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不水溶性な日常

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少しのこと、たくさんのこと、いっぱい考えたこと…についてのエッセイ。 あんなことやこんなことを誰かと共有できたらいいなと思っています。
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2020年12月の記事一覧

うどん屋のゆくえ

うどん屋のゆくえ

少し長い散歩をした。
ここ数年におけるこの街の変化が著しくて、こんなところにこんな店が...とか、あれここにあった店はなくなったのか...とか、変化を感じながら歩く。ほとんどがお洒落な店に変わっていて古くからやっていた店などは数えるほどしか残っていない。今はこの街のグルメ本が出るくらいに発展し賑わっているけれど、長年住んでいる者からすると思い出をちょっとずつ削り取られていくようで寂しくもある。過去

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忘却の潮時

忘却の潮時

母の形見の時計の金具が壊れた。時はちゃんと刻むが腕にはめることはできない。時を刻まない時計も役立たずだが、腕にはめれない腕時計も役立たずだ。誰のせいでもない。時間が経ちすぎたのだ。

これは「もうそろそろ母親の柵から離れなさい」という誰かからのメッセージだと思い、修理には出さないことにする。この時計はクローゼットの中の思い出箱に入れておこう。いつか時を刻むのもやめて静かに眠り続けることだろう。

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12月の喪失と解放

12月の喪失と解放

誰もが浮き足立つ12月に入った。すでに街にはクリスマスツリーが飾られ、クリスマスケーキの予約受付や「クリスマスプレゼントはもう用意されましたか?」というお節介なメールが知らないサイトからこれでもかとやってくる。こうなると浮き足立つなと言う方が難しい。

私は先日クリスマスケーキを予約した。

これは私にしてはとても珍しいことである。何でもかんでも斜めから見るという捻くれた性格の私はクリスマスは20

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