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【33話】ハート爆発ーー夢のような不倫旅行

ついに彼が来る! 8時間もかけて私に会いに来てくれる。朝からドキドキしていた。このドキドキを夫に気づかれないようにしなければと抑えようとても、時間が迫るにつれてだんだん鼓動が激しくなる。旅行準備は万全。後は家を出るだけ。 この朝、さすがに夫と目を合わせられなかった。

小さな事でも証拠探しに抜かりない、私のプライベートを執拗に追い回すタイプの夫にバレずに果たして不倫旅行はできるのか、、、予約しているのホテルは車で約20分。その後一緒にヨセミテに行く事になっている。

恋焦がれた彼と勤務地以外で2人きりの時間を過ごすのは初めて。本当に予定しているホテルに彼は来ているのか。嬉しすぎてハートは爆発しそうだった。

ホテルのドアをノックすると、彼が出来てた!約2ヶ月ぶりの再会に最初はとても照れ臭かった。でもそれも束の間、2人の恋しくて眠れなかった長い夜が溶けるように、お互いの気持ちは花火のようにぶつかり合い、2度とこの体から離れたくないほど愛し合った。

ここはサンフランシスコ、ベイエリア。私の居住区で彼と密会をしている。全てはその日の為に用意していたシナリオ。抱き合った途端、もう夫から追われる妄想や心配は完全に消えていた。そんな事、どうでも良かった。

テキサス人の彼らしいフォードの大きなトラックに乗ってヨセミテに出かけた。初めての2人だけの旅行。何時間かかっても運転をする彼の横に座る幸せを噛み締めながら、終始美しい景色と愛に包まれていた。

彼が大好きなヨセミテ、マリポサグローブにある「ジャイアントセコイア」に到着した時、大勢の観光客の1人が話かけてきた。「南部アクセントだね。テキサス?」 「そうだ。あなたたちは?」お互い南部系の人はアクセントで親近感を感じるらしい。他愛もない簡単な会話だが、私たちがカップルと思われた事をとても嬉しく感じた。 

ジャイアントセコイアの樹齢は約3000年と言われている、ヨセミテのレッドウッドツリー群の中のスーパースター。木が持つ妖精のような優しさとウォリアーのようなエネルギーを体全体で吸い取って、彼との時間を感謝した。

私、また恋をしてる。この日の天気も風邪も空の色も最高だった。彼の眩しいほどの美しいグリーンアイ(緑の瞳)とジャイアントセコイアのディープな赤茶の光景が今でも走馬灯のように蘇る時がある。

夢のような時間はあっという間に終わってしまった。彼と一緒に過ごした一分一秒がまるで長い長い時間を凝縮したような濃く愛情に満ちた日々だった。

明日からまた家に帰ると思うと気持ちが暗くなった。彼について行きたかった。出来るなら、このまま何もかも捨てて彼と一緒に居たかった。そのまま連れ去って欲しいーー逃亡欲に駆られた。40歳をすぎて再び恋をする危ない女になっている。

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