永沢さんには、なれないよ。I can't become Nagasawa san.

『ノルウェイの森』(村上春樹著)の後半のところで、先輩の永沢さんが主人公の僕に忠告します。

「自分に同情するな」「自分に同情するのは下劣な人間のやることだ」

20代でこの忠告を読んだ時、時代も私も元気だったからか、永沢さんの潔さに惹かれていたからなのか、「異議なし!」と賛同しました。それから私も年を取り(時代のことはわかりませんが)元気がなくなってきて、穏やかさを求めるようになりました。そして今回再読して、このセリフに再会すると、単純に「異議なし!」と叫べない自分に気づきます。

永沢さん、私は今、自分史上最悪の状況にいる。永沢さんなら、こう言うかも。「お前が『努力というものをしない』から招いた結果なんだよ」。あえて反論しないし、私は今の自分に同情もしない。この先も、そうあり続けたいと思う。今は精神的な安定を何とかキープすることだけを考えている。心身が健康じゃなきゃ、何もできないからね。正直、何をすべきかもわからないんだけど。でもね永沢さん、自分に同情することは本当に下劣な人間のやることなのかな。永沢さんを嫌いじゃないけど、なりたいとも思わないし、そもそも、なれないよ。それでもなお永沢さんの忠告を、私は私に言い続ける。「自分に同情するな」と。残酷な潔さに惹かれた若い元気な可能性あふれる自分に会えそうな気がするから。ところで、永沢さん、元気ですか。

(ちなみに主人公の僕は永沢さんの忠告に何と返事をしたでしょう。覚えていない方は再読してみてはいかが。)


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