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寒い寒い なよろのお話

子どもの頃、雪がふるとせっせとパンやケーキを焼いた。

スキーウェアをきる。長靴と脚絆をつける。
長い雪かき、中くらいの雪かき、バケツを持って庭へ行く。

ひざの上まで積もった雪をかきわけズンズンすすむ。

まずは釜を作らなければならない。
先日お母さんが車庫の雪の屋根おろしをしていたから、雪は山になっている。
そこに穴を作って、窯のかたちにする。
叩いたり、押したりして立派で大きくて丈夫な釜を作る。

そこで少し休憩。ぼうっと腰を下ろして上を見上げる。
羽か、粉の塊のような雪が落ちてくるのをただ見る。
時々口を開けたりする。

仕事を再開。
雪を丸める。窯にいれる。
焼き上がったら、長いスコップでパンをすくう。
この瞬間が一番パン屋さんっぽくて心は盛り上がる。

窯に炭を焚べるので、
中くらいの太いスコップでつららを窯の横にいれる。
木の枝のつもりだ。木の枝のようなつららを折って集めて、薪にする。
つららはそうそう簡単に手に入らないので貴重だ。

せっせと焼く。
注文が殺到している。
丸めて、窯に入れて、長いスコップで焼き上がったパンをすくう。
時々炭になった(と思っている)つららの薪を掻き出す。
これをずっと無言で何度も繰り返す。

そのうちに飽きて帰る。
荷物をもって引き返す。道中で頭にあるのは、次のこと。
クリスマスにはケーキを焼かなければならないなあとか。

子供の頃の毎日の一人遊び。


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