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動画クリエイター事務所から、社会問題を解決する「クリエイティブエージェンシー」へ。UUUMがCI刷新で目指す新たな姿

多くの人気動画クリエイターが所属し、YouTube業界やインフルエンサーマーケティングの先駆者として市場を切り開いてきたUUUM。創業10年となる2023年に大きな転換期を迎えるにあたり、一年以上の時間をかけて準備を重ねた上で、これまで掲げてきた経営理念やパーパスからロゴ、コーポレートサイトのデザインに至るまでを全面刷新しました。

目まぐるしく変化する動画・SNS時代に、UUUMはどのように自らを変革し、どんなメッセージを社会に伝えていきたいのか。今回のコーポレートアイデンティティー(CI)刷新の背景にある思いや戦略について、UUUMの梅景匡之社長やメンバーと、CI刷新を手がけたBees&Honeyのディレクター陣が対談しました。

【課題】
創業から10年が経ちクリエイターを取り巻く環境が大きく変化する中で、社会の中で目指すべき会社のあり方や役割を再定義し、その指針を社員やクリエイター、社外のステークホルダーに浸透させたい。
【B&Hのブランディング】
・戦略立案:ブランドコンサルティング、経営理念・パーパスの策定
・デザイン:コーポレートサイトのリニューアル、ロゴの刷新、オリジナルキャラクターの制作、モーションロゴ作成、社員向けカルチャーブックや名刺の制作

対談メンバー
UUUM株式会社
代表取締役社長・梅景匡之さん、CCO・丹羽貴紫さん、社長室室長・鈴木義之さん
BEES&HONEY株式会社
代表取締役社長・今村玄紀、ディレクター・伊藤澪奈子、アートディレクター・長尾佳歩

「UUUMとは何者なのか?」を起点に、未来の姿を再定義する

POINT:「ブランドスプリント」によるコンサルティング
B&Hは「ブランドスプリント」という独自のワークショップを実施。UUUMの事業や組織の文化・習慣から、経営者の思想・哲学に至るまで仔細にヒアリングした上で、現在の企業の人格を言語化し、目指すべき企業のあり方とブランディングの戦略を提案した。

梅景さん:ちょうど創業から10周年というタイミングで次のフェーズに入っていく中、当初の経営理念を掲げたときからは市場や環境も変わってきました。次の10年、20年を見据えたとき、社内外に対して新しいメッセージを発信していく必要を感じていました。

B&Hさんには創業当初からの経営理念の「セカイにコドモゴコロを」や経営戦略の「もっとアソビナカマを」などの理念策定、ロゴなど含めたCI制作でお世話になった背景がありました。会社の歴史もよく知っているので、この10年の流れを一緒に振り返りながら新しいものを生み出していけるのではないかと思い、今回コーポレートアイデンティティーの刷新をご相談しました。 プロジェクトは一年以上前から始まったもので、一緒に長い時間をかけて考えてきました。

10年、20年後を見据えた目指すべき姿を考えるにあたって、まずB&Hさんに、「UUUMとは何者なのか?」というところの分解からしていただいたのがとてもよかったです。一つ一つかなり細かく事業を分解していきながら、自分たちの「強み」としているものが何なのかを再認識するところから始めて、その上で今後どうなっていきたいかを考えていきました。 

経営理念や新しいことを決めるときって、先に「どうなりたいか?」という話になりがちですよね。でも逆に今までやってきたことや現状を把握するところから話が始まっていったので、それを聞いたことによって当初思っていた理念の考え方と少し変わりました。僕らのことを歴史までしっかり飲み込んでくれた上でご提案いただいたのですごくよかったと思いますし、新たなメッセージをこれまでの10年間の土台の上にしっかり作っていくことができたと思います。

クリエイター支援から、「クリエイティブエージェンシー」へ

POINT:「ブランドプロトタイプ」の戦略立案
UUUMがこれまで「クリエイターファースト」を掲げてインフルエンサーとしての価値向上やマネタイズに尽力してきた「専門家集団」であると定義。データ分析やプラットフォームの知識に留まらず、インフルエンサーのコンテクストを考慮したストーリーを企画できることを強みとして見出した。 

その上で目指すべき企業像を、①協力的・献身的でありながらも挑戦する姿勢をもつ業界を牽引する専門集団②所属する意味や、社会貢献・存在意義を伝えていける企業へ生まれ変わっていく③新しいことに挑戦していく、冒険ができる社内文化へ、と設定した。

今村:僕は元々UUUMさんが原宿に会社があって、社員がまだ20人くらいのときから知っていたので。イメージはあまり昔と変わっていないのですが、組織が本当に大きくなって、そこでもう一度声をかけていただいたのは光栄でしたね。

UUUMさんは今までクリエイターが主導で「クリエイターを支える」というしくみの部分が大きかったのですが、目指すべき姿としてはこれを変えていき、「全員が作り手になる」というところが大きな戦略の方向性になりました。いわゆる「クリエイティブエージェンシー」として、企画やコンテクストを含めてストーリーを設計できるという面を強調していくこと。そして会社が大きくなっていく中で、いつまでも若々しく無邪気なイメージから、社会に貢献している大人の企業としての「社会性」を意識していく方向性を目指していくべきだとご提案しました。

梅景さん:おっしゃる通り、これまでのUUUMはクリエイターをサポートする側面が強かったです。もちろん引き続きクリエイターを支援していくことには変わりませんが、これまでの経営理念「世界にコドモゴコロを」の要素は残しつつ、新しいメッセージを付け加えていくことが必要だと思っていました。創業当時から環境も変わり、インフルエンサーやYouTuberの誹謗中傷などさまざまな問題が出てきています。この業界の中でずっとやっている会社としてそういった問題に対処していくノウハウを提供しつつ、社会からもちゃんと認められる「社会性」を持ったメッセージを追求しました。 

「想いの熱量でセカイを切り開く」に込めた、新たな企業像

POINT:経営理念・パーパスの刷新
戦略に基づき、UUUMの新たな経営理念を「想いの熱量でセカイを切り開く」に刷新。 新たなパーパスを「情熱をもって好きなことや実現したいことに取り組む人たちと共に、テクノロジーとプロデュースの力で、日々新たなコンテンツを創り続け、社会課題を解決する為の良質なエコシステムを形成する」と定めた。

梅景さん:この10年を振り返ると、元々「動画クリエイター」と言われる人たちがほとんどいないところから始まって、彼らクリエイターの熱量とそれを支えようとしてた社員たちが市場を作ってきたと思っていますし、それによって会社も成長できたと思っています。今一度その初心にかえって一番大事な根っこの部分を大事にしたいという思いを、社員も、社外のステークホルダーの皆さんとも共有したい。その熱量を持った人たちと一緒に仕事をし、いいものを作っていきたい、という思いを込めています。 
 
鈴木さん:やはり僕らが今まで市場を切り開いてきたり、動画クリエイターがクリエイターという立ち位置を獲得できたりしたのは、クリエイター自身や我々の熱量があってのところだと思います。その意味でこの新しい経営理念には、私自身も非常に共感しています。これからこの新しい経営理念を持ってしっかりこの会社の中に浸透させていきたいなという思いです。 

丹羽さん:僕は新しい経営理念やパーパスを知ったのが、なんと入社した日だったんです(※2023年6月にCCOとして参画)。最初は会社のことがわからなかったのですが、「社会問題を解決するためのシステムを作る」という新しいメッセージを見て、会社の現状と、これから5年、10年先に目指していきたい姿を同時に理解していった形でした。インフルエンサービジネスや動画クリエイターのビジネスが誹謗中傷やリテラシーの問題などに直面している中で、これから社会とどう接着していくか、という意味が含められた言葉だったので、色々な人が長くこの会社に関わることがイメージしやすいメッセージだと感じました。

梅景さん:例えばコロナ禍で緊急事態宣言が出たとき、うちのクリエイターが東京都との取り組みの中で「ソーシャルディスタンス」を啓蒙していくような発信をしました。10年やっていく中で、特に若い人を中心に、所属クリエイターの動画を見ることで「救われた」「元気が出た」というメッセージをもらうことも多くありました。そういった会社が実際にやっていることを知ってもらったり、バッシングに取り組んでいく姿勢を見せていったりすることがこれからますます大事になると思っています。

今村:発信力が強くなってきている分、より言葉に責任が生まれるようになってきて、誹謗中傷などを含めて「倫理」の指針を示さなければいけないフェーズになってきていると思います。SNSが出てきて監視されるような環境になってきている中で、発言力の強いUUUMさんのクリエイターも、いいことをすることで若い人たちがそれを見て影響を受けていく。そういった「社会性」を強く意識すべき段階になっているのかなと思います。

緊急事態宣言の中、東京都のSNSでUUUMのクリエイターたちが「Stay Home」や「ソーシャルディスタンス」を呼びかけた

「遊び心」と「社会性」を同時に表現したビジュアルの刷新

POINT:コーポレートサイト・ロゴ・オリジナルキャラクターの制作
新しい経営理念・パーパスを元にして、ビジュアル面を一新した。デザインの哲学として、20世紀の英米で発展した大衆文化から生まれた芸術運動「ポップアート」を一貫してコンセプトとして採用。ロゴやコーポレートサイトを刷新し、新たなロゴをモチーフにしたオリジナルキャラクターも制作した。

梅景さん:コーポレートサイトをはじめ新しいデザインには、落ち着いた感じの中にも「遊び心」や「ワクワクするようなこと」が形として表現されているのがいいですよね。やはりそれを忘れないでいきたい。新しいロゴも丸みが出て、優しくて柔らかい感じが出ているので、その中にキャラクターがいるのもすごく合っていると思います。僕らが実現したい「遊び心」の部分がうまく表現されているので、とてもいいリニューアルになったと思います。

鈴木さん:僕としても新しいサイトや様々なデザインを通じて、これから進んでいく新しいUUUMの姿が、色々なクリエイティブの中に表現されてるなと思っていて。 サイト自体も「大人の部分」と遊び心ある「子供の部分」がしっかり両立されているようなデザインになっていると思いますし、見える形で表現されてるなと感じています。色々と無茶なお願いをしてしまった部分もありましたが、柔軟にクオリティー高く進めていただいたことに大変感謝しています。

実はコーポレートサイトには、弊社の社員も制作に参加した部分があります。Webチームは実装面で協力して大変な作業を頑張ってくれましたし、所属クリエイターや制作作品が登場するトップページのリール動画も、今回弊社のクリエイティブチームが制作したものです。そういった側面からも今回、UUUMが社員も含めて全員がクリエイターの「クリエイティブエージェンシー」であるということを示す、その一歩を踏み出せたのではないかと思います。

伊藤:UUUMさんの「遊び心」と、コーポレートサイトとしての「社会貢献」の姿を打ち出すというバランス感は、長尾も私もかなり考えながら挑んだ部分でした。全体としては社会貢献を含めた大人な感じのコーポレートサイトの印象を持たせつつ、その中に少しずつ遊び心をどう取り入れるか。イラストやキャラクターなどかなり試行錯誤して、バランス感を見ながら考えていきました。キャラクターを作ることも、弊社として大きな挑戦でしたね。

長尾:UUUMさんが「全員がクリエイター」としてクリエイティブを作っていく「クリエイティブエージェンシー」を目指すという戦略になり、それをどう表現するのがいいのかな?と考えました。そこでロゴの「UUUM」という文字をキャラクター化し、彼らを社員さんやクリエイターさんに見立てて表現するのがぴったりだと考え、制作しました。

アートディレクターとしては、今回のアート面の全体の美意識として「ポップアート」というコンセプトのもと制作しています。これはイギリスから始まりアメリカで劇的に発展した大衆文化「ポップカルチャー」に由来する、大量生産されたモチーフをアートとして表現することにより生まれた芸術運動です。キャラクター文化もそこから生まれているものなので、今回キャラクターを作ったことはデザイン面でのコンセプトとも強く紐づいていたものになっていると感じます。

丹羽さん:「ポップアート」というコンセプトがぴったりだと思いました。提案を聞いたとき、「そうだよね、YouTubeって間違いなくポップカルチャーだよね」と思ったんです。一昔前だと、YouTuberってちょっと軽く扱われていたと思うんですよ。だけどこのコンセプトがあることで、「いや、俺らがポップカルチャーを引っ張ってるから!」 って、みんなが自信を持てる指針になるのかなって思うんです。

CI刷新という「決意表明」を、社内外に浸透させるために

POINT:資産になるクリエイティブ制作
一時的な話題を呼ぶだけのものではなく、企業が長く使っていける資産になるようなクリエイティブを多数制作。経営理念やパーパス、ロゴやキャラクターの他にも、サウンド付きのモーションロゴなど長期的に幅広く活用・応用できる素材を制作し、名刺やカルチャーブックなどの社内向けのデザインも提供した。

丹羽:トップが変わったり、買収されたり、本当に色んなことがあったじゃないですか。 そこに対して、今回のコーポレートアイデンティティー刷新を通じて明確に答えを「うちはこうですよ」と出すことができた。会社の構造が変わることも含めて戸惑っている社員もいるかもしれませんが、CI刷新は会社として本当にいいタイミングで、会社として「うちはこれをやる会社です」という答えをみんなに知らせることができたんじゃないかと思います。

鈴木さん:これからが大事ですよね。今回のWebサイトや経営理念の刷新は、決意表明が表現されたもの。この先としてはまず、いかにこれがハリボテにならないように体現していくかが問われると思います。「社会課題を解決する」という指針は今までの僕らから一つランクアップするものであるとも思っているので、クリエイターの発信力や僕らの立ち位置ができた上で、エンタメと同時に「社会の問題を解決していく」という姿勢をしっかり体現できるようにしていきたいと思います。

梅景さん:会社が大きくなって社員が20人くらいの頃とはよくも悪くも変わってきていますが、僕らはやはりずっと挑戦者だし、市場を作っていくということも現在進行中です。社員一人ひとりやクリエイター、ステークホルダーの皆さん含めて、そういった熱意とマインドを持った人たちの集団にしたい。それが結果として「クリエイティブエージェンシー」としてものを作るということに繋がっていくと思います。その意味で今回のCI刷新もそうですし、CCOとして丹羽さんが入社したのも象徴的なタイミングだったと思います。

丹羽さん:僕が入ることで、クリエイティブの技術面の向上という面ももちろん力になれるとは思いますが、それよりも会社の人たちみんなが「作る」とか「アイデアを出す」とかいうところを楽しくできるようになれたら。元々UUUMに入る人はそういう人が多いですからね。

伊藤:今回一緒にパーパスを考えさせていただいて、UUUMさんという会社をゆっくり自分の中に浸透させながら進めていくことができました。今後「クリエイティブエージェンシー」を目指すとなると、社員さん、クリエイターさん、視聴者、ステークホルダーなど関わる方がとても多く、目まぐるしいYouTube業界の変化の中で、今後UUUMさん自身も大きく変わっていくだろうという思いがありました。

そうした中で今回私たちが制作したものとしては、経営理念やパーパス、キャラクター、リール動画、モーションロゴなど、汎用性が高いものを提案させていただいています。なので「作って終わり」ではなく、今回私たちが作ったものをツールとして色々活用していただきながら、社内への浸透や採用面などに色々使っていただけたらと思っています。これからのUUUMさんの変化を我々も楽しみにしています。
 
長尾:UUUMさんが今度クリエイティブ面にどんどん注力されていくであろう中で、「今後も使っていけるクリエイティブ」を意識した提案を色々とさせていただきました。動画コンテンツをメインに発信されているUUUMさんだからこそできるクリエイティブ訴求を考えたときに、ただのモーションロゴではなく「サウンドロゴ」も制作したり、キャラクターもデザインしたり。今後御社のクリエイティブを高めていけるものを、という思いで制作させていただきました。

ーー対談の最後に、UUUMの皆さんに今後の展望を聞くと...

丹羽さん:キャラクターのキーホルダーを作りたいという話はありますね。
鈴木さん:これは多分みんな欲しい。梅景さん、どうですか?
梅景さん:欲しい......
鈴木さん:いや、キーホルダーの話ではなく(笑)
梅景さん:(笑)。今回のCI刷新は、僕らが明確に出した「どういう人たちと仕事したいか」というメッセージでもあると思います。採用や人材育成、会社の文化などさまざまな面で、より理念に共感できる人たちと会社を作っていきたいですし、会社としてもこれからその姿勢をしっかり示さないといけないと思っています。


UUUMの皆さん、ありがとうございました。プロジェクトの詳細はB&Hの「Project」で公開しています。B&Hによるコーポレートアイデンティティーの刷新やリブランディングにご興味のある方は、下記よりお問い合わせ下さい。
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今回のUUUMさんのCI刷新プロジェクトについて振り返る、B&Hのディレクター・伊藤とアートディレクター・長尾の対談はこちら