見出し画像

【essay】 27歳という数字の曲がり角

私はもうとっくに27歳の時期は過ぎてしまった。
過ぎてしまったから、今からあれこれ考えてもしょうがないのであるが、
講談社から出版されている『わたしたちが27歳だったころ』という本を読んでいると、自分が27歳だったころのことをどうしても思い出してしまう。
『25歳はお肌の曲がり角』という化粧品メーカーのコピーが世の中の25歳前後の女性たちをヒヤヒヤさせていた時期があったり、『29歳のクリスマス』というドラマを「うん、うん、わかるわ〜」と頷きながら女性たちはテレビ画面を見つめた時期があったりと、どうも20代後半というのは、何らかの覚悟と曲がり角を強いられていたように思う。
そして今は、『27歳は人生の曲がり角』らしいのだ。とても生きづらくてとても迷う年齢ということらしい。
そんなことを思いながら、さて私の27歳はどうだっかと遠い記憶を辿り寄せてみると、やはり波瀾万丈な日々を過ごしていたようである。

私は、22歳の時に就職で大阪から東京に移動した。
そして当時流行りであったイタリアンブランドを輸入販売する商社に勤め出したものの、そのブランドのデザインや質の良さなどまったくわかっていないであろう、お金だけ持ち合わせた若者がしゃにむに服やバックを買い漁るのを見ていてほとほと嫌気がさしていた。
そんな時、沸々と「また演劇がやりたい」と思い始め、その商社はたった3年ほどで辞めることになった。
その後、自分で劇団を立ち上げて活動することになるのだが、東京というところはやたらと劇団の数が多くて、なかなか太刀打ちできるものがない私は、頭を悩ましていた。
他の劇団と差をつけるためには新しい何かを…と思って、私は単独でニューヨークへ武者修行の旅に出た。
それがちょうど27歳の時だったのである。
英語も話せない、土地勘もない、知り合いなどまったくいない。
『日本のわけもわからぬ女がニューヨークの街に降り立ち、一体何ができるというのだ』と、周りの友人などはきっと思っていたであろう。
1日目はホテルに泊まり、次の日からアパート探しを始めて、その次の日から英会話スクールを探して、その次の日には演劇を学ぶ学校までたどり着いた。ビギナーズラックともいうべき数日間だったが、それからが地獄の日々であった。
アジア人だという理由で差別やイジメもあった。もちろんすべてがそんな人ばかりではなく、優しく接してくれた人もいるにはいたのだが、何かにつけて自分の意見を発っすることができない私に、「何も考えてない日本人」「バカな日本人」というレッテルが貼られる。
挫折した。
この人たちと対等に渡り歩いていくには何が必要なのかを考える日々が続いていた。
そして痩せた。
あれだけダイエットしても痩せなかった体が、日々の暮らしだけで痩せていった。
1年が過ぎようとしていた。そう私は28歳になっていた。
もう日本に帰ろうかと思い悩みながら、ある教会でぼんやりと椅子に座って考え事をしていたら、牧師が「どうしたの、何か悩み事でもあるの?」と、尋ねてきた。私は堰を切ったように牧師に悩みを打ち明けた。
牧師は言った。
「あなたが今私に言ったことをみんなに言えばいい。きっとうまくいくよ」
その日から何があっても自分の言いたいことを言った。
文句を言われたら文句を言い返した。
意地悪なことを言われたら、「そんなこと言われたって、私気にしないわ」と足を組んで言い返した。
反対に「あなたのそんなところダメだと思うわ。直した方がいいわよ」と相手に注意までした。
そこから周りの反応が変わっていった。
「あの日本人、なかなかやるじゃん」と言われるようになった。

今ならわかるが、それが曲がり角だったのだ。
あそこで日本に帰っていたら、きっと今もヘナチョコおばさんになっていただろう。「クソッタレ!来るならこいよ」と、大声で言って私は27歳の曲がり角(そんなもんがあるのならの話だが)を曲がり切ったのだと思う。
誰かが27歳になると30歳が見え隠れしてくる。30歳になることなんてどうってことないって今となってはわかるのだけど、やはりその場に立っている人は、自分はこのままでいいのか、もうちょっといい感じにならないのか、と思い悩む年齢なのかもしれない。
私は27歳で日本を出た。
それも「このままでいいのか、いや、このままではダメだ」という思いからだったが、アメリカに渡ってもその「このままでいいのか」は消えず、ずっとモヤモヤした27歳という年齢だった。
だからと言って、これから27歳を迎える方たちにアドバイスなどはない。
それぞれ立場も違えば、時代も違う。それに私が27歳の頃よりはるかに多岐にわたる選択肢が増えた。私のアドバイスなんて何の役にも立たない。
自分の好きなように生きればいいと思う。ただ、苦しい何かがあったら、それをぶち破るのは他の誰でもなく自分なのだと思ってさえいればいい。
そして、「27歳って…?」と考えるのは、私のようにずっとずっと後になってからでいいのだ。

thanks !!

この記事には、音声配信でも聴くことができます⬇️



読んでいただきありがとうございます。 書くこと、読むこと、考えること... これからも精進します。