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小説「あんこを食べられない熟女」③

小説「あんこを食べられない熟女」③

刑務所は、テレビや映画で見たことある感じとは全然違って、やはり「百聞は一見に如かず」じゃ、と私はことわざ博士になった。 実際の刑務所は、直径1mくらいの丸い筒形の水槽で、深さは2mくらい。そこに青紫色の液体が満タンで入っている。何の液体なのかはわからないが、たぶんデンプンに反応したヨウ素液ではないかと思われる。デンプンに反応したヨウ素液以外に、この世に青紫色のものなど存在しない。 囚人は全裸にされ、その水槽に垂直に入れられる。深さが2mなので、ピョンピョン跳ね続ければギリ

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小説「あんこをたべられない熟女」①

小説「あんこをたべられない熟女」①

あんこを食べられない熟女に存在意義などあろうか?あるよ。あるに決まっているよ。何故、ない、と思ったのかな?でもわからなくはなくはないよね?私は何を言っているのだろうか?アレクサ、私の息の根を止めて。あ、タンマ!タンマ!アレクサ、タンマ!やっぱやめて!いや、やめなくてもいいんだけど、あの、方法を教えて!息の根を止めるとして、方法だけ教えて!ノーヒントで葬られるのは怖い!怖いよね?怖いよね?アレクサ、怖いよね?アレクサもノーヒントは怖いよね?アレクサ、自爆して!  と、脳内で大

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10.New YEAR

10.New YEAR

「明けましておめでとう」 「おめでとうございます」  朝方廊下ですれ違ったのでそんな挨拶をかわした。一応、形式だけ。  年が明けたからといってなんでもない。お互いテレビも見ないから、昨日が今日になる、それだけの話。 「あ、そうだ開闢」  けれど呼び止められたので一応は振り返る。 「なんだ」 「お年玉です」  渡されたのはポチ袋一つ。 「人を舐めてるのか」  子供扱いも大概にしろと。 「……とか言いながらうけとるんじゃないですか」 「もらえるものはもらっておく主義

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09.virgin snow

09.virgin snow

 白い雪と冷たい空気。  溶けていく私。  朝早く、郵便受けを開けて封筒のたぐいを取り出す。新聞はとってはいないから、習慣化された行動ではなく気まぐれだった。  書類の多くは視線を這わすだけでシュレッダーへとかける。  生きていくのに必要なものはそう数はない。なくして後悔するものなら、なおさら。  右から左へ流していたら一通だけ、目にとまった。丸みのない、生真面目な文字。リターンアドレスはない。  既視感があったわけではないのに、敬称略で平田開闢に手紙を送りつけるような輩は

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01. BEAUTIFUL SILENCE

01. BEAUTIFUL SILENCE

 昔のことを覚えているかと言われたら、そりゃあ覚えていることもあれば覚えていないこともある。数少ない覚えていることも、何年前かということがあやふやだったりする。現在地からの遠近感。それを測るのは海馬とは別の器官だと思うから、仕方のないことだ。  どれくらい前のことかはわからないけれど制服を着ていたんだからきっと高校生の頃、クラスメイトの女子が僕にこう言った。 「写真は嫌いだわ」  どうして、と社交辞令で僕は尋ねた。僕の指は一眼レフのカメラをいじっていて、その時撮ったファインダ

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