ソングバードは唄っている

ベルギースタイルの素晴らしいビールを求めて

 木更津のブリュワリー『ソングバード』さんへ行ってきた。

ここ最近、都内のボトルショップでソングバード定番の「BLONDE」や「WHEAT」を飲む機会があり、そのベルギースタイルの味に強烈に魅了され、自分がブリュワリーをやるときはこういったビールをつくりたいと思っていた。自分がこだわりたい「おかわりしたくなるビール」を造られているブリュワリーを求めて木更津を訪れた。

ブリュワリーへの道程は小旅行のよう

 ソングバードへの行き方を調べてみると、電車よりもバスの方が時間的にも早くつきそうだ。渋谷から木更津に向かうバスが1時間に一本ほど出ており、90分ほどの乗車で到着予定ということもあり、今回はバスで向かうことにした。まだ5月下旬だというのに30℃を超える真夏日になり、バスから東京湾を眺める景色、アクアラインを渡る景色もよく、あっという間に木更津に到着した。

 ソングバードは木更津駅から久留里線に乗って2駅の上総清川駅にある。東京から一時間ちょっとの場所にワンマンで単線列車とは、少し不思議な気分だが、小旅行気分が味わえてなかなか楽しい。地元の高校生でいっぱいのローカル列車に揺られ、上総清川駅に到着する。

おだやかな土地、ゆるやかな時間のなかでたのしむビール

 上総清川駅から5分ちょっと歩いたところにソングバードはあった。小さなブリューパブにはすでに常連さんと思われる方々でいっぱい。ソングバードのご夫婦に2人の子どもたちもいて、おだやかな土地でゆるやかな時間が流れている。僕たちは外に即席のテーブルを用意してもらい、さっそく定番のビール「BLONDE(ブロンド)」をいただいた。

 瓶の「BLONDE」はなんどか飲んだことがあったけれど、この生の「BLONDE」はまた格別の美味しさ。スムースな飲み口とブロンドらしい華やかさ。開栓して2週間ほどたっているとおっしゃっていたが、おどろくほどフレッシュな味わい。アルコール度数が5%とブロンドスタイルのビールとしては比較的低アルコールであることも、このビールのフレッシュさが際立っている理由かもしれない。まさにおかわりしたくなるビールだ。

 またこの生と瓶の味わいのちがいこそ、ベルギービールのおもしろさであり、魅力だと再確認する。どちらが良い、ではなく瓶内発酵をしたビールもまたちがった味わいをたのしむことができる。

 「BLONDE」をあっという間に飲み終え、つぎのビールをいただく。生ではなく、瓶ビールが飲みたい気分。そしてせっかくであれば飲んだことのないビールをと選んだのは「Brett Table Beer(ブレットテーブルビア)」。この木更津の野生酵母をつかったビールには心地よい酸味がある。写真のとおり、非常によく発泡しており、華やかさがより強調されている。Table Beerの名の通り、食事中でもいつも置いておきたくなるようなビールだ。

 「Brett」のつぎにいただいたのは、ベルジャントリペルスタイルの「MODERNE(モデルネ)」。何度かボトルで飲んだことがあったが、このビールほど瓶のちがいを味わえるビールはないかもしれない。同じ瓶詰めされたビールでも瓶内発酵の状態によって、印象がおどろくほど異なる。瓶詰めされた状態でもこちらの方が比較的日が浅いのか、都内のボトルショップで飲んだときよりも、フレッシュでトリペル独特のスパイスと酸味を感じることができる。アルコール度数は8%と高めだが、それを感じさせないほど、さわやかな飲み口ですらすらと進む。

 写真を撮り忘れてしまったが、最後にベルジャンポーターの「GIONO(ジオノ)」の生もいただいた。ポーターというと焦がしたモルトから生まれる独特の風味や色の印象からくる重さを感じる人も多いと思うが、むしろ軽さを感じるビール。生で飲むからこそ、味わえる魅力だと思う。

ソングバードはまさしく気持ちよくうたう小鳥のよう

 約2時間ほどのんびりとビールとオーナーおふたりとの会話をたのしんで帰路へ。東京からわずか1時間ちょっとのこの場所には、豊かな自然があふれ、おだやかな時間の流れていた。ソングバードのビールに通ずるフレッシュさとやさしいビールの飲み口は、オーナーのお人柄とこの土地だからこそ生まれる特徴なのだろう。

 巷ではつよい個性や印象を持たせるために、必要以上にホッピーなビールも増えてきているように感じる。それもひとつのトレンドだと理解しているつもりだが、ソングバードのようにその土地の魅力を十分に活かし、ベーシックと変化を織り交ぜたビールはきっと何年経っても、いや、時間が経てば経つほどに、愛されるビールになるんだろうと思う。


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