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03.graduation ceremony
「さち! なにぼーっとしてんのっ」
休み時間に自分の席に座っていたら、突然声をかけられて肩を震わせた。覗きこんでくる友達に、慌てて言葉を返す。
「え、な、なんでもないよ」
「ふぅん? ね、ね。これよろしくー!」
そう言われて渡されたのは、可愛くポップな絵柄でうめつくされた、ノートの半分ほどの大きさの紙。
年が明けて、ひとりの女子が持ってきたことで一気にクラスに流行りだした、それはサイン
10.New YEAR
「明けましておめでとう」
「おめでとうございます」
朝方廊下ですれ違ったのでそんな挨拶をかわした。一応、形式だけ。
年が明けたからといってなんでもない。お互いテレビも見ないから、昨日が今日になる、それだけの話。
「あ、そうだ開闢」
けれど呼び止められたので一応は振り返る。
「なんだ」
「お年玉です」
渡されたのはポチ袋一つ。
「人を舐めてるのか」
子供扱いも大概にしろと。
09.virgin snow
白い雪と冷たい空気。
溶けていく私。
朝早く、郵便受けを開けて封筒のたぐいを取り出す。新聞はとってはいないから、習慣化された行動ではなく気まぐれだった。
書類の多くは視線を這わすだけでシュレッダーへとかける。
生きていくのに必要なものはそう数はない。なくして後悔するものなら、なおさら。
右から左へ流していたら一通だけ、目にとまった。丸みのない、生真面目な文字。リターンアドレスはない。
01. BEAUTIFUL SILENCE
昔のことを覚えているかと言われたら、そりゃあ覚えていることもあれば覚えていないこともある。数少ない覚えていることも、何年前かということがあやふやだったりする。現在地からの遠近感。それを測るのは海馬とは別の器官だと思うから、仕方のないことだ。
どれくらい前のことかはわからないけれど制服を着ていたんだからきっと高校生の頃、クラスメイトの女子が僕にこう言った。
「写真は嫌いだわ」
どうして、と社交