#104_【読書】文化財をしらべる・まもる・いかす 国立文化財機構保存・修復の最前線/早川泰弘、高妻洋成、建石徹(アグネ技術センター)
対馬でライターのような仕事をしていますと、扱う対象のひとつに「文化財」(天然記念物も含む)というものがありますが、無学の私には、植物や動物を観察して何かを感じるとか、土器や古文書を見て何かを読み取るとかいうのがからっきしダメで、いまもなお苦労しておりますf^_^;)。
ただ、2019年に、対馬宗家関係資料(国指定重要文化財)が、長崎県対馬歴史民俗資料館から同対馬歴史研究センターに引っ越す際に、当時の学芸員さんから、移動に伴って発生する膨大な事務作業や、後世に遺そうとする作業の裏側を伺い、古文書に書かれていることだけではなく、古文書そのものからも歴史が分かることを知り、裏方のお仕事に興味が湧きました。
例えば、当時の紙の材質から、対馬藩の財政状況が読み取れるとか、クリーニングをして「ほこり」と一緒に出てきた虫や糞から、どんな生き物がいたのか、など。
学芸員さんも忙しく、一般人向けに話をできる機会もあまりないので、少しでも知ってもらえたらと、観光ガイドのネタとして活用していますが、この話をフックに文化財の保存・修復の意義を説明しますと、関心を持って聞いてくださる方が割といらっしゃるのを感じます。
もっと知りたいという方にオススメの本を最近見つけましたので、今回はその本をご紹介いたします。
本の内容は、文化財保存・修復の
「あゆみ」
「考え方」
「取り組み」(しらべる、まもる、いかす)
「これから」
という感じで構成されています。
おそらく普通の人にとって知られざる話が多く、例えば文化財の損傷リスクを減らすためにX線CTをはじめ「非破壊技術」を用いた調査分析が行われている話や、発掘調査が終わった後にまた埋め戻しをしている理由、寄託されている文化財の修理に係る手続き(所有者の財産であるため費用は所有者が負担するが、指定文化財になると関係する行政機関を交えた協議も必要となる)など、先進的な話から、生々しい話まで、幅広く収められています。
専門書ですので、おいそれと買える代物ではありませんがf^_^;)、研究発表におけるアブストラクト(要旨)のような文章の集積でありながら、一貫性があるようまとめられており、読み物として普通に面白いと思います。
※3,960円(税込)
私の場合、学芸員さんなどと話す機会がありますので、なんとなくのレベルであれば、意外と知っている内容はありましたが、対馬にはそれだけ専門知識を持った方々が常駐、出入りしていることを再認識しましたし、体系だった理解まではしていませんから、文章を書く時の裏取りにも重宝しそうです。
そして、研究の題材を探していたり、プロボノ活動をしていたりする理系の研究者の方にも役に立ちそうな内容かと思いました。
個人的に、読後一番残った問題意識として、「文化財は、国が指定しているもの、だから重要なもの」という外からの価値観で判断するのではなく、「文化財は誰のものであるのか」について、地域で暮らす者が自ら考えることが必要ではないか、と感じたことでした。
何でもかんでも残すというのは現実的ではない一方、文化財に限らず景観や風習なども含め、古くから残り続けてきたものは「失われてしまったら戻ってこない」ということもあり、なかなか難しいですね。
おっと、それ以前に、年を越す前までに自分の部屋の断捨離もしなければ・・・f^_^;)。
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