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#71_【読書】魚ビジネス/ながさき一生(クロスメディア・パブリッシング)

だいぶ前の話になりますが、対馬で魚料理教室を開催した時のこと、講師の方としていた雑談のなりゆきから、参加者に魚食事情を伺うことになりました。

対馬は島ですから、誰もが魚をさばけて当たり前と思われていたり、そもそも島外から講師が来て料理教室をすることに意味があるのか?、とさえ思われていましたが、思いのほか先入観による勘違いが多かったことに気付かされました。
例えば、「好きで魚を食べているわけではない」(かつては肉が手に入りにくかっただけであり、肉が買えるならそうしている)、「さばき方や下処理の仕方をちゃんと教わったことがないから、生まれてこのかた自己流でしてきた」、「生か甘辛く煮る以外にも、魚にはたくさん調理法があるのか」などなど。

島で生活していても、意外と魚食のことを知らないと思うところがあったので、今回は、ながさき一生さんの「魚ビジネス 食べるのが好きな人から専門家まで楽しく読める魚の教養」という本をご紹介します。

日本では、魚食が当たり前だったところ、肉食は素晴らしいという謳い文句とともに外国から入ってきてありがたがられている向きや、漁業者の方の仕事は非常にきつく、近年では漁獲高も減少傾向で担い手が付かず、ネガティブに捉えられている向きがあると想像します。

しかし、世界に視野を広げますと、世界の人々が魚の良さに気づき、日本以外はむしろ成長産業として捉えられているそうです。しかも、和食レストランが世界各地で見られるようになり、日本に行って本場のSUSHIや魚料理(和食)が食べたいと思っている方が増えているようです。
実際、インバウンド向けのツアーなどをしているノットワールド(現:羅針盤)の佐々木文人さんに「外国人が参加するツアーを見学したいなら、築地がいいですよ」と紹介され参加したところ、そのツアーに参加する外国人はなんと約50人、それ以外にも多くの外国人であちこち行列もできており、大盛況でした。

【インバウンドで大盛況の築地市場です。】
【店によっては行列もできています。】

この本の中には、漁法や鮮度処理、養殖魚と天然魚の特徴、寿司文化が産地ではなく東京(流通先)で発展していった理由、ICTが普及しても市場が存在していると考えられる背景など、様々な切り口から語られています。
私は商学部の出身ですので、多少は流通のことを知っているつもりでしたがf^_^;)、魚の流通には独特の商慣行があり、初めて知ることが多く勉強になりました。

よく、「養殖はダメだ、天然物がいい」とか「魚は日によって欲しいものが手に入らず困る」なんていう話が聞かれますが、消費者が常に安定した量と質を求めた結果として、養殖が普及したり、特定の魚種しか売れなくなったり資源が枯渇したりしているわけで、「○○は悪い」と決めつける前に、どのような背景があるのか、もう少し深く考えねばならないと感じました。

締めにひとつご紹介です。
弊社のスタディツアーでお世話になっているフラットアワーさんでは、漁業や海洋環境のことだけでなく、魚の市場環境についてもお話いただけます。直販をされているだけに、購入者のニーズも生々しく伝わってきます。

【漁業や水産流通の知識がゼロでも、わかりやすく説明していただけます。】
【対馬から流通にかかる時間を逆手に取った工夫です。】

漁業従事者の人数や年代構成を考えると、近い将来大きなゲームチェンジが起きる気がしますので、魚に限らず食に関心がありましたら、ぜひオススメですo(^-^)。


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