とよく話してくださいます(現在お世話になっている道場では動画のSNSアップは厳禁なのです)。なので、わたしもこれを聞いてからは、少なくとも現在所属している門派に関する内容のものは一切掲載しておりません。

3は師父をはじめとした様々な達人のお話を聞かせていただいた所感としては、もはや破るために存在しているような戒めですね(あくまでも武術に関してです)。

あくまで自己責任(この言葉が嫌いであれば、「それなりの覚悟」に言い換えてください)で臨んでいただければそれでいいと考えています。

ただ、酒を完全に禁じていない辺りに、この十不可を設けた先人の優しさを感じるのはわたしだけでしょうか?

学生十不可……これらすべてを厳密に守ろうと思えば、その遂行には高い目的意識と精神力が必要となり、よほどの強い意志がない限り身が持たなくなると思います。

第一、わたしが武漢に滞在していた頃の専業武術隊は休憩時間にタバコをふかしていたし、夜には(場合によっては昼も)白酒を毎日ガブ飲みするなど大酒飲みでもありました。恋愛トラブルもそれこそ無数に目にしました。いわんや、わたしも含めた留学生をおいてをや。

……もっとも、わたし自身は恋愛トラブルに関しては無縁でした。まったくモテなかったので。はい。

ですから、この学生十不可を自分なりに解釈することが大切だと、わたしは思います。一歩間違うと曲解による妥協となってしまいかねませんが、「こういう教えが過去にあったよ」と認知させることで習い事のモチベーションを高めていけたら、それはそれでいいなと。

つまり、

「こんな十不可を全部守れとは絶対に言わないけど、それくらいの意気込みを習い事に懸けてほしい!」

ということなのです。

まあただ、「酒と女と歌を知らない者は英雄たりえない」という文言も小耳に挟んだこともあり……十不可は英雄への資質を、この文言ごと超えることで試そうとしている部分もあるかもしれませんね。知りませんが。

今回はこのへんで。

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