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自分ひとりくらい。の、落とし穴

ビートオブサクセス スタッフのババです。

チームビルディングが大切だと思うのは、所詮人ひとりの力でやれることなどたかが知れていると思っているからです。
そして、力をあわせて何かを成し遂げることが楽しいと知っているからです。だからこそ「ひとりの力」をないがしろにはできないということも充分感じています。


「ひとりの力」をないがしろにはできない

この原稿を書いたのは2022年6月22日。
ある自治体の区長選で「一票の重み」を感じさせる激戦があり、歴史的な区長交代劇が生まれた翌々日です。

ピンとくる方は、そこに住んでいる人かよほど選挙に興味のある人くらいだと思いますが・・・実はこの区長選は、今まで「どうせ選挙にいっても何も変わらない」と思っている人たちにこそ、注目して欲しかった選挙戦です。

2022年6月20日 正午少し前。
東京都杉並区に新区長が誕生しました。

杉並区は3期12年、ずっと同じ人物が区長を務めていました。その方が・・・という話ではなく、長期に渡る同一人物の政権というのは、よく言えば安定、悪く言えばマンネリ、そしてそれによる様々な弊害・・・
人材は入れ替えないと組織が硬直化する。

これは、企業にも当てはまるのではないでしょうか。

杉並区はそろそろ区長交代すべき時期にきていたと思います。
しかしながら、「今やってる人で大きな問題ないんだし(実際そうではない)、現区長に続投させたら? 続投でいいんじゃない」という空気もあったのです。
投票したいと思える、魅力的な対立候補がいなかったというのもあります。

ところが、今回、若くはつらつとした女性区長候補者が現れました。それが、岸本さとこさんです。

この方は、4月に日本から帰国したばかり。
オランダのアムステルダムに本拠地がある政策研究所の研究員。
欧州の民営化された水道局を再公営化を進める活動を行っていたそうです。

一体、こんな人がいつ、どこから?! びっくりしました。

岸本さんは、自転車で区内を走り回り、自分の言葉で訴えました。
そして、自分が話すだけでなく「区民の話」を道路に座って聞きました。
そんな様子が、YouTubeやTwitterで流れました。
幸運にも、私はそこに住んでいて、リアルタイムで感じることができました。
当事者として一票を投じることができました。

開票は即日ではなく、投票日の翌日朝8時40分からスタート。
30分おきの開票速報は、現職とその女性候補が常に「同票」で推移しました。
大接戦です。

そして、結果は・・・187票差という僅差で、新たな区長が選ばれたのです。
たったの187票差。
まさに一票が左右する。そんな選挙結果だったのです。

一言でいえば、「面白かった」それに尽きます。

私自身、「選挙に行こう。あなたの一票が政治を変える」と、言われても実感はわきませんでした。何より自分が「どうせ私の一票なんてあってもなくても」と思っていたクチでした。

多勢に無勢。
ごまめの歯ぎしり。

そんな言葉とともに、変えられない現実を受け流すことが、スマートだと思っていました。
政治について熱くなるなんて、周りの人もドン引きするし。

でも、「多勢」なんて人はいないんです。
それを構成しているのは「ひとり」「ひとり」なんです。
一人の行動が、結果を生み出す・・・

今回の杉並区長選でそれを目の当たりにした気がしました。
一人一人の行動が、12年の長期政権をひっくり返したのです。新区長になったからといって何もかもがよくなるとは限りません。
でも、そこには「変えたい」という個人の思いが、投票という行動につながり、区長交代という結果を生み出したと思うのです。

「自分ひとりくらいは」が思わぬ結果を生み出す。

それを面白く表現している絵本を1冊ご紹介したいと思います。

『世界でいちばんやかましい音』
 作:ベンジャミン・エルキン
 絵:太田 大八
 訳:松岡 享子

2022年1月に亡くなられた児童文学作家の松岡享子さんの翻訳です

やかまし好きのギャオギャオ王子は、自分の誕生日に「世界でいちばんやかましい音」を聞きたいといいます。そこで、世界中に伝令が飛ばされ、ギャオギャオ王子の誕生日、〇時〇分に、世界中の人が一斉に「お誕生日おめでとう」と叫ぶことになりました。
伝令を受け取った国の人たちはみな、協力するよ!と言いました。

世界中の人たちが一丸となって「やかましい音」を生み出すという、一大プロジェクトです。

果たしてこのプロジェクトは無事に成功するのでしょうか?

これは別に絵本紹介記事ではないので、ネタバレします。

もし、「いや、絵本を読む前に知りたくない」という方はここから先は読まないでください!
いいですか?
いきますよ。

このプロジェクトは・・・

失敗します(笑)

ギャオギャオ国からの伝令を受け取った人たちは、思います。
「世界でいちばんやかましい音って、どんな音だろう・・・」

そして思うのです。
自分も聞いてみたいな。と。

そして、こうも思うのです。
こんなにたくさんの人がいるんだから、自分ひとりくらい叫ばなくても影響がないだろう。隣の国でも、その隣の国でも・・・そう思う人は増えていきました。

「私ひとりくらい叫ばなくても影響はないだろう」

私が、このお話を初めて聞いたのは「お話会」の練習中でした。
(私は足掛け8年 小学校での絵本の読み聞かせ活動に参加中です)

そして、思ったのです。
「これ、会社あるあるだよな」と。

みんなでやろうやろう!と盛り上がり、だけど別の方向に興味が移ってしまう人が出てきて、自分ひとりくらいは手を抜いても大丈夫だろ、、、という気持ちが働き・・・当初の計画はとん挫。

関わる人数が多くなればなるほど、人は無責任になるいい例だと思います。

この絵本も。
そして、現実も。

ただ、絵本の方は、世界でいちばんやかましい音が聞けなかっただけで終わらず、やかましかったら気づかなかった音に気付ける、という綺麗なオチ付きですが。

自分ひとりくらい。

と、思わず、自分ひとりの行動が世の中を左右する!・・・くらいに思った方が世の中はよくなるし、自己肯定感もあがるかもしれませんね。

ひとりひとりがつながって世の中は動いている!!

<追記>
その後、参院選が始まり日本に衝撃が走る大事件がありました。
ただ、その出来事によって何かが制限されたり、遠慮をするようなことになってはいけないと思います。故人の冥福をお祈りいたします。