(29)夫の挑戦。断薬6日目〜9日目。やっぱり出たか、離脱症状。

イライラしたり落ち込んだり、頭痛や吐き気がしたり、そんな断薬による離脱症状は2週間から1か月続く人もいるらしい。
夫の断薬チャレンジは、確かにイライラしてる時はあれど、比較的、順調に見えていた。
しかし、弾薬6日目以降、離脱症状が強くなった。

断薬6日目。木曜の朝。
寝起きや日中はそんなに問題ないように見えたが、夕方、パーソナルトレーニングから戻ってきた時から、様子が変わった。
言葉数が減り、表情は硬く、何とか自分で苛立ちを落ち着かせようと奮闘し、感情を抑え込もうとしているような、そんな不安定な様子だった。

息子を寝かしつけ、一緒に夕飯を食べようとリビングに向かったら、夫がUBER EATSでたこ焼きを頼み、ひとりで食べていた。
もうおかずは作ってあり、温めるだけで食べれることは夫にも伝えていたが、「お腹空いたから」とだけ言い、こちらに目をやることもなく、不機嫌そうにスマホを見ながらたこ焼きをつまみ続けた。

夫の身勝手な行動で、せっかく作ったご飯が無駄になってしまうと、普通は夫婦喧嘩の要因になったりするものだと思うが、ここで文句を言っても火に油を注ぐだけだし、夫はイライラの感情を抑えることに必死で、空腹という他の欲求まで抑えることはできない状態なのだと思ったから、特に文句は言わずに「トレーニングの後だし、鶏肉のおかずだけ食べる?」と提案してみた。

温めている間、夫は「イライラが止まらない。もうだめかな、薬やっぱり飲もうかな」と言っていた。
いよいよ限界か?と思ったが、温めたおかずを出し、食べ終わると、夫はそのままソファーで寝てしまった。
起こして寝室に一緒に行ったが、結局、薬は飲まずに断薬を続けた。
目を瞑りながらイライラの原因を考えてみた。断薬してから初めてのトレーニングだったし、疲労感がイライラの引き金になったのかな。明日はどんな様子で目覚めるのだろうか。

断薬7日目。金曜の朝。
断薬を初めて1週間が経った。今日は夫の提案で、前々から調整をし、有休を取って夫婦水入らずで外出しようと話していたのだが、夫の機嫌は朝からあまり良くなかった。

午前中は夫の仕事の都合がつかず、私は買い出しをしたり、軽く仕事をしたりしてバタバタ過ごしながら、予定通り出かける方がいいのか、家でゆっくりしていた方がいいのか分からず、悩んでいた。

夫に「出かけて大丈夫?」と聞いたら「大丈夫」と答えたので、正直、あまり気乗りはしなかったが、家で何もせずに過ごしたら何もできなかったっていうイライラになりそうだけど、少しでも外出すればそのイライラは発生しないと考え、夫に「タクシーで行けばお酒も飲めるし、あそこならレストランもショップもそろってるから歩き回る必要ないからあそこにいこ?」と行先の提案をして身支度をした。

目的地に到着した頃、夫の機嫌は少しだけ良くなっていたが、散財の気配がするなと思った。
案の定、子連れではなかなか入りにくいカウンターの天ぷら屋さんに入り、贅沢なコースを頼むことになった。食べ終わると夫の機嫌はまた少し良くなっていたが、散財は止まらなかった。
ただ、奮闘した3か月の間でもそうだったが、夫婦デートの時の夫は何となく嬉しそうに見える気がした。

断薬8日目。土曜の朝。
朝一でトレーニングの予定があったので、夫は自ら起きてきた。機嫌は良く、身支度をしていたが、トレーナーの体調不良でドタキャンになってしまった。イライラするかと思いきや、「トレーニングなくなったからゆっくりしよー。お昼頃、買い物いこうか?」と上機嫌だった。
疲れはイライラの引き金になりかねないし、中止になって内心ほっとしながら「うん!」と答えた。
運転中、少しイライラし始め、はしゃぐ息子に「うるせー」と言っていたが、ランチも買い物も済ませて帰宅し、息子の昼寝に合わせて皆で昼寝をした。

断薬9日目。日曜の朝。大爆発の日。
数か月ぶりに夫が私の趣味に付き合ってくれることになった。
何度か「大丈夫?いいの?」と確認はしたが、「いいよいいよ、その間、久しぶりに息子を水族館にでも連れて行くから」というので、甘えることにした。
私は久しぶりの趣味に没頭した。でもどこか心の底から楽しめない自分がいた。本当は、まだ何時間も続けたいが、夫の様子が不安で仕方なく、1時間半で切り上げた。
息子は久しぶりの水族館におおはしゃぎで大変だったらしいが、夫は普通に会話ができるくらいには機嫌が良かった。
ただ、「平日休み取れたら、おれも久々に一緒にやろうかなー。でもなかなか平日休み取れないからな。週末は保育園ないから息子いるし。息子、お荷物なんだよなー」という夫の言葉の最後が引っかかった。お荷物?!

ランチを済ませて帰宅し、持ち帰った荷物をトランクルームに運んだ時、夫は大爆発した。
荷物がトランクルームに入らなかったのだ。
入ると思い、ちゃんとサイズを測っていなかった私のせいだが、夫のイライラは頂点に達し、ブチ切れた。
仕方なく部屋に運んだが、ちゃんと置けば邪魔にならずに置ける所はあるから、「私がやるから貸して」というと、「非力なのに何言ってんだよ、触るなよ!お前は息子でも見てろ!!」と声を荒げて怒鳴った。
引っ越しも私1人でやって、重労働もさんざんやってるのに何が非力だよと思ったが、もうこうなったら手が付けられないので、リビングに行き、息子の相手をした。
夫の部屋からは、夫の叫び声と恐らく物にあたってるだろう騒音が聞こえた。

しばらくすると、物凄い足音を立てながら夫がリビングに来た。
ドカっとソファーに座り、スマホを見ながら夫が話し始めた。

「おまえ、どうしたいの?俺のこと何だと思ってるわけ?こうやっていつもしわ寄せ食らってるのは俺じゃん!何なんだよ!!体調悪いの知ってるのに気遣うとかないわけ?息子ばっかりで俺はアッシーかよ!!ふざけんなよ!!!どうしたいんだよ!!!!!!!」

夫はどんどんエスカレートし、こたつを足蹴りして、クッションを投げ飛ばした。
息子はきょとんとし、抱きついてきた。
私は「アッシーなんて思ってないし、今日は私に付き合ってくれて本当に感謝してる。体調は比較的落ち着いてるように見えたから気遣いが足りなくなってたかもしれない。ごめんね。私が望んでるのは1つだけ。あなたが心身ともに安定して、家族として平穏に過ごすことだけだよ」と答えた。

涙は出ずとも泣きそうな顔をしながら、夫はこぶしを何度もソファーにぶつけ、「は?おまえひとりでやってみろよ!俺はこんなに稼いでるのに。ふざけたこと言ってんじゃねーよ。下らねー、レベルの低い仕事しかしてないくせに忙しいとかほざきやがって!!お前は雇われたことしかないからわからねーんだよ!俺は何なんだよ!俺だってこんなに働きたいわけじゃねーよ!!おれはいつ休めるんだよ!!!いつも息子息子。1人の時間なんて全然ねーんだよ!!!死にてーよ!!!殺してくれよ!!!」と続けた。

否定したり咎めたりアドバイスしたりするよりも、こういう時は気持ちに寄り添って相槌を打ったりする方がいいというが、そんな間もなく、間髪入れずに夫の叫びが溢れ出てきた。

全て吐き出した後、私は何も言葉が出なかった。
こういう時、もっと気が利いた言葉が出ればいいのに、もっと頭の回転早ければいいのにと悔やんだ。

しばらく無言でいると夫は「言いたいことないの?もういい?後から蒸し返されるの嫌だからな」と言うので、私は「私の趣味はもういいから、週末は息子を連れて出かけるようにするから、あなたは1人の時間を作って」と答えた。これが正解なのか、その時はわからなかった。

夫は「片付けてくる」と言って立ち上がり、部屋の片づけに行った。
夫は、夕方から1本、対面での打ち合わせがあって出かける予定だったので、私は、荒らされたリビングを片付け、息子を連れて散歩に出た。

ゆっくり歩きたかったから、息子をベビーカーに乗せて適当に歩いた。さっき見せてしまった怖いパパの姿を忘れ去ってくれることを願いながら。
息子の好きなバスを見たり、消防車を見たりしながら1時間ほど歩き、夕飯の買い物をして帰宅した。

息子に夕飯を食べさせ、夫の夕飯も作って帰りを待った。
夫は、息子に服を買って帰宅した。
お風呂に3人で入り、私が息子を寝かしつけてる間、夫は買ってきた息子の服に息子の好きなものをペイントしていた。
夕飯を一緒に食べて片付け、洗濯も済まし、私もソファーに座ると、いつものような平和な夫婦の時間が訪れた。

夫のイライラは、離脱症状のせいで少しきつくなっているのもあるかもしれないが、離脱症状のあるなしに関わらず、短気はもともとの性質。
そして、イライラの引き金は、疲労感やちょっとした想定外の出来事や、日常にあふれている物事。
それらを全て先回りして取り除くのは不可能だし、イライラや被害妄想は、まだまだ付き合っていかないといけないことなんだろう。

ただ、改めて気づいたことがある。
夫は、息子にヤキモチを焼いているのかもしれない。
自分が親から与えられなかった愛情をたっぷり注がれる息子が、もちろん可愛いと思う反面、同性であるが故に、嫉妬の対象となっているのかなと思った。
息子をお荷物と言ったり、2歳だからって甘やかさずにもっと怒れと言ってきたりするのは、そんな感情からなのではないかなと思った。

そして、夫婦デートの時は機嫌が良く、夫婦の時間を作る提案には前向きで受け入れるのは、もっともっと夫婦水入らずの時間を過ごしたい、息子ではなく自分を優先してほしいという甘えなのかなと。

とはいえ、2歳の息子はまだまだ手がかかるし、それを息子を優先してるって捉えられてもどうしようもない。
もっと夫婦の時間を作るにしても、コロナでシッターはお休み中だし、実家は遠い。
今、私に何ができるのだろうか…。

解決になるか分からないけど、最近よく「運転しろ」って言われるから、ペーパードライバー講習受けてみるか。
確かにどこに出かけるにも運転は夫だし、疲れたりお酒を飲んだりしたら運転代わるよと言ってあげられないのは心苦しさもある。
夫の愛車は貸してくれないだろうから、カーシェアの車とかで講習受けて、まずは運転に対する恐怖心を払拭しよう。


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